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ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~  作者: 悠月 星花


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第1558話 ……変わった貴族様ですね

 セバスの回復を待っていると、夜まで目的地にまでたどり着かないような気がすると護衛たちに言われ、私たちはどうするのがいいのか考える。馬車は町の外にあるし、町の中の道は、あの馬車では通れない。どこかで、借りられるといいのだけど……と思っていた矢先、一人の男性が荷馬車で私たちの前を通ろうとしていた。

 私は、思わず、その男性に「待ってください!」と声をかけた。男性は、私に声をかけられたことに驚きながらも、停まってくれた。


「どうかしましたか?こんなところで」

「えぇ、連れが、歩き疲れてしまったようで、もう少し先にあるあの大きな木の場所まで行きたいのですけど、途中まで乗せてもらえないかと」

「あぁ、いいですよ。ちょうど、あそこは、私の家がありますから。四人とも乗りますか?荷物があるから、ちょっと片付けてもらわないと乗れないですが……」

「いえ、連れだけで大丈夫ですよ」

「アンナリーゼ様も一緒に……お願いします」

「……私と連れの二人をお願いできますか?」

「いいけど、そっちの二人はどうする?」

「私たちは、走っていくので、お気遣いはいりません。ありがとうございます」


 護衛たちを見て、男性は、「本当に大丈夫?」と聞くが、二人とも「問題はありません」と返答した。目算では、あと少しで着くと思っているのだが、そうではないのだろうか?


「あと、どれくらいの距離なのですか?」

「んー、馬車で5分ってとこかな?」

「それでしたら、大丈夫です。馬車についていきますので、どうぞ、気にしないでください」

「そこまで言うなら……」


 私とセバスを荷馬車に乗せ、男性は御者台へ乗り込んだ。私は、荷馬車に積まれている荷物をチラッと見ると、目のようなものが見えた。


「ねぇ、セバス。あれを見て」


 荷物の方を指さすと、ウィルのようなアイスブルーの瞳がこちらを見ていた。それを見て、セバスは悲鳴をあげる。男性は、セバスの悲鳴に驚き「どうかしたか?」と尋ねてくれた。


「荷物の中に、瞳のようなものと目があったので、驚いてしまったのです。すみません、大きな声を出してしまって」

「いや、いいんだが……瞳のようなものというのは、人形の目のことか?」


 男性のいう『人形の目』というのは、ナンシーと同じもののことを指すのだろう。私は、思い切って、この町に来た目的を話してみることにした。


「そうです!人形の目のことです。私、昔、自分の髪と目の色をした人形を両親からもらったのです。インゼロ帝国の皇都に出向いたさい、同じような人形を見つけたので、ぜひ、職人さんと話をしてみたいと、店主にこの町の話を聞いたのです」

「あぁ、なるほど。お客か。こんな荷馬車に乗せてしまって、すまないな」

「……お客?」

「あぁ……自己紹介をしていませんでしたね。私はこの町で人形職人をしているトレビと申します。最近、一人前になり、師匠の工房を間借りして工房長になったばかりの新米ですが」

「トレビさん。私は……」


 身分を明かそうかどうか悩んだが、結局のところ、アンバー領へ来てもらうためには、誠意を持って話をしない限り、こちらへの信頼は勝ち取れない。私は、自身の身分を伝えようと口を開こうとした瞬間、先にトレビが「貴族の方ですよね?」と、口にした。


「本当、こんなボロ荷馬車に乗せてしまって、申し訳ないというか、私は首を斬られるんじゃないでしょうか……?」

「とんでもない!そんなことするわけがありませんよ。私は、トレビさんのいうとおり、貴族……それも、公爵です」

「公爵ですって?それは、もう、皇族の方々と同じではありませんか……。ハハハ……」


 から笑いするトレビに、私は「トレビさんが気にすることは何もありませんよ」と伝えるが、不安な様子は伝わってくる。安心できるかどうかはわからないが、きちんと、私のことを話すことにした。


「私の名前は、アンナリーゼ・トロン・アンバー。隣国ローズディア公国の筆頭公爵です。今回、私が、この地を訪ねたのは、トレビさんの首をいただくために来たわけではありませんから、安心してください。それに、馬車に乗せてほしいと頼んだのは、私たちなのです。荷馬車に揺られることなんて、私も隣にいるセバスもよくあることなので、気に病むことはありませんよ」

「……公爵様が、荷馬車に揺られることなんて、ないと思いますが」

「普通は、トレビさんの言う通りなのでしょうが、私の領地では、少々勝手が違います。インゼロ帝国と国交を断絶させているローズディア公国の話題は、なかなか耳にすることはないかもしれませんが、公爵領といえど、この町よりずっと貧しかったのです。ですので、荷馬車に積まれた肥樽と一緒に乗ったこともありますし、麦の収穫のときは、だいたい多くの領民と一緒に荷馬車に乗っています。あぁ、綿花摘みのときもそうでしたね」

「……変わった貴族様ですね」

「自覚はありますから。だから、気にしなくていいですよ」


 私の身の上を話しているうちに、どうやら目的地であった場所に到着したようだった。大きな木を見上げながら、私は、トレビがアンバー領へ来てくれたいいのになと考えていた。

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