ピンクデタミネーション!団傑せよキズナイジャー!!(後編)
テッテッテッテーテッテ(手書き風のアイキャッチ)
Bパート開始
どこまでも広がる暗黒の空間。そこにあるはずのない純白の城があった。
「やられておめおめと戻ってきたというわけか」
「もっ、申し訳ございません!ドクター・オースイ!」
平謝りしている怪物は、先日キズナイジャーにやられたバッテン兵隊長。そしてそれを叱責している不気味な老人は暗黒組織ブラッククロス幹部が一人、ドクター・オースイである。
その時、暗黒空間内をゴゴゴという何かが唸るような音と、空間ごと揺れているかのような地響きが鳴り響いた。
「おおっ!これは!?」
「見よ!大首領は怒っておられる!!これも誇り高きブラッククロスの兵隊長が、人間ごときにやられたからだ!」
「もっ、申し訳っ」
「言い訳は良い!この汚名を返上したくば結果を出すのだ!そのキズナイジャーとやらを倒し、地球征服を完了させよ!」
「はっ、ははっ!ではただちに兵を連れ」
「待て」
ドクター・オースイが兵隊長を呼び止める。不気味な顔を歪め、牙をむき出しにしてほほ笑んだ。
「そのキズナイジャーという輩、弱小な地球の人間ごときがブラッククロスの兵を蹴散らすとは油断ならん。宇宙征服の為には一点の綻びもあってはならぬ」
「と、言いますと?」
「貴様の能力をさらにパワーアップしてやろう。その力で地球人どもに恐怖を味合わせるのだ」
「ははーっ、ありがたき幸せ!」
「だが、貴様の体が改造に耐えられればの話だがなぁ」
ドクター・オースイが牙を見せ笑う。
「はっ。どのような試練にも耐えて見せましょう!」
見よ。これこそ宇宙全てを侵略せんとする、暗黒組織『ブラッククロス』、その全貌である。
このような凶悪な悪に狙われ、我々は勝利を掴めるのであろうか!
「ふぅー、昨日は疲れた」
メグミは未だに昨日あったことが空想の世界のように感じていた。怪物に襲われて、それをヒーローたちが助けてくれて、しかも自分もそのヒーローに勧誘されたなんて、学校の友達どころか家族に話したって信じてもらえないだろう。
「おはようメグミ。ちょっと疲れてる?」
「ああおはよ、ミツキ。何でもないよ」
例え数少ない親友である、金田ミツキに話したとしてもだ。
「ミツキくーん、おはよー!」「ミツキくーん!今度演劇見に来てー!」
「うん、おはよう」
ミツキは老け顔気味の俺と違ってあどけない可愛らしい顔をしている男子だ。おまけに成績優秀で運動もそつなくこなす。女子に人気があるのはむべなるかなだろう。
「でもしんどそうだよ。買ってきたココアあげる」
「良いよ別に。お前が飲みな」
「ううん、メグミに飲んでほしい。僕はまた買ってくるから」
「じゃあもらうわ。お返しに今度何か奢るわ」
「じゃあこの前作ってくれた肉じゃが食べたい」
「そんなんでいいのか?じゃあ今度家でも来てくれ」
「ありがとう。お邪魔するね」
俺はもらったアイスココアのタブを開けながら、いつも通りの会話をする。もうこれくらいの軽口は叩けるくらいの関係性だ。
でも何でこんなクラスの人気者が俺のような人間に絡んでくるんだろう。俺はそれほど友達も多いわけでもないし、部活に入ってエース級の活躍をしているわけでもないし、顔だって怖いと言われ若干避けられてる。なぜここまでミツキに懐かれるのか、よく考えたら謎だった。
「今日はお弁当?」
「いや、今日は寝坊しちゃってな。学食」
「じゃあ昼に一緒に行こっか」
まあ今親友ならいいか。あんまり気にしすぎても体に悪い。
で、問題は昼休みに学食に言ってる最中に起こった。
「げ」
「どうしたの?メグミ?」
「い、いや。何でも・・・」
廊下を歩いていると出会ったのだ。昨日俺を助けてくれたヒーロー、キズナイジャーのリーダー、つまり赤崎さんに。
まさか同じ学校だったとは・・・。
赤崎さんは2人の友達らしき女子と談笑しながら歩いていた。
「あ、君は」
「ああ、うん・・・」
向こうも気づいて話しかけてきた。気まずい・・・。
「愛野くん・・・だっけ?昨日はありがとね」
