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悪役令嬢? いえ私は、騎士になります。  作者: 桜咲 京華
異世界転生ー私は騎士になりますー
33/37

33 プリモワール邸の救出劇

「レイチェル!!」


 レイチェルの悲鳴を聞いたウィルが珍しく冷静さを欠いて階段を駆け上っていってしまったので、私もすぐに後を追う。カーラやシェイルが私達を制止しようと声を掛けながら追ってくるのを背中に感じつつ、階段の吸い込まれる先にあった天井を通り抜けると、そこはかなり上層部まで吹き抜けになっているようだった。


「これは!」


 周囲には騎士の服装をした男や、使用人の服装をした男達が呻きながら転がっていた。上層へ続く螺旋階段にも数人が倒れているのが見える。3メートル程上には橋のように渡された通路が一本通っており。それ以外には何もないのであれが最上部だろう。下からなので見えないが、見取り図だと、対角線上に屋敷に通じる扉と、窓がある筈だ。


「もうやめてぇ!」

「助けに来たんですよレイチェル様、もう怖くありません」


 私の方を振り向いてくれたウィルと顔を見合わせる、あの声はカルスヴァール子爵の声だ。


「だったらどうしてゼクトルまで、彼は私を助けてくれたのに!」

「騙されてはいけませんよレイチェル様」

「がはっ」

「ゼクトル!」

「こいつはレイチェル様とクロウツィア嬢を害する作戦に参加していた下郎共の協力者ですよ」


 聞こえてくる感じだとカルスヴァール子爵はレイチェル様を助ける為に敵側に入り込んでいたということだろうか、ゼクトルは戦闘不能の様子だ。足蹴にでもされているのかも。ていうか、結構執拗にボコボコにされてるっぽい、割とガンガンと建造物を通じて音が響いてくる。


「さぁレイチェル様、こちらへ」

「いやぁ!!」


 おっと、助けに来たカルスヴァール子爵に対してレイチェルが怯えてしまっている。大丈夫かな……。

 ウィルも困惑して動けない様子だ。私も動くべきか迷っている。カルスヴァール子爵がやