ブルースカイ!決まるか必殺技!!(後編)
生い茂る森林地帯Cエリア。
ナガレとメグミはそこにいた。
「ホムラたちがいる方向はこっちか」
「まってメグミ、今行ってもやられるだけ」
「って言っても、ほっとくわけには・・・」
キズナイジャーは火の玉デビルの猛攻に敗れた。
ホムラ以下三人は捕まり、残されたのはメグミとナガレの二人となってしまった。
『ブルーの言う通りだ。今の君たちにあのデビル怪人に勝つ手段はない』
そう言ってキズナブレスレットを通して通信してきたのは、謎に満ちたキズナイジャー司令である。
「司令・・・・・」
「おい司令、あのデビル怪人ってのは何なんだ。強すぎるぞ」
メグミが若干責めるような口調で言う。今メグミは仲間が囚われた焦りと敵に敗れた悔しさと自分への不甲斐なさで内心ぐちゃぐちゃになっていた。
『・・・あれはデビル怪人。ブラッククロスの精鋭兵と言っていいだろう』
司令が重苦しそうに口を開く。
『彼らはブラッククロス大首領が生み出す無限の闇の中から生まれる人智を超えた怪人だ。一体一体が強力な超能力を有している。奴ら一体で高度な文明を誇る星一つが征服されたという事例もあるほどだ』
「そんな強力な怪人がいるなら先に教えとくべき。伝達不足もいいところ」
ナガレも内心様々な感情で憤慨しているのか、口調が厳しい。
『すまない。こんなにも早く地球に現れるとは思ってもみなかった』
「もうこの際それはいいや。倒す手段はあるんだろ?教えてくれ」
話してある程度心が落ち着いたのか、メグミは状況の解決を探っていた。
『・・・エレメンタルストームならば、いかにデビル怪人とはいえ確実に倒せるだろう』
「エレメンタルストーム・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
エレメンタルストーム、先日メグミたちが一丸となって練習していた必殺技である。
だがまだ完成には至っていないのだ。
「・・・・・分かった。どうにかしてみる」
『・・・大丈夫なのか』
「くすぶっててもどうにもならないし、それにホムラたちは絶対助けないといけないしな」
『・・・・・了解した。こちらは奴らの情報を探り伝達しよう。健闘を祈る』
そう言って通信は切れた。
「・・・・・ごめんなさい」
「? 何が?」
「私がもっと早く本番を想定した練習をしておけば・・・。あいつを倒せて、ホムラたちも捕まらなかった・・・・・」
ナガレは責任を感じ後悔しているようだ。顔が真っ青になっていた。
「源さんが責任感じる必要はないですよ。あの状態で練習しても失敗してたかもしれないのは事実だし」
「でも!」
「俺たちのこと、心配してくれたんですよね。きっとそれはホムラたちも分かってるでしょうから」
「・・・・・」
メグミは決して気遣いのみでそんなことを言ったのではない。純然たる事実を述べたのである。
「今はそんなことよりホムラたちを取り戻さないと。と言ってもどうしたら・・・・・」
「・・・・・私に」
「え?」
「私に考えがある」
「ぐっ、ぐっ」
ホムラたちは磔にされていた。敵のブラッククロスの手によって。
「くっそぉ・・・」
「ううぅ、大丈夫か・・・みんな・・・・・」
ライザが他の二人を心配するように言う。
「まあ首の皮一枚何とか繋がってんじゃない?」
風鈴はいつも通りあっけらかんとしている。が内心余裕がなさそうだ。
「・・・ごめん。私が突っ込んだから・・・・・」
「ホムラのせいじゃないって。しょうがないよ。責任感じすぎるな?」
「そうそう。死んだら地獄で恨み言100億年言ってやるから」
