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第二話

 王立学園シュバルディンは貴族御用達の学園である。

 一流の教師、最高の設備を持つ大陸屈指の学校なのだ。

 さらに、特筆すべきは生徒に自治権を与えているところだろう。

 学校という国の中でトップに立つ生徒会長はまさに国王、生徒会役員は大臣、平の委員はさしずめ官僚と言ったところである。


 そして、栄えある生徒会長は平民出身のモブール・ボンジンである。

 貴族御用達ではあるが、優秀な学生は特待生として特別に入学できるのである。モブールは冴えない容姿とは反対に、学業がピカ一なのだ。

 体育以外はすべて歴代最高値を叩きだしたモブールは、革張りの生徒会長の椅子に震えながら座っている。



「まあ、王太子殿下。冗談は性格だけにしてくださいませオホホホ。我ら体育部は遠征費や備品購入費で何かと入用ですのよ。フェンシング部は3連覇、サッカー部は5連覇達成、乗馬部に至っては10連覇達成の成果をあげていますの。全体予算の三分の二を頂くのは当然ではなくて?」


「ははは。君こそ寝言は寝てから言ってくれ。我ら文化部の輝かしい成果を知らないとは実に嘆かわしい。吹奏楽部はコンクール一位の常連だし、チェス部に至っては大陸一位、さらに薬草研究会は査読付き論文に掲載され、賞を総なめしているんだ。三分の二に相応しいのは我々ではないかな?」


 生徒会長を差し置いて激しい舌戦を繰り広げているのは、王太子コンラートと公爵令嬢アリシアである。うっとりするような美形だが、嫌味や皮肉の応酬に気が弱い生徒会長は半泣きである。


 文化委員長のコンラートと体育委員長アリシアはいつもこうやって何かしらで戦っているのである。なお、二人が生徒会長にならないのは、去年の生徒会投票でお互いが足の引っ張り合いを行った結果、性格がよくて頭のいいモブールに票が集まったからである。



 それでもまんまと生徒会役員に就任した二人は方や体育会系、もう片方は文化系を味方につけ、バチバチの闘争を裏表関係なく繰り広げているのである。


「アリシアさまー!!予算もぎ取ってくださーい!!」

「フレー! フレー! ア・リ・シ・ア!!」

 黄色い声に混じって屈強な男子陣の応援の掛け声が響く。


「コンラート殿下! 負けないで下さい! 我ら文化系の意地、見せてやりましょうぞ!」

「コンラートさまー!! ヴァイオリンを競り落としたいのでぜったい勝ち取ってください!!」

 文化系は大人しめの音量だが、熱量は体育会系に負けてはいない。




 二人は仲間の声を受けてバチバチと相手を睨みつけた。


 その後は値段の交渉が凄まじい速度で行われた。

 オークションもかくやと言うくらいの熱の入用である。


 

キンコンカーンコン



 下校時刻を知らせる鐘がなり、ひとまず休戦することとなった。



「これで終わったとは思わないで下さいませね」

「そちらこそな」

 二人は腹黒そうな笑みを互いに向けあうと、仲間を引き連れてそれぞれのアジトへと戻っていった。

 新校舎の西館が体育部、東館が文化部のアジトである。

 生徒会室はそのど真ん中の本館である。



 二人が去って行ったあと、生徒会副会長のタダーノ・パンピはぽつりとこぼす。

「お金持ちなのに端数まで争うのが意外だよな」

「いやいや、あれはお二人の意地の張り合いだよ。たぶん、相手が違ってたら常識……よりちょっと大目くらいで落としどころを見つけていたと思う」

 モブール・ボンジンは冷静に分析する。

 あの二人は優秀だが、お互いを意識し始めるとただのドクズになり下がる。相手をいかに屈服させるかのみを目的とするのだ。


 生徒会役員にとっては迷惑この上ないが、一般生徒にとっては美少年と美少女の白熱バトルは目の保養になるらしく、エンターテイメントとなっている。

 伝え聞くところによると、どっかのだれそれが元締めとなってどっちが勝つか賭けを開催しているというから、シュバルディンの学生は逞しい。


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