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ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~  作者: 悠月 星花


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1564/1569

1563. あと3日ですね

「結果は、10日後にわかることだし、俺たちは、気長に待つしかないな」

「そうね」

「アンナリーゼ様は、他の職人へ声をかけることは、考えていないのですか?」


 ナタリーに言われ、私は苦笑いをした。他の職人へ声をかけることも考えたが、私はトレビと出会って、話をしてみて、なんとなく、他の職人ではない気がしたのだった。だから、ナタリーの申し出もわかるが、他を当たるつもりはなかった。


「ナタリーの言う通り、他の職人も考えてみたけど……」

「アンナリーゼ様は、トレビさんが来てくれることを願っているって感じかな?」

「そうね。セバスの言う通り。直感で、トレビさんがいいと思ってしまったから、今は、他の職人へ声をかけることは、控えたいわ」

「でも、この地には、もう来れないのですよ。職人を連れ出すには、こんな機会……」

「わかっているわ。でも、他の職人に声をかけなくても、私はいいと思っているの」

「……そんな」


 ナタリーは、よほど、人形が気に入っているらしく、職人を連れて、領地へ戻りたかったようだ。ただ、インゼロ帝国とは、国交断裂もしている中、無理に連れていくわけにもいかない。自分で決めて、アンバー領へ来てくれないと、何かあったとき、立ち直れないこともある。

 私はナタリーの肩を抱いて、「大丈夫よ」とだけ呟いた。


「ナタリーの言い分もわかるけど、姫さんの意見も尊重してあげないとだろ?」

「ウィルに言われなくてもわかっていますわ!」

「それなら、問題ないだろう? それに、ナタリーもよく考えてみてくれ。勝てない商談は、姫さんならしない。何かしら、手ごたえがあるから、10日もこの地で野宿する羽目になったんだから」

「ごめんね。私の我がままに付き合わせて」

「いいってことよ。まぁ、多少、お気に召さないものもいるかもしれないけど、姫さんのために組まれた隊だから、文句は言わないだろう」

「国からの手当とは別に、私も特別手当を出すつもりよ。往路だけでも、いろいろとあったもの」

「そりゃ、みんな喜ぶ。無事に国へ戻れたらってことで、楽しみにしておくよ」


 そういって、ウィルは、近衛たちが集まっている場所へと向かった。野営の準備をしているのだ。護衛の指示に向かったのだろう。

 その場に残った私たちも、寝泊まりするための準備をする。私とナタリーは、もちろん馬車の中で眠るし、セバスは荷馬車で寝ることになるので、そちらの準備に取り掛かった。ヒーナも手伝ってくれるが、人の少ない野営であるから、自分たちのことは、なるべく進んですることにしている。


「食事は、私も手伝いに向かうわ」

「お願いします」


 ナタリーとヒーナが、馬車の中を整えているので、私は夕食の手伝いに向かった。簡単な料理なら作れるし、少しくらい役には立つ。それを近衛たちも知っているので、私を夕食の手伝いで邪魔者扱いすることはなかった。


「アンナリーゼ様、質素な夕食で……」

「私が望んで野営になったのだもの。気にしないで。そもそも、あなたたちを野営に巻き込んでしまったことの方が、申し訳ないわ」

「そんなことはないですよ。一生に一度経験できるかどうかの出来事ばかりでしたから……。それに、こうしてゆっくり鍋をかき混ぜる時間なんて、公都に戻ったらありませんからね」

「そうです、そうです。セシリア副隊長は、アンナリーゼ様より、ずっと厳しいですからね」


 あはは……と、近衛たちが笑っているので、そこにウィルも合流した。


「いいのかな?セシリアに言いつけるぞ?」

「大隊長、それだけは、勘弁してください。ただでさえ、厳しい訓練なのに、血反吐を吐くくらいの訓練になったら、どうするんですか?」

「そりゃ、大変だな。俺は、アンバー領にいるから、その訓練を受けられなくて、残念だ!」

「大隊長!」


 嘆くように近衛たちは、ウィルを呼んでいる。鍋を囲みながら、「そろそろよさそうね」というと、待機していた近衛たちが机を広げ、食器を並べていく。私は、ナタリーたちを呼びに行ってくると馬車に向かい、そのあいだに、手早く夕食の準備が整えられていった。ナタリーとセバスを呼んだあと、護衛の者を残し、夕食を囲む。食べたあとは、残りの者と交代となる近衛たちは、効率よくご飯を食べ、次々と変わっていく。私とナタリーとセバスはゆっくりご飯を食べているので、少し申し訳なく思ったが、怪我をしているウィルも同じように食べていたので、気にしないでいいと言ってくれた。


それから、7日間、この場で野営を続けている。私たちは、ときどき、町に買い出しに向かい食料を補充しながら、トレビを待ち続けた。


「あと3日ですね」


 ナタリーが町の方を見ながら、ため息をついていると、見覚えのある人物が、手を振ってやってきた。背中には大きな荷物をしょっているように見える。


「……ここで、野営をされていたのですね。町を出たところでと言われたので、少し探してしまいました」

「町のすぐそばでは、さすがに目立つから、少し離れていたの」


 私たちは軽く挨拶を交わし、今、淹れたばかりのお茶をトレビにも差し出すと、ごくごくと飲んでしまった。

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