「わぁーーーーーんっ!!!」
「やめろよ風鈴!洒落になってないぞ!!」
「軽いジョークでしょうが。てか小学生に泣かされる高校生ってどうなのよ」
「怖いな最近の小学生・・・・・」
「んっ、んんっ」
磔にされた状態で姦しくなっている三人に向けて火の玉デビルが咳払いをする。
「気の強いお嬢さん方だ。その器量は評価に値するがね。だがあの太陽を見てごらん」
「太陽を直接見ちゃいけないっておかーさん言ってましたー」
「今日はいいから」
「おお、さすが悪の怪人」
「ぐすっぐすっ。みんなごめんね・・・。私のせいで悪の怪人に太陽で網膜を焼かれる拷問なんて・・・・・」
「そんなことするか!君たちホントにいい度量してるな!!」
相変わらずのすったもんだである。とりあえず三人は薄目で太陽を見ることにした。
「あの太陽が最も高い位置まで上がったら、我々は残る二人の到着を待たず君たちを処刑する」
「結局殺すんじゃん」
「苦しまないよう一瞬で骨まで焼いてやる。じわじわ太陽に焼かれるよりいいだろう?ローストビーフの気分を味わえるぞ」
「誰が牛みたいに太ってるだって?」
「え?いや、そんなつもりじゃ・・・」
「あー傷ついたー。運動が趣味で骨盤と筋肉でデカイだけなのに、デブって言われて傷ついたー」
「うーわ、悪とはいえデリカシーなさすぎー」
「ごめんね、ごめんねライザ・・・!私のせいで敵に辱めを受けて殺されるなんて・・・・・」
「だから違うといっているだろう!!今この場で殺してやろうか!!?」
前回までの畏怖さはどこへやら。完全に三人の女の子に手玉に取られている火の玉デビルであった。
「強がるのも今のうちだ。見ろ、手が震えているぞ」
「うっ・・・・・」
「むぅ・・・・・」
「・・・・・・・」
やはり三人は内心恐怖しているようだ。先ほどの軽口も自分の恐怖を誤魔化すためのカモフラージュだったのだ。
「フフフ、心配するな。早いところ仲間も地獄へ送ってやるから寂しくないぞ。まあ?残る二人が逃げなければの話だが」
「誰が逃げるだって(ですって)?」
「むっ!?」
火の玉デビルは声のする方向を向く。
そこには変身していない、丸腰のメグミとナガレがいた。
「来ちゃダメ!二人とも逃げて!!」
「黙れ」
二人を逃がそうとするホムラは、火の玉デビルの杖で殴られ押し黙らされた。
「ホムラ!!」
「それ以上仲間に手を出さないで」
「ほう、見上げた友情だ。ならば二人ともこちらに来てもらおう」
「交渉不足。私たちが行っても結局みんな殺される。こちらにメリットが一つもない」
(源さん、まだですか?)
(もう少し)
「心配無用。君たちキズナイジャーがいなくなれば地球を攻撃しないと約束しよう」
「その根拠は?」
「大首領のお達しだ。いずれにせよ、君たちは我々の要求に従う他ないのではないのかね?」
火の玉デビルの言うとおりである。仲間を見捨てても二人だけではこの先ブラッククロスと到底戦えない。そもそも二人が仲間を見捨てるなんてできるわけがない。選択の余地がない、詰みであった。
「さあ、変身道具をその場に置いてこちらに来るんだ」
二人は顔を見合わせ、うんと頷いた。キズナブレスレットを地面に置き、手を頭の後ろに回し火の玉デビルの方へ向かっていった。
「二人とも・・・・・!」
「くそぉっ!!」
「キズナイジャーもこれで終わりかー・・・・・」
目をつむり天をあおぐ、ホムラたち。彼女たちは人生で初めての絶望を感じていた。
「さあ早く、こっちへ」
火の玉デビルが勝利に酔いしれながら手招きをしている。
(ナガレ!まだか!?)
