残酷女装 〜髪から始まる地獄〜
〜お知らせ〜
あのGirls worldの作者、maimaiさんと私の合作がついに完成しました!!
私があらすじ、シチュエーション、セリフ等を考え、maimaiさんが修正、加筆、校正し作品に仕上げてくれました!
残酷女装 ~髪から始まる地獄~
このクラスは女子の人数の方が多く、女子15名、男子10名の合計25名で構成されているせいか、女子の方が少しばかり幅を利かせていた
『白石理沙』はそんなクラスの女子の中心人物であり、クラスカースト上位に位置していると言っても過言ではない 彼女は綺麗な黒髪のストレートヘアーがチャームポイントで、女子グループの中でもその美髪はとても好評だ
しかし、そんな状況でも男子達は自らの存在を誇示するために徒党を組み、白石率いる女子達にも対等に渡り合うことができていた
その大きな理由の一つが『神谷涼』の存在だ 涼は比較的粗暴かつ肝が座っており、女子からの憎まれ口にも動じず、むしろ女子を小馬鹿にする態度や言動を繰り返す男子のリーダー格とも言える存在であった
白石家も神谷家も両親が離婚しており、理沙はシングルマザーの環境で、涼は孤児院で育っていった 似た境遇の2人ではあるが、涼は親に捨てられた過去があるためか、親の愛情を受けて育った理沙を良く思ってはいなかった
対する理沙も粗暴な涼を見下していたようだ
リーダー格同士が仲が悪いとなればクラスの男女間の仲が悪くなるのも当然で、男子は女子にちょっかいを出し、女子は男子を嫌悪し見下す風景が当たり前になっていた
そんなある日 理沙がトレードマークのサラサラストレートヘアーを珍しくリボン付きのヘアゴムで綺麗なツインテールにして登校してきた この理沙の変化を涼が見逃すはずもなく、クラスの誰よりも早く反応してちょっかいをかける
「おい、白石が変な髪型してるぞ、まるでウサギみたいだな!ウサギはウサギ小屋に帰れよ!」
その言葉で男子達の笑いを取る涼だったが、女子達はそんな男子には冷ややかな目線を向けた後理沙に近づいて言った
「えぇ~?りさ可愛いじゃん!」
「どうしたの?イメチェン?」
「子供な男子には可愛い髪型なんて分からないんだよ!」
女子達は理沙を取り囲み男子達から遠ざけようとする
「ありがとっ!ママにヘアゴムもらったから付けてみたの!」
理沙はそう言いながら蔑んだ目で涼の事をチラッと見た後、席に着くため涼の横を通り過ぎようとした 理沙のその態度が気に食わなかったのか、はたまた無視されてプライドを傷つけられたからか、いつもならこのまま終わっていた涼が今日はさらに追い討ちをかけていった
「なんでウサギが教室にいるんだ~?早くウサギ小屋に帰れよ!」
理沙の綺麗にまとめられたツインテール 涼はそんなツインテールの毛先に指を絡めて引っ張る
しかし、手をあげられてもなお理沙は無視を続けている 髪を触られた事に対する嫌悪感はあったが、それでもまだ我慢できないレベルではない
「おい、ほら!何とか言えよ、ウサギ女!」
理沙は毅然とした態度で涼を睨みつけ、対する涼はニヤリと笑う 心の中では互いに負けるわけにはいかないという思いがうごめいていた
お互いが引くに引けない状況で涼の行動がエスカレートしていく 指先だけではなく手のひらでツインテールの片方をぎゅっと握った そこまでくると流石に危険を感じ取ったのか、理沙は「触らないで!!」と声をあげた
涼はようやく反応を示した理沙を見てにたりと笑い「サワラナイデー」と誇張して彼女の真似をして馬鹿にする 怒りの表情を浮かべた理沙は髪に触れている涼の手の甲を叩いて抵抗する
『パチンッ!!』
突然手を叩かれた涼は僅かに表情を歪め、それから理沙の髪を両手で掴んだ
