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悪役令嬢? いえ私は、騎士になります。  作者: 桜咲 京華
異世界転生ー私は騎士になりますー
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9 筆頭侍女カーラ

 目が覚めると、自室の寝室のベッドに寝かされていて、カーラが傍らに立って居た。


「お目覚めですか」


 カーラが水を差しだしてくれたので、介助を受けながら身を起こしてそれを飲む。

 訓練着は脱がされて、ネグリジェ姿になっている。背中手を添えられているが、先程の戦闘で受けた背中の擦りむいた痕は治療されたらしく痛みは無い。


「シェイル……お兄様は?」

「既に目を覚まされていますが、腹部にダメージが残っている為、マノンを飲んで静養していただいています。夕刻には動けるおうになるでしょう。さぁ、お嬢様も、お身体についた傷は治療しましたが、一応飲んでおいてください」


 マノンは傷薬としては即効性があるが、内部へのダメージには効きが悪い。内臓にダメージがいったのだろうか。ちょっと申し訳ないな。

 マノンを生成して作った薬、マノン・ヴィーノはちょっと苦いが、飲み干すと後味はミントのようなすっとした風味が抜ける。苦手な人も居るらしいが私は嫌いじゃない。


「お嬢様」

「何? カーラ」


 少し緊張をはらんだ声だったので彼女に視線を向けると、いつも無表情に近かったカーラがその緊張を珍しく顔に出していた。


「貴方は、本当にクロウツィア様ですか?」

「……どうしてそう思うの?」


 いつかはバレる気がしていたのは確かだ。

 だって、急に態度を変えた自覚はある。一番身近なカーラには、ウィルとの婚約がきっかけというには不自然なほどの変化だったのだろう。寝食を見続けている筈の私を疑う位に。


「一番の理由は剣筋です」

「剣筋?」


 なんだそれ、いかにも武人っぽくてかっこいい。なんて茶化したら怒られそうな顔だ。黙って続きを促すことにする。


「貴方の剣筋はヴィラント家で培われたものではない、でも、やぶれかぶれのでたらめというわけでもない。全く別の流派で10年以上の修行を積んだかのような精錬された動きでした」

「……そうだね」

「それにそのご令嬢らしからぬ物腰や言葉遣い。婚約をきっかけに変わられたにしても無理があると思います」

「うっ」


 確かに。ウィルやシェイル、お父様の前ではクロウツィアとして振る舞うように気を付けていたけれど、カーラ達使用人の前では前世の言葉遣いや振る舞いを隠そうとはしていなかった。一番近くで見続けていたカーラならその不自然さに気付くのも当然だ。信じてもらえないだろうと思って黙っていたけれど、彼女になら話しても良いかもしれない。


「私は、黒鋼茜。黒鋼流次期師範だった女だよ」

「クロガネアカネ?」

「あぁ、茜が名前で、黒鋼が姓だ」


 私は思い出せる限りの前世の話と、ゲームの流れを説明した。婚約破棄からの返り討ちエンドまで話したところで、「そこは浮気の腹いせに叩き伏せるべきです。今のお嬢様ならできます」といきり立たれてちょっと困った。いくらなんでも王子を叩き伏せると後が面倒そうだよ。出来るかもしれないけど。あと、カーラってそういうキャラだったかな。とも思った。


「信じてくれるの?」


 正直荒唐無稽だと思う。前世の記憶は兎も角、未来の出来事を予言しているようなものだ。ちなみに私はノストラダムスの大予言を信じていなかった派なので、他人に同じ話をされても信じられないと思う。


「お嬢様が嘘を吐く理由はありませんから。でも、ここだけの話にしておくべきだとは思います」

「……それはそうだね」


 私としても無作為に話すべき話じゃないと思っているし、誰でも信じてくれる話じゃないと思っている。過去と剣筋が変わった、態度が変わったという程度で別人認定してくれるのなんてカーラ位だと思うし。


「ところで、一つ覗ってもよろしいですか?」

「どうぞ?」

「シェイル様をどうやって倒されたのですか? こういっては難ですが、シェイル様とお嬢様では身体能力に大きな差がありましたし……。私からも他の使用人からも、お嬢様が吹き飛ばされた後、シェイル様が突然腹部を押さえてお倒れになったようにしか見えませんでした」

「簡単だよ。私の力じゃ勝てないから、お兄様の力を使ったんだよ」

「??」

「要は、勢いよくつっこんできてくれたのでカウンターを仕掛けただけ」


 簡単に説明すると、振り下ろされる剣を避けて懐に入って竹刀を腹部に突きこんだだけだ。でもまるでダンプカーに突っ込まれたくらいの衝撃があったような感じがして、勢いに負けて吹き飛ばされてしまった。こればっかりはウェイトを上げるしか改善方法は無い。


「なるほど。お嬢様の並外れた動体視力の賜物ですね」

「……そうなの?」


 前世に比べてかなり弱体化したと思っていたけれど、動体視力だけは前世と同等のようだ。ちょっと明るい気持ちになる。


「飛来した剣を避けるのではなく弾くなど、あまり出来ることではありません」

「そっかぁ」


 前世では弓道部の友達と弓で射られた矢を叩き落す修行とかやって遊んでいたから、弾かれて惰性で飛んでいるだけの剣なんか遅いくらいに感じたけれど、この世界ではちょっと凄いらしい。


 扉がノックされて、誰何すると、侍女のミンネだった。私が目が覚めたのを知ってお茶を入れてきてくれたらしい。



「シェイル様が呼んでおられましたが、どうされますか?」

「……会うよ」


 さて、私はあの猛犬に首輪をつけられるかな。







次のお話から水曜日と日曜日の週二回更新になります。

 

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