(もう少し)
故にメグミとナガレが小さな声で囁き合っているのに気が付かなかった。
「さあさあ!」
遂に二人は火の玉デビルの手に捕まってしまった。
「今!」
「よし!」
その途端、二人は懐に隠し持っていたナイフで火の玉デビルの心臓部分を突き刺した。
だが・・・。
「ハハハ!残念だったな!」
「なっ!」「うっ!」
火の玉デビルは意に介していなかった。それどころかナイフの刃の部分が熱でドロドロに溶けていた。
「おつむが足りなかったな。先ほどから内緒話をしてたことくらい気づいていたよ。それに、私がナイフくらいで死ぬと思ったかね」
火の玉デビルは二人の首根っこを思い切り掴んだ。
「ううっ」「ぐっ」
「二人はこの場で焼き殺してやろう。見ているがいい。お嬢さん方」
火の玉デビルの掌に熱がこもり始めた。
「や!やめろぉーーーーーっ!!!!!」
目を背けるライザ。
悔しそうに見つめる風鈴。
そして、慟哭するホムラ。
「ハーハッハッハッ!!これがキズナイジャーの最後だー!!」
火の玉デビルの目が妖しく煌めいた。
その時である。
ヒュンッ
ドスッ
「ぐっ!?」
いつの間にか火の玉デビルの背中に矢が突き刺さっていた。
それもだたの矢ではなく、アクアブルーのアクアーチェリーの水の矢である。
「ぐわああああっ!みっ、水はダメだっ!!」
「メグミ!!」「よしっ!!」
二人はその瞬間、火の玉デビルを思い切り蹴り上げた。
そして遠くに置いてあったはずのキズナブレスレットが勝手にメグミたちの方に飛んできた。どうやら、細い糸で引っ張ったらしい。
「「チェンジダンケツ!!」」
二人はアクアブルー、ラブピンクに変身し、三人を囲っているバッテン兵たちを叩きのめした。
「みんな!大丈夫か!?」
「ごめん、待たせた」
「二人とも!ありがとう!」
「ほらこれ!ブレスレット!!」
「サンキュー!」
「よっしゃ!お礼たっぷりしてやろうじゃない!」
二人はホムラたち三人を無事救出した。
「ぐっぐっ!一体どうやって!?」
「無知蒙昧。教えてあげる」
ブルーが手を振ると、どこからともなく糸に引かれたアクアーチェリーが飛んでブルーの手に収まった。
「さっきのナイフはカモフラージュ。本命は遠隔操作のアクアーチェリー」
「何ぃ!?」
「先の戦いであなたが水に弱いのは把握済み」
ブルーがピンクを連れて火の玉デビルの火炎サンクチュアリから脱出できたのも、水の矢で炎を消し去ったためである。火は水に弱い。ブルーはそれを利用したのである。
「でも真正面から行ってもきっと避けられてチャンスを台無しにする。だから罠を仕掛けた」
『・・・どうやらうまくいったみたいだな』
暗がりの司令はリモコンをいじりながら、ホッとしたような声で呟いた。
「俺たち自身が囮だったってわけさ」
「メグミ、それ私は言いたかったところ」
「えっ、ごめんなさい・・・」
「別に。子供じゃないし」
「あははっ。ナガレ、むくれてるよ!」
「むくれてない」
「最近の年上は子供っぽくて困るわ」
「しゃあっ!これで形勢逆転だな!!」
今ここに、再び五色の戦士が並び立った。
「みんな!行くよ!!」
「「「「おう!」」」」
「「「チェンジダンケツ!!」」」
残る三人も変身し、まばゆい光に包まれた。
「きっ、貴様たちは!?」
「満ちるキズナ。アクアブルー」
「愛のキズナ!ラブピンク!!」
「吹きゆくキズナ。ウィンドグリーン!」
「固いキズナ!グランイエロー!!」
「熱いキズナ!フレアレッド!!5人揃って!!」
「「「「「団傑戦隊キズナイジャー!!!!!」」」」」
ドーン!! ドドーン!!! ドドドドーン!!!!
「相変わらずこの爆発ビックリするなぁ」
「でもおかげで大半のバッテン兵吹っ飛んだよ」
「楽でいい」
「じゃあ後はあいつだけだな!」
「貴様らぁ~、黒焦げにしてくれる!!」
「よし100万倍返ししてやりましょう!ゴー!!」
「アクアーチェリー!」
アクアブルーが放った水の矢がどんどんバッテン兵たちに命中していく。高速で放たれる水の矢は厚さ10㎝の鉄板も貫く力があるのだ。
「ひゅー。今日のブルー殺気立ってるー」
「ナガレさんも仲間を傷つけられて怒ってんだよ」