「痛えじゃねぇか!」
手を叩かれた涼はその拍子に掴んでいた髪をぐいっと乱暴に引っ張り上げる その瞬間、ストレートロングの髪がパチンと音を立てて解けた
髪を可愛らしく結んでいたヘアゴムは乱暴な扱いに耐えきれずに千切れてしまったのだ
「あーあ、ウサギがいつもの白石に戻っちまったな!」
勝ち誇ったように憎まれ口を叩く涼だったが、理沙からの返事はなかった
理沙は千切れてしまったヘアゴムを両手に包んで俯きがちにつぶやく
「……さないから」
「は?なんだよ?」
「絶対に許さないって言ってるの!!」
大きな声を上げた理沙は涼の頬を叩いた 一方の涼は逆上して理沙の髪を鷲掴みにする
一瞬のうちに二人は掴み合いの喧嘩となり、騒然となった教室では男子が囃し立てたり女子が泣きだしたりしていた
結局、二人の喧嘩は担任教師が教室に来るまで続き、一部始終が大人達にも露見することとなった
「貴方がたは一体どういう教育をなさっているんですか!」
応接室に理沙の母である『白石麻理』の声が響き、教師達は思わず首をすくめる 学校長と施設長が冷や汗をかいて頭を下げる中、当の涼だけが麻理の激情を前に頑なな態度を取っていた
もちろん、涼にも大人が怒っているというこの現状への恐怖心はあるが、ここで怖がっていては相手の思う壺だと思っていたために強がっていたようだ 麻理はそれが気に入らないようで、憤りをあらわにしたまま言葉を続けた
「掴み合いの喧嘩をするなんて……顔に傷でも出来たらどうするんですか?ウチの子は女の子なんですよ?」
「お母さん、ごめんなさい……」
理沙が申し訳なさそうに目を伏せると、母親は慌てて甘い声を出す
「お母さんは理沙ちゃんを怒っているわけじゃないの、理沙ちゃんの可愛いお顔に傷がついたら将来に影響するかもしれないでしょ?顔が全てではないけど、女の子にとってはとても大事なことだからずさんな管理体制を指摘してるの」
「顔に傷があろうがなかろうが、白石なんて誰も相手にしないよ」
冷やかすように涼が言うと、麻理はピクリと眉を震わせた 怒りの限界点に来ているのだと皆が息を呑み、施設長は慌てて涼の頭を掴み無理矢理に下げさせる
二度三度抵抗したものの大人の力には勝てず、涼は不満ながらも頭を下げることになる 施設長はその姿勢のまま、媚びるような笑みで言った
「すみません、うちの涼は少しばかり活発が過ぎて……それにほら、この年頃の男の子って言うのは好きな女の子に意地悪をするものでしょう?」
「俺は白石なんて好きじゃねぇし、こんな生意気な女」
「活発が過ぎる…ねぇ、口も態度も悪いだけにしか見えないですけど?」
「ま、まぁまぁ、理沙ちゃんのお母さんも落ち着いてください、お互い子供がやったことですから、ここは大目に見てあげるということで……」
子供がやったこと
逃げ口上の常套句を口にした校長に麻理が再び眉を震わせる 冷たい怒声の再来かと思いきや、彼女は随分と落ち着いた様子でふっと笑った
「確かに先生方が言う通り私が厳しすぎたのでしょうね、分かりました、涼君を責めるのはやめにして此処からは大人同士で話し合いましょう」
「それでは今回のことは不問に…」
男達が安堵した様子を見て麻理は冷たい視線を向ける
そう、理沙が男嫌いである様に、麻理もまた男嫌いであった。
「私、貴方がたの学校と施設を訴えます、可愛い娘が虐められたというのに、私は黙ってはいられません……暴行と器物損壊で起訴させて頂きます」
「なっ、き、起訴だなんて……暴行罪はともかく、ヘアゴム一つでそんな」
「あのヘアゴムは私達にお金が無い時にせめてもの思いで理沙の誕生日プレゼントとして買ってあげたものです、それを壊しておきながら『ヘアゴム一つで』と言えるだなんて……やはり、裁判に持ち込んだ方が良さそうですね」
