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ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~  作者: 悠月 星花


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1555/1569

1554. 人形の町Ⅱ

 ローズディアへの帰りは、行きと違い、道の様子もわかるので、進行速度が多少早くなったように感じた。それでも、今は街道から離れた道を私たちは目的地に向け走っているので、多少の警戒はしていたが、あっという間に、目的の町までついたようだ。ヒーナの言ったとおり、人形職人がいる町が見えてきた。


「どんな場所なのでしょう。すごく楽しみですね!」

「ナタリー、あまり、期待しすぎるのはよくないよ。ここは、敵地の真ん中だということを忘れないように」

「わかっていますわ。宰相様のおかげで、インゼロ帝国にいるあいだ、とても快適な時間を過ごすことができていたことも、重々にわかっています」


 セバスに窘められ、ナタリーは少しむっとしたようだったが、私たちの置かれている状況は、きちんと理解をしている。ナタリーも、学生の頃から、私とともにいたので、それくらいの危機管理くらいはあると言いたげであった。


「さてさて、ケンカはしないで頂戴。私たちの目的は、人形職人を得ること。叶えばいいけど……」

「難しいでしょうね。この国から出ることになりますし、二度と故郷には戻れません。手紙すら送れない状況で、生まれ育った場所から去るというのは、かなり、大きな決断になるかと」

「みなもそうだった?」

「俺は、仕事柄、いつどうなるかなんてわからなかったし、学園を出るころには、どうするかっていうのは、決めていたからな。親と連絡は、取れない環境ではないから少し違うかもしれないけど」

「僕もウィルと同じです」

「私は、二人とは少し違いますわ。婚姻で、他領へ嫁ぐのですもの。親兄弟であっても、婚姻してしまえば、他人と言いますわ。もちろん、親子の縁は、切っても切れないと言いますから、何かと迷惑をかけるつもりでいましたけど、子爵家へ戻るなんて、夢にも思っていませんでしたもの」


 ナタリーのいうとおり、私も婚姻がきっかけで、生家を出た身だ。国も違うため、フレイゼンへ戻ったのなんて、1度きりである。公爵家ともなれば、普通なら社交を重要視するため、公爵夫人である私は、今頃、公都から身動き取れないのが本来の姿だ。


「それぞれ、理由は違えど、親元を離れているのですもの。職人の中でも、新天地で上を目指そうとしている者もいるかもしれないから……、希望は捨てずに、向かいましょう」

「そうですわ、必ず、そういう職人もいますわ!」


 ナタリーは、子爵家お嬢様というより、今では職人側になっているので、仕事への情熱の方が大きい。だからこそ、この熱量と合う職人がいることを願うしかない。


「町の外まで来ました。どうされますか?」


 ヒーナに話しかけられ、私たちは、それぞれの顔を見合わせる。もちろん、制服を着ている近衛たちもいるし、ウィルたちのように私服のものもいる。警戒心を考えれば、制服を着ている近衛と一緒に向かうのは得策ではないだろう。ただ、護衛対象であるのは私なので、隊長と相談しなくてはならない。


「相談してくるわ」

「面倒ですね!私が行ってきましょうか?」

「護衛対象であるのは私だから、ちゃんと話をしてくるわ」


 私は馬を走らせ、先頭にいる隊長のもとへと向かった。城門まであと少しのところで、停まっていたので、すぐに追いつく。


「アンナリーゼ様」

「帰路の途中での寄り道、本当に申し訳なかったわ」

「それは構いません。お約束したとおりですから。これから、どうされますか?」

「そうね。近衛の制服は目立つから、できれば、ここで、待機してほしいのだけど……」

「そうは申されますが……」

「大丈夫。近衛の中の何人かは、こういったことも考えて、普通の服も持ってきているはずだから、声をかけるわ。しばらくのあいだ、荷物を見ていてくれると、助かるのだけど?」

「……わかりました。確かに、この制服を着て、町へ入ることは、敵意を向けられる可能性がありますね」

「反対に抑制も考えられるけど、変な緊張状態にならない方が、理想的だと思うわ」

「おっしゃることは、理解できますので、アンナリーゼ様のおっしゃる通りに、進めてください」


 隊長は、私からの意見を受け入れてくれたため、ウィルの隊の者数人に声をかけた。やはり、私の行動をウィルから聞いていたからなのか、準備はできているようで、すぐに着替えてくれる。


「では、あまり多くで向かうと、警戒されてしまうので、私とナタリー、セバスと……」

「……俺は留守番だって言いたいんだろ?」

「来てもいいけど、おとなしくしていられる?」

「そりゃもちろんだ。こんな怪我しているんだから、おとなしく口だけにしておく」

「……それは、おとなしくっていわないんだけどな。まぁ、いいわ。ウィルが言ってくれる方が、安心といえば、安心よね」


 チラッと隊員の方を見れば、軽く頷いているので、ウィルも連れていくことにした。もちろん、ヒーナも同行するのだが、そうすると、なかなかの人数になるので、二手に分かれることにした。私とセバス、ウィルとナタリーとヒーナに、それぞれ、ウィルの隊から2名ずつというふうになった。


「組み分けは妥当だと思うけど……俺のほう、結構、あれじゃない?」

「仕方ないでしょ?ウィルは、今、護衛される側の人間よ」


「じゃあ、行きましょう」と、私とセバスは馬に乗り、ウィルたちは馬車で移動することになった。素敵な出会いがあることを願って……。

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