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団傑戦隊キズナイジャー  作者: 岩ノ森
4/7

ブルースカイ!決まるか必殺技!!(前編)

 「ぐっ、ぐっ・・・」

 地球の平和を守るために発足した団傑戦隊キズナイジャー。

 「くそぉ・・・」

 「うう、大丈夫か・・・みんな・・・・・」

 彼女らは今、未曽有の危機を迎えていた。

 「ハーハッハッハッ!!これがキズナイジャーの最後だー!!」

 怪人に磔にされ、今にも処刑されようとするホムラたちの姿がそこにはあった。

 「・・・おいナガレ!まだ見てるだけなのか!?」

 「まだ待って・・・・・」

 何故こうなったのかというと。

 

 

 

 「よーし、行くぞー!」

 「ばっちこーい!」

 切り立った断崖とでこぼこの岩だらけの風景、言わば採石場という場所に5人はいた。

 五色の仮面を被り悪と戦う、団傑戦隊キズナイジャーである。

 そのキズナイジャーが何をしているのかというと。

 「いいなー!行くぞー!イエロー!」

 「任せろ!グリーン!」

 「オーケー。ブルー!」

 「オーライ。レッド」

 バレーボールであった。

 ラブピンクが投げたボールをグランイエロー、ウィンドグリーン、アクアブル―の順でトスを繋いでいく。

 「よーし、行くぞー!」

 天めがけてブルーが蹴り上げたボール目掛けて、フレアレッドがジャンプした。

 「フィニッシュ!」

 空中でレッドが蹴ったボールが、バッテン兵を模した的に見事命中した。

 「よしっ、いい感じ!」

 「レッド、うまくいってるじゃないか!」

 「ボールでの練習はこれくらいでいいんじゃないか」

 「でもあくまでこれ練習だかんね」

 「グリーンの言う通り。本番ではエネルギーの弾を使ってリレーを繋ぐ。油断禁物」

 「分かってるってー」

 そう。彼女らは遊んでいたわけではない。

 地球を狙う悪魔の集団「ブラッククロス」への対策として所謂“必殺技”を練習していたのである。

 『どうやら順調に進んでいるようだな』

 キズナイジャーの仮面を通して、司令官から指令が届く。

 『ブルーの言う通り、本来は君たちのキズナ力を集めた光弾にそれぞれのエレメンタルを注ぎ込み、とんでもない威力になる。練習で使ったボールとは訳が違うぞ』

 「あのー、さっきから一方的に言ってるけどさ。キズナ力とかエレメンタルとか何なわけ?」

 ウィンドグリーン、めい 風鈴ふうりんが突っ込む。確かに司令の口からは先ほどから聞きなれない言葉がつらつらと並んでいる。ほかの四人も同意するように首をコクコク縦に振っていた。

 『キズナ力とは、本来宇宙を構成しているプラスとマイナスのエネルギーの流れのプラス側を構成しているもので、それらは遺伝子のように螺旋状の相互作用を常に起こし宇宙を構成しておりまたそのプラスの力は五つのタイプに分類され』

 「あのさ、小学生にも分かるようにしてくんない?」

 「・・・正義の友情パワーだ」

 「なるほど」

 風鈴の突っぱねたような言い方に気おされ、司令の長くなりそうな話が7文字の言葉で纏められてしまった。ホムラを始めとする他の四人は風鈴にサムズアップを送っていた。風鈴もサムズアップを返していた。

 『そしてそのキズナ力は“火” “水” “土” “風” “愛”の5つの力、エレメンタルにそれぞれ分けることができるのだ』

 「あー、だからキズナイジャーって5人なんだ」

 「知らなかったのかよリーダー」

 「へへへ」

 ホムラが初めて腑に落ちたように手をポンとさせて納得する。リーダーならその辺の事情は織り込み済みだと思い込んでいたメグミは思わず突っ込んだ。

 『そしてそのエレメンタルが地球人の中でも特に強かったのが君たち5人だ。決して乱雑に選んだわけではないのだよ』

 「ラノベとかで火とか水とかはよく聞くけど、愛属性ってのは斬新だな」

 「五大元素。地球の様々な文明で定義づけされている概念」

 「もしかして昔の人たちってエレメンタルのこと知ってたのかもね」

 「空想推論。だけど理にはかなってる」

 ナガレとライザとホムラの三人が議論、という名の駄弁りをする。今まで空想の産物でしかなかったような理論が目の前に出てきているのだ。興奮も致し方ない。

 『今君たちが練習しているものは、愛のエレメンタルを基軸として他の4人のエレメンタルを注ぎ込み敵にぶつける必殺技「エレメンタルストーム」だ。命中すれば確実にブラッククロスの怪人を倒せるだろう』