「し、しかし……それはですね……」
「貴方がたに心からの謝罪を求められるとは思いませんし、理沙の心のケアも期待は出来ませんもの……さっそく弁護士に頼んで、訴状を作らせて頂きます」
このままでは問題が大きく膨らみ、いずれマスコミにも嗅ぎつけられてしまう そうなれば学校と施設が閉設に陥いる足がかりになってしまっても不思議ではない そう考えた学校長と施設長は、浅ましくもすべての責任を涼に押し付けることにするのであった
彼らは、涼の人生を理沙の母親に売ったのである
「理沙ちゃんのお母さん、どうか落ち着いてください……涼君には私達がよく言って反省するように促しますからどうか裁判沙汰だけは……」
「そうです……うちの施設も涼だけではなく沢山の子供達の未来が掛かっているんです、涼の為だけに施設を閉めるわけにはいかないんです」
「だったら……神谷涼君には、何かしらの罰を与える必要がありますね…」
麻理が冷たく笑い、学校長と施設長が迎合するように笑う姿に涼はゾッとしてしまう ヘアゴム一つを壊したことで自分にどんな罰が与えられるのだろうかと言う恐怖心が膨らむ
だが、彼はここで引き下がるわけにはいかなかった ここで謝ることは涼にとっては白石理沙に負けたも同然 涼のプライドがそれだけは避けようとしていた
すると校長が口を開き、施設長もそれに続く
「涼君に罰を……それは理にかなっていますね!本人に事の重大さを理解させなければ虐めは無くなりませんからね!それで……どのような罰にするんでしょうか?」
「涼、これはお前にとっても良い機会だ、しっかりと罰を受け入れて反省しなさい!」
男達の勝手な言い回しに、麻理も理沙も呆れた表情をしつつも涼を見た
恐怖に固まりながらも未だ反抗的な態度を取る彼を見て何かを思いついたのか、理沙は母親へと耳打ちをする それが「男らしさ」を生きる指標としている涼にとってどれだけのダメージを与えるか知った上で、あえてその『思いつき』を伝えたのである。
「そうね……理沙、貴女の言う通りだわ」
意見が合致したためか、今後の展開が楽しみなためか、麻理と理沙はニヤリと笑みを浮かべていた
涼はそんな二人から不穏な空気を感じ取り、脅えながらも平然を装い口を開いた
「な、なんだよ……俺に何をさせるつもりだ!」
不安がる涼を尻目に麻理は大きな声を上げる
「神谷涼君、あなたには髪を伸ばしてもらうことにします!」
その言葉に、大人達は呆気に取られるとももに拍子が抜けた
子供が髪を伸ばすだけで裁判沙汰を逃れられるのである こんな軽い罰でいいのだろうかと安堵する大人達とは対照的に、涼は目を見開いた後、ギッと理沙を睨みつける
「髪を伸ばせだって!?男の俺が!?」
「そうよ、女の子にとって髪の毛がどれだけ大事か、そうでもしないと神谷は分からないでしょ?良いじゃない、とっても可愛くなると思うわよ?」
理沙は明らかに馬鹿にした目で涼を見る
「ふざけんな!髪を伸ばして女みたいになるくらいなら、死んだ方がマシだ!」
そう言って応接室を出て行こうとする涼を校長と施設長が羽交い絞めにする 暴れる涼を無理やりに抑え込みながら、大人達は理沙の母親の言う「罰」に賛同することを示した
すると、麻理はペンとA4サイズの紙を取り出し、校長と施設長にサインをするようにと言いつけた
「裁判にしない為の取り決めなのですからちゃんと文書にしておきませんと、後からそんな契約はなかったと言われても困りますからね」
抜け目のない女だと思いながらも学校長と施設長は涼を抑え込みながらサインをし、最後には涼にも無理矢理署名させるのであった
自分の人生を売られたのだと絶望しながらも、涼は麻理と理沙を睨みつける