「ああ、いや。こちらこそどうも・・・」
どうも目を合わせられずに目をそらしてしまう。赤崎さんは軽く会釈して行ってしまった。学校じゃあ意外と大人しい子らしい。
「ホムラ?あのいかつい男と知り合い?」
「うん。昨日ちょっとね」
「怖。恐喝でもされた?」
(何でだよ)
赤崎さんの友達は言いたい放題だ。そりゃあ顔が怖いとはよく言われるし、何回かお巡りさんに職質されたこともあるけど、せめて声が聞こえないところで言ってほしい。
「ううん。あの人はそんな人じゃないよ」
「・・・・・」
赤崎さん本人は結構いい人らしい。
「メグミ?赤崎さんと知り合い?」
「ああ、昨日ちょっと手伝いをな。てかお前、赤崎さんと知り合いなの?」
「ううん。剣道部のエースって小耳にはさんだだけ」
「そっか」
剣道部のエースで友達沢山か。
そりゃあヒーローにも選ばれるよなー。
そんなどこかひねくれた考えをしながら、俺はミツキと学食へ急いだ。
「フフハハハ!地球人ども!!戻ってきたぞ!!パワーアップした兵隊長がな!!!」
街中の高いビルの上で高笑いするのは、先日地球に降り立ってけちょんけちょんにやられたブラッククロス兵隊長である。
「地の文めうるさいぞ!俺様はドクター・オースイ様に改造手術を施されパワーアップしたのだ!これでキズナイジャーとかいう四色団子どもに一泡も二泡も吹かせてやれるぞ!!」
そう発言する兵隊長の体からは、先日とはまるで違う邪気が放たれていた。
「さあキズナイジャーめ!出てこい!!相手をしてやろう!!!」
ドゴーン!!ドゴーン・・・!!
放課後、スーパーによって今日の夕飯の材料を買って俺は早速帰路に着いていた。
昨日はレトルトで済ませちゃったからな。早く帰って今日こそ美味しいカレーを作ってやろう。
「おい!また出たんだってよ!!」
「怖いねえ。こっちまで来ないといいけど」
何だか周りが騒がしい。何か事件でも起きたのだろうか。
そう思いスマホを見てみると、昨日の怪人がまた出たというニュースがトップで流れていた。
それを見て、俺は喉に小骨が引っかかるような感覚に襲われた。
いや、気にするな。
関係ないことじゃないか。
「待て!ブラッククロス!!」
「む!来たか!!」
「フレアレッド!」
「アクアブルー!」
「グランイエロー!」
「ウィンドグリーン!」
「団傑戦隊キズナイジャー!!」
「ほう。どうした?一人足りないようだが?」
「舐めるな。お前らなんか私たち4人で充分だ」
「ん?」
自宅に帰ろうとしている途中だった。
「うっ、うっ、うぇぇ~ん」
女の子が道端で泣いていた。近くに親らしき人もいない。
また職質されるかもな、そう思ったけど女の子が泣き続けるよりかはマシだと考え直して、慰めることにした。
「ねえどうしたの?ケガした?お腹痛い?」
体をかがませ、女の子と同じ目線になるようにする。この方が背の低い子供は安心するらしい。
「みっちゃんが・・・!みっちゃんが・・・!」
「みっちゃんって、友達?」
「うん、友達・・・」
喧嘩でもしたのだろうか。
「みっちゃんが・・・怪物の暴れてるところの近くにいるの」
俺はそれを聞いた途端、後頭部をハンマーで叩かれたような感覚に見舞われた。
「このままじゃ殺されちゃうかも・・・」
「・・・・・・・・」
女の子は泣き止まない。不安で胸がいっぱいなんだろう。
・・・・・カレー、今日もレトルトになるかもしれないけど。
「大丈夫だよ」
俺は女の子の肩を優しくポンポンと叩いた
「この星にはね、実はヒーローがいるんだ」
「フハハハハ!!その程度かキズナイジャー!?」
「こいつっ・・・昨日より強くなってる・・・!」
「少し・・・ヤバいんじゃない・・・?」
「危急存亡。だいぶヤバい」
「くっ・・・!」
キズナイジャーは、強化された兵隊長に追い詰められていた。
「3倍にパワーアップした俺の力を見よ!ネオダーククラッシャー!!」
兵隊長の薙刀から、闇のエネルギーの斬撃が放たれた!!
「「「「わあああああああ!!!」」」」
その衝撃で、キズナイジャーたちは変身解除まで追い詰められてしまった!