そう言いながらピンクは目の前にいるバッテン兵を思い切り殴り飛ばす。
「かくいう俺もそうだけど」
「心配してくれて嬉しいよ!」
「てか名前呼び」
「あ」
キズナイジャーたちにバッテン兵は蹴散らされ、残りは火の玉デビル一人になった。
「おのれ、貴様ら!!」
「ブルー!一緒に行こう!」「うん」
レッドとブルーが同時に飛び上がる。
「「ダブルキック!!」」
「ぐわぁっ!」
二人のキックが火の玉デビルに直撃した。
「やりぃ!」「うしっ」
「ぐううっ、調子に乗るのもここまでだ!」
火の玉デビルが杖を天に掲げた。
「火炎サンクチュアリ!!」
「「「「「うわあっ!」」」」」
キズナイジャーの辺り一面が灼熱の炎に包まれた。
「ハーハッハッハッハ!!これで終わりだキズナイジャー!!」
「うっ、これじゃあ二の舞じゃん」
「ナガレさん!前みたいにアクアーチェリーで!!」
「ダメ。水の矢一発じゃあ脱出できてせいぜい二人がいいところ」
「どうしたら・・・・・」
『レッド、ブルー、武器を入れ替えろ』
「「え?」」
ブレスレットから司令の声が響く。
「でもどうして?」
「考えてる暇はない。レッド!」
「えっ!?ああ、うん!!ブルー!!」
二人はそれぞれ手持ちのフレアビュートとアクアーチェリーを入れ替えた。
すると。
「おおっ、フレアビュートが水の鞭に!」
炎をまとう鞭“フレアビュート”が水で形成された鞭に変化したのである。
「これなら全部消せる!アクアビュート!!」
ブルーはアクアビュートをふるい辺り一面の炎を消し去った。
「何ぃ!?」
「食らえ!!」
「ぐああっ!!!」
大量の水が鞭となって火の玉デビル直撃した。
「ぐおおおおっ、こ、この量の水はまずいっ!!」
「しゃあっ、形成大逆転!!」
「でもどうして」
『君たちの武器は各々のエレメンタルに対応している。武器を入れ替えるとその武器に持ち主のエレメンタルが付与され性質が変わるというわけだ』
「そういうのもっと早めに言えよ」
『すまん』
「報告連絡相談、重要事項」
『・・・本当にすまん』
「ま、まあまあ。二人ともその辺でいいじゃん」
ピンクとブルーに責められる司令にレッドが助け舟を出す。
「ところでさ、あいつ苦しんでるけど倒せてないけどどうすんの?」
グリーンが指摘するように、火の玉デビルは苦しんではいるが倒せてはいない。
「とっておきがあるだろ?」
「とっておき?」
「エレメンタルストーム」
「えっ!?でもまだあれは完成してないし、危ないんじゃ!?」
「ぶっつけ本番で行く。大丈夫、私たちなら成功する」
「・・・・・そうだね!やろう!!」
「何か今日のナガレ熱いじゃん」
「あははっ!私はこっちのナガレも好きだなー」
「・・・・・みんな集中して」
「照れてるな」「照れてるね」「照れてるー!」
「・・・・・メグミ」
「あっ、は、はいっ」
ナガレの圧に気おされ、メグミは必殺技の準備を始めた。
「よし、じゃあいいなっ!?行くぞー!!」
ピンクは自らの愛のエレメンタルを集中させ、エネルギー弾を作った。
「イエロー!!」
「まかせろ!グリーン!!」
「オーケイ!ブルー!!」
「オーライ!レッド!!」
それぞれのエレメンタルが注入されたエネルギー弾が、レッドの頭上に向かう。
「よーし!行くぞ!!」
レッドは飛び上がり、エネルギー弾を蹴り上げた。
「フィニッシュ!!」
完成したエレメンタルストームは、一直線に火の玉デビルへと向かっていき。
「ぐああああああああっっっ!!!」
直撃し、大爆発を起こした。
火の玉デビルは跡形もなく爆散した。
「いぃーーーやったぁぁぁーーーーー!!!」
「勝ったんだよな!?私たち!!」
「ざまあかんかん」
「ふぅー・・・。良かったー・・・・・」
「完全勝利・・・うわぁっ!?」
感極まったホムラが、変身解除して私にに抱き着いてきた。いきなり温かくて柔らかい体が飛び込んできてビックリする。
「ありがとーナガレ!あなたのおかげだよ!!」
「そ、そんな私だけの力じゃない・・・」
「いーや、今回のMVPだな」
「め、メグミだって頑張った・・・」
「いや、俺だけじゃあみんなを助け出せなかった。ナガレの機転と決断力あってこそだよ」
「クールに見えて意外と熱いとこあんじゃん」