 どうやらキズナイジャーの設定はそういうことらしい。分かりやすいというか王道というか捻りがないというか、とにかく何となく理解した5人だった。

 「よしっ!それじゃあ早いとこエレメンタルストーム完成させないとね!メグミ、次はエネルギー弾でいってみよー!」

 「ええ、大丈夫かよ」

 「だいじょぶだいじょぶ!」

 「いいや、当分はまだボールで練習した方がいい」

 興奮するホムラを押しとめたのはナガレだった。

 「えー、何で?」

 「司令の話を聞く限り、エレメンタルストームは相当の威力がある技。まだ5人そろったばかりの私たちじゃ扱うのはあまりにも危険」

 「でも早いとこ完成させた方が」

 「心慌意乱。私たちの敗北はそのまま地球の敗北につながる。慎重になってもなりすぎることはない。泰然自若でいるべき」

 「うー・・・」

 早く次に進みたいホムラと慎重第一のナガレで少々すれ違いが生じているようだ。

 「まあまあ。その辺にしてさ、今日は疲れたしちょっと休もうや」

 ライザが割って入り、若干ピリつく雰囲気を壊す。彼女なりの気遣いなのだろう。

 「おなかも減ったし。愛野、軽く何か作って」

 「あ、ああ。いいよ」

 「・・・ちょっと言い過ぎた」

 「いや、別に・・・」

 「先戻る」

 ナガレはバツが悪そうに母艦ドラゴンコンドルに帰って行った。

 「・・・源さんは俺たちのこと心配してんだろ」

 「分かってるよ・・・」

 「まあ焦る気持ちも分かるけどさ。私ら神様じゃないんだからそれなりに行こうや」

 「不必要なケガしたくないしねー」

 ライザの他にメグミ、風鈴も彼らなりにホムラをフォローする。全員大きなケンカはできない性分なのだ。

 そして彼女らもドラゴンコンドルへ帰った。

 

 

 

 『・・・どうやら、まだチームワークはギクシャクしているようだな』

 暗がりにいる謎の人物、キズナイジャー司令官は5人の地球人を見て今後の状況を危ぶんだ。

 

 

 

 「ほらできたぞ。揚げてない焼きポテトチップスだ」

 「おー、おいしそー」

 「ここのキッチン、機能性が無さすぎだぜ。うちのキッチンのがまだ使いやすいぞ」

 「本来食事をするところではない。用途が違う」

 「分かってるけどさ」

 特訓から帰ったメグミたちがたむろしているのは、母艦ドラゴンコンドルの休憩スペースである。円卓のテーブルを囲むように白いソファが置いてある簡素なものだが。どうやら簡単なキッチンもあるようだ。

 「・・・・・・・・・」

 ホムラはポテトチップスには意も介さず窓の景色を眺めていた。

 「ホムラさん、考えすぎも良くないぞ」

 「うん。でも私、仮にもリーダーだからさ」

 どうやら先ほどの必殺技の特訓に関して悩んでいるようだ。そんなホムラを心配してメグミは声をかける。

 「ナガレの言う通り、私考え無しに突っ走っちゃうところあるから。地球を守るヒーローのリーダーがそんなんじゃいけないよね」

 「んー」

 真面目な性格だな、とメグミは思った。同時にこういうタイプは一人で抱え込みやすいとも。

 「まあ俺もホムラさんもまだ高校生だし。それに地球の平和なんて守るなんて思っちゃあ、突っ走るのも無理ないさ」

 「そうかな・・・」

 「うまく言えないけどさ、リーダーならもっと仲間を頼ってみなよ。といっても俺この間加入したばっかだけど」

 メグミはハハッと愛想笑いをする。元よりあまり女子との会話に慣れてないので、これでいいのかと自問自答してはいるが。

 「・・・ありがと」

 「ほら、早くしないとポテトチップスなくなるぞ」

 「ああメグミ。これうめえな」

 「うんうん。素人が作ったにしてはなかなか」

 「ああ、ありがとう。口にあったようで良かった」

 ライザと風鈴はすでにパクついていた。

 「私ももーらいっ。うん、おいしいっ」

 「良かった」

 ホムラに笑顔が戻ったようでホッとするメグミだった。

 

 ナガレはそれを遠巻きにジッと眺めていた。

 顔は不機嫌というわけではないが、若干表情が固いようだ。

 「ナガレもどう?」

 そんなナガレにホムラはチップスを差し出してきた。

 「美味しいよ」

 「・・・・・・・・・・」

 ナガレは黙ったまま、チップスを一枚つまんだ。

 「・・・おいしい」

 「良かったー!メグミー、美味しいってさー!」

 「そうか、なら良かったよ」

 「自炊男子も増えてきたなー」

 「もう属性として使い古されてるよねー」

 「なんだよ属性って?エレメンタルか?」

 はしゃぐホムラたちを見て、ナガレはまた物思いにふけっていた。

 

 

 

 「ここが地球か・・・・・」

 その存在は空から降り立った。

 「それでは始めるか」

見た目は明らかに人間ではなく、燃え盛る炎の悪魔のようだった。

 「地獄のショーを」

 怪人が杖を天にかざした途端、辺り一面が炎に包まれた。

 