この日を境に涼の絶望の日々がゆっくりと動き出した
それから数カ月間、涼と大人達の攻防戦は続いた
大人達は契約通り涼に髪の毛を伸ばさせようと監視するが、涼は大人達の隙を見て髪が伸びる度に自分の持っているハサミでざくざくと切り落としてしまう
しかし大人達もさるもので、涼が髪を切り刻むと知ってからは刃物という刃物を全て涼から遠ざけた
涼が髪の毛をむしろうとすれば、彼に掻きむしり防止用の手袋を嵌めさせて妨害してしまう
それでも涼は最後まで抵抗し伸びた髪の毛を歯で噛み千切るという手段に出たが、口元まで伸びた髪の毛は最早女の子の髪と同じような長さまで伸びているということでもある
実質大人達、及び理沙と麻里の勝利と言えるだろう
「くそっ!!俺が髪を伸ばすことになるなんて……」
涼の抵抗も虚しく正面やサイドの髪は目や頬にかかり、後ろ髪はすっかり肩まで伸びてしまっていた
大人達の執拗な監視と対策を前に髪を切るという手段は断念した涼だが、せめて女らしく見えないようにと伸び放題の髪を雑に扱うことにシフトしていく
ほとんど髪を洗わず、洗っても台所用せっけんで洗い、出来る限り長くなった髪を虐め倒していく
そうすることで周りに「自分は髪に気を使っている女子とは違う」という事を認識させる意味もあったのだろう
それでも、学校に行けば馬鹿にされるのは涼の方だった
もはや様変わりした涼を恐れる女子はもういない
「かーみやくん、ずいぶんと髪伸びたね~女の子みたいでかーわいい~」
「うるせぇよ!俺が好きで伸ばしてるように見えるかよ!あっちいけ!」
「ええー?そんなこと言って~ほんとーは伸ばしたいくせに~!」
「お前ら……あんまり生意気言ってるとぶん殴るぞ!!」
「殴ってみればー?そうしたら、次はどんな罰が待ってるのかなぁ?」
涼を挑発するように発言したのは、涼が髪を伸ばす原因となった少女、理沙だ
涼は理沙に今すぐにも掴みかかりたい衝動を押さえつつ彼女を睨む
すると、理沙は「まぁ!こわぁい!」と笑い、周りの女子達もキャッキャと笑っていた
そして理沙はおもむろに茶封筒を取り出し、涼に渡した。
「なんだよこれ、俺への詫び状か?」
「そんなわけないでしょ?お母さんからの手紙!神谷が暮らしている施設の施設長さんに渡してって、今日のうちに渡した方が自身の為だよ」
理沙の含みのある言い方に腹が立つ涼だが、これを渡さなければ次にどんな罰を受けるか分からない
涼は返事をすることはなかったが、不機嫌そうな表情で理沙から茶封筒を受け取った
その日の放課後
涼は男友達とサッカーもせずに施設に帰宅し、引き続き不機嫌そうな態度で施設長に茶封筒を差し出した。
施設長はおっかなびっくりその茶封筒を受け取ったが、中身を見た途端に驚くような様子を見せ、その後安堵したように溜息を吐いた
「先生、手紙になんて書いてあったんだ?」
「ああ、涼、お前にも喜ばしいことだよ、新しい家族が決まったんだ」
「えっ!?」
嫌な予感が頭をよぎる
そして、それは現実のものとなってしまった
「早速荷物をまとめよう、白石さんがお前を養子に迎え入れてくれるそうだ!くれぐれも、粗相が無いように気を付けるんだぞ?」
「え!?嘘だろ!?待ってくれよ!!俺は絶対嫌だからな!!」
必死の抵抗も虚しく、翌日には涼は白石家の養子として引き取られた
書類には何の不備も無く、また施設側も手放しで喜び、彼には寄る辺など一つも有り得なかった
憂鬱な気持ちで理沙とその母親が住む家に連れていかれた涼は、この時彼女達が自分の想像以上に陰湿であることに気づいていなかった
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