「はっはっは。これで地球も我々ブラッククロスのものだな!」
兵隊長は勝ち誇っていた。ホムラたちは地に突っ伏し、苦杯を舐めさせられていた。
キズナイジャーも負け、地球は征服されてしまうのか!?
その時である!
「おらあああっ!!」
「ぐわああっ!何かデジャヴ!!」
何者かが兵隊長を後ろから蹴り倒した。
そこには。
「あっ!君は!?」
そこに立っていたのは、愛野メグミであった。
「ごめん。遅れた」
「どうしたの!?キズナイジャーには入らないって・・・!?」
赤崎さんが驚愕して詰め寄ってきた。あちこちに擦り傷や火傷がある。他の3人も同様だ。
俺の決断がもう少し早ければ、まだ傷が少なくて済んだかもしれないのに。
「確かに戦うのは俺たちじゃなくてもいいって言った。けどさ」
「けど・・・?」
「何かできる力があるのに、知らないふりしてるほど薄情でもないからさ」
「「「「・・・・・・・・」」」」
「ああ、つまりさ・・・。俺、バスの中でよくお年寄りに椅子譲るタイプなんだよね」
たまに年寄り扱いするなって怒られるけど。譲ることの方が多い。
「ぷっ」
赤崎さんが思わず吹き出している。他の3人も嬉しそうだ。
「今日こそ弟たちにカレー作る約束してるから。早めに終わらせていい?」
「うん!分かった!」
「カレー旨いよな」
「不良顔で兄弟持ちで家事上手って」
「属性満載」
俺はカチリと、キズナブレスレットを腕に装着した
「みんな!行くよ!!」
「「「「おう!!」」」」
カシッ
『キズナ!ハイリマース!』
『ダンダンダダーン!!ダンダダーン!!!』
「チェンジダンケツ!!」
カシャンッ!
『Done!Gets!!』
まばゆい光に包まれ、そこには5色の戦士が立っていた!
「貴様たちは何者だ!!」
「熱いキズナ!フレアレッド!!」
「満ちるキズナ。アクアブルー」
「堅いキズナ!グランイエロー!!」
「吹きゆくキズナ。ウィンドグリーン」
「愛のキズナ。ラブピンク!」
「5人揃って!!」
ダッ
「団傑戦隊!!キズナイジャー!!!」
ドーンッ!
ドドーンッッ!!
ドドドーンッッッ!!!
「うわっビックリしたぁ!!何!?後ろで爆発起こったんだけど!?」
「あー何か揃って名乗ると余剰エネルギーかなんかで爆発するんだって」
「危なくない!?」
「カッコいいし、いいんじゃね?」
「通常仕様。致し方なし」
「ここまでおっきいの私たちも初めてだけどね。いやぁ~やっぱ5人揃うと違うわ~」
「いや危ねえよ。司令官に頼んで仕様変えてもらえよ」
「あーっ!また俺たち抜きで話進んでるし!!もう待たないからな!?攻撃するからな!?」
「ああごめんなさい。よしじゃあみんな!ゴー!」
「フレアビュート!!」
「バッテン!」
フレアビュートとは!炎でできた鞭を振るい敵を薙ぎ倒すフレアレッド専用武器である!
「アクアーチェリー」
「バッテン!」
アクアーチェリーとは!水でできた矢を発射し敵を貫くアクアブルー専用武器である!
「グランステッキ!」
「バァッテン!」
グランステッキとは!穂先が岩でできた棒で敵を粉砕するグランイエロー専用武器である!
「ウィンドブーメラン!」
「バッテンテン!!」
ウィンドブーメランとは!風を纏った刃を投げ敵を切り裂くウィンドグリーン専用武器である!
「おらっ!うらっ!」
「バッテン!」「バッテン!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「俺何か武器ないの!?」
「ぬうっ。このままではまたしても・・・」
兵隊長は、二度も敗退できないと焦っていた。
その時、兵隊長の横目に建物の隅に隠れていた女の子が映った。おそらく避難し遅れたのだろう。
「キズナイジャー!攻撃をやめろ!!」
「きゃあっ」
「「「「「っ!?」」」」」
「さもなきばこの子の命はないぞ!!」
「うわぁーん!!」
卑怯なブラッククロス。兵隊長は少女の命を人質に取ったのである。
「なっ!卑怯よ!!」
「卑怯もラッキョウもあるものか!悪とはこういうものだ!!」
怒りに燃えるフレアレッド。だが少女を盾にされ、攻撃できない。
「・・・あんなっ、小さな子を・・・っ」
だがラブピンクは、この場の誰よりも怒りに燃えていた。
「ぬああああっ!!」
怒りに任せて吠えるラブピンク。その瞬間、脳内に声が響いた。
『ラブミラーを使って』
「っ!?」
それはヘルメットよりテレパシーで送られる指令だった。
ピンクは感じた通り、目の前に手を伸ばし合わせる。
「君!目をつむってろ!!」
「!? 何をする気だ!?」
「ラブミラー!!」
ラブピンクの手のひらに、ラブミラーが展開された。
「フラッシュ!!」
ピカッ!!
「ぐわっ!目がっ!!」
ラブミラーフラッシュとは!ラブミラーで光を集め、それを一気に放ち敵の目をくらませるラブピンク専用武器である!
「君!大丈夫!?」
「うん!」
「よしこっちへ!」
レッドがその隙をついて、少女を救出した。
「アクアーチェリー!」
「ぐわっ」
そしてブルーのアクアーチェリーが命中し、ダメージを与えた。
「ブラッククロス!許さん!!」
5人の心が怒りに燃える!
「スーパー団傑キック!!!」
「ぐああああああああっっっ!!!」
5人の絆が一つになった蹴りが、兵隊長を爆散させた!
「みっちゃーん!」
「なっちゃーん!」
平和になった街で、少女たちが抱き合う。どうやらさっきの子がなっちゃんだったみたいだ。
「なるほど、そういうわけ」
赤崎さんが、後ろでニヤニヤしていた。
「メグミ、結構いいヤツだね」
「いきなし名前呼びか」
印象通り、フランクな人らしい。
「赤崎さんだっていい人だろ」
「そっちも名前呼びでいいよ」
「じゃあ・・・ホムラさん」
「呼び捨てでいいよ」
「それはハードル高いな」
「じゃあおいおいで」
「そうさせてもらうよ」
太陽が沈んで、綺麗な夕焼けができている。
これを俺たちが守ったんだ。
「で、あんたどうするわけ?」
「どうするって?」
「またこれでさいなら?」
明さんが意地悪く聞いてくる。答えは決まっていた。
「続けるよ。地球を守るなんて大げさじゃないけど、身の回りの人くらいは助けたい」
「でもそれが地球を守ることに繋がる。責任重大」
「まあ考えすぎずにさ。気楽に行こーや」
源さんと大岩さんも割って入ってきた。話が暗くならないように気を使ってくれてるのが分かった。どうやら全員いい人そうだ。
「そうだ。早く帰ってカレー作らねえと」
「じゃあ私たちも帰ろっか。お腹すいたし」
「何ならうちで食べてくか?遅れたお詫びに」
「えっ。いいの?」
「大丈夫なん?」
「弟たち、にぎやかなの好きだから大丈夫だろ」
「では遠慮なく」
「私はカレーには厳しいぞ~?」
カレーの材料、買い足さないとな。
そんなことを思いながら、俺は温かい我が家への帰路に着いていた。
「ぬうう、まさか兵隊長を打ち破るとは・・・。侮りがたし地球人」
グオオオオオオオオ
「おっ、落ち着いて下され!大首領!次の作戦は既に・・・!」
ゴオオオオオッ
「っ!何ですと!まさか・・・」
グオオオオオオオオオオオッ
「デビル怪人を・・・」
闇に包まれた暗黒空間、そこで何かが起ころうとしていた。
〇キズナイジャーファイルその2
名前:バッテン兵隊長
身長:200㎝ (改造後:220㎝)
体重:100kg (改造後:120㎏)
能力:闇の薙刀術、エネルギー弾など
技:ブラックスラッシュ 薙刀を振るい斬撃を飛ばす
ネオダーククラッシャー 薙刀を振るい、大きな斬撃を飛ばす
備考:選ばれたバッテン兵がドクター・オースイによって力を強化され兵隊長となるぞ!そして改造後はすべての能力が元の3倍の力となってるんだ!だが5人揃い、真の力を手にしたキズナイジャーの敵ではないのだ!!
〇次回予告
とうとう5人揃ったキズナイジャー。キズナイジャーたちは5人揃った時、初めて使える必殺技の特訓をする。だがそんな中、一体で星一つ征服できるほどの力を持つデビル怪人が現れ、ホムラたちを磔にしてしまった!残されたのはメグミとナガレのみ。この絶体絶命の状況を、凸凹コンビは切り抜けることができるのか!?
次回!団傑戦隊キズナイジャー!
「ブルースカイ!決まるか必殺技!!」
どうぞお楽しみに!!