 

 『南西50キロの地点にブラッククロスの反応!キズナイジャー全員出動!!』

 

 

 「フフフ、このままこの地球を燃やし尽くしてしまおうか」

 その怪人は森林を燃やしながら、ズンズンと進んでいた。

 「待ちなさい!ブラッククロス!!」

 「む」

 そこへ五色の仮面、キズナイジャーたちが現れた。

 「こんなに森を燃やして!許さない!!」

 「ん?あいつこの間の兵隊長と何か違わないか?」

 「小童が。雑魚の兵隊長などと一緒にするな」

 その怪人は纏っている白いマントを翻した。それだけでキズナイジャーたちを激しい熱風が襲う。

 「俺は誇り高きデビル怪人!その名も火の玉デビル!!」

 「デビル怪人!?」

 「火の玉デビル?」

 イエローとグリーンは怪訝な顔を仮面の下でする。仮面だから見えないが。

 『デビル怪人だと!?いかん!一度撤退しろ!!』

 「司令?」

 司令が慌てたように指示する。ブルーはその様子を聞いて訝しんだ。

 「森がこんなに燃やされてるのに!逃げるなんてできない!!フレアビュート!!」

 苦しむ森の生き物たちの様子を見て怒ったレッドは、炎の鞭で火の玉デビルに攻撃した。

 だが。

 「フフ、今何かしたか?」

 「なっ」

 「炎に火とは、これはまたおかしなことよ」

 火の玉デビルは全く意に介していない様子だ。

 「お返しだ」

 火の玉デビルの杖の先から、黄色い火炎が発射された。

 「わあっ!」

 「ぐっ、こんな奴!街に出したら大変なことになる!グランステッキ!!」

 「待って!イエロー!!」

 ブルーの静止も間に合わず、イエローはハンマーで突っ込んでいった。

 「灼熱幻影!」

 「うわっ」

 突然、火の玉デビルの姿が幾人にも増えた。いや増えたのではない。炎で蜃気楼を作り分身したのである。

 「イエロー危ない!ウィンドブーメラン!!」

 グリーンがイエローを助けようとブーメランを投げるが、本体には全く当たらず幻影を通り抜けてしまう。

 「くそぉっ!こうなったらエレメンタルストームで!!」

 「でもあれまだ本番想定した練習してないぞ!!」

 「ああっ!!そうだった!!」

 「今度はこちらからいくぞ」

 「これは・・・まずい!!」

 

 「火炎サンクチュアリ!!」

 その途端キズナイジャーの辺り一面に、灼熱の炎が広がった。

 「「「「「わああああああっっっ!!!」」」」」

 「ハッハッハッハッハ!噂のキズナイジャーなどこの程度よ」

 キズナイジャーは火の玉デビルの猛攻になすすべもなく倒れてしまった。

 

 

 

 「うっ・・・」

 全身に激しい痛みを覚えながら、メグミは目を覚ました。どうやら森の中のようである。

 「ここは・・・?」

 「大丈夫?」

 そうして覗き込んできたのはナガレだった。彼女もさっきの敵の攻撃で傷ついたのか、顔や腕に擦り傷やすすが着いている。

 「他のみんなは・・・?」

 「・・・・・・・・・・」

 ナガレは暗い顔をして顔を背ける。

 「ごめん、メグミ一人助けるので精一杯で・・・・・」

 「そんな・・・」

 メグミは愕然とした。

 敵の強さに、そして己の無力さに。

 「ふっはっはっは。残りの二色よ、聞いているか」

 「あっ!」

 声のする方に二人が顔を向けると、空中に映像が映し出されていた。

 「残りのキズナイジャーに告げる。貴様らだけでここの森林地区のCエリアに来い。さもなくば奴らがどうなるか」

 「「ああっ!!」」

 そうして映し出されたのは十字架に磔にされたホムラ、ライザ、風鈴だった。傍ではバッテン兵が控えており、持っている鉈で彼女らの顔を撫でていた。

 

 残されたキズナイジャーは二人となってしまった。

 二人だけでどうやってこの窮地を脱するのか。

 頑張れキズナイジャー!負けるな!団傑戦隊キズナイジャー!!

 

○キズナイジャー小劇場その1

ライザ「メグミってよく料理すんのか?」

メグミ「ああ弟たちにな。このポテトチップスなんか喜んでくれるよ」

風鈴「でもさ、買った方が手間もないし安くない?」

メグミ「いいだろ、作るの好きなんだ」

風鈴「ああこういう家庭的男子キャラよく見るわー。もうお約束だわー」

メグミ「何でご馳走してんのに責められてんの・・・?」

ライザ「そんな悪い子にはもうおやつやーらね」

風鈴「ごめんなさい嘘ですもっと食べさせてください」

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