「うぅ・・・・・」
みんなと目を合わせられなくてうつむく。顔も熱い・・・。
「あーっ、ナガレまた照れてるー!?」
「て、照れてなんか・・・」
「大人でも照れんだねー」
「そりゃあ人間だしな」
「ははっ、じゃあナガレの活躍を祝して胴上げ行くか!!」
「え、ちょ」
みんなが私に駆け寄り、私の体を持ち上げる。
「「「「わーっしょい!わーっしょい!!」」」」
「ちょ、みんな、危ないっ・・・!落ちたら頚椎骨折する・・・・・っ!」
そう言いながらも私は、このキズナイジャーの雰囲気を悪くないと思っていた。
「いやー、今回はなんとか勝てたなー」
戦い終わって、私たちはドラゴンコンドルの中で一息ついていた。
「まだ戦いは終わっていない。あのレベル、いやあれ以上のデビル怪人が今後出てくるとも限らない。少し休んだら特訓すべき」
「えーまたー!?ナガレ真面目過ぎない?」
「努力は人生において当然のこと。ヒーローなら尚更」
風鈴に突っ込まれ私は言葉を返す。私たちの敗北は地球の敗北に繋がる。それに私たち自身の命を守るためにも努力はすべき。
・・・・・私には努力くらいしか才がないんだし。
「おー、みんなやってるねー」
談話していると我らがリーダー、ホムラが部屋に入ってきた。手にはまたメグミの自家製か、クッキーを持っている。
「あ、それおやつ?ちょうだい?」
「またメグミが作ったのか―。あいつホント料理うまいなー」
「ああ、今回はメグミじゃなくて・・・」
「ホムラが作ったんだ」
ホムラの後ろからメグミが出てきた。
「ホムラが・・・?」
「あ、うん。私のせいでみんなに迷惑かけちゃったし・・・」
「そんなことはない。ホムラはホムラなりにできることをした」
「それに勝てたんだし、結果オーライっしょ?」
まだ高校生の女の子が地球の命運を背負って戦うなんて普通はありえないことだ。本当によくやってると思う
「ああ、うん・・・。それだけじゃなくてね・・・・・」
ホムラが顔を赤くして目を泳がせる。一体どうしたのか。
「ナガレにお礼したいんだとさ」
「ちょ、ちょっとメグミ!!」
私に?お礼?
「今回、ナガレがいなかったらみんな全滅してたからって。その心ばかりのお礼らしいよ」
それが、この手作りのクッキー・・・・・。
「た、食べてもらえるかな・・・?」
ホムラは上目遣いで、おどおどと私のことを伺ってくる。
・・・本当は年相応に気の小さい子なんだな。
「いただきます」
「!! 召し上がれ!」
「おいホムラー。私たちも頑張ったぞ?」
「一人だけに食べさせんじゃないでしょうね?」
「もちろん!みんなの分もあるよ!」
「じゃあ食べるわ」
「いただきまーす」
私たちはホムラの手作りクッキーを口に入れた。
「・・・・・・・・」
「ど、どう・・・?」
「これは・・・・・」
「普通だわ」
「ふっ、普通!?もっと他に感想は!?」
「初めてでこれなら及第点だろ。気を落とさないで」
「んー、何か複雑な気持ち―・・・」
確かに風鈴の言う通り、取り立てて特徴のある味ではない。
でも。
「私は美味しいと思う」
今まで食べたどんな料理より美味しく感じられた。
「だよねー!ナガレ、味分かってるー!」
「ナガレはホムラには甘いなー」
「甘くない」
「デレてる?デレてる?」
「デレてない」
「ナガレ、よかったな」
「・・・まあね」
こんな騒ぎの中に自分がいるなんて以前では考えられなかった。
でも、これも悪くない。
○キズナイジャーファイルその3
名前:火の玉デビル
身長:185㎝
体重:88㎏
能力:10万度の火炎を操る
技:灼熱幻影 高熱の火炎で蜃気楼を起こし、幻影を作る
火炎サンクチュアリ:広範囲のエリアに一気に灼熱の火炎を生成する
備考:体内で常に炎が燃えており、体は触れただけで火傷するほどの高温になっているぞ!だがその高温ゆえに、大量の水で冷やされるなどの温度変化に弱いんだ!
〇次回予告
闇夜に子供たちが消える。不思議な音色が街中に響く。これはブラッククロスのデビル怪人の仕業に違いない。子供を攫うデビル怪人に、ライザとメグミの怒りが爆発する!
次回!団傑戦隊キズナイジャー!
「イエローサウンド!闇夜で遊ぶな子供たち!!」
どうぞお楽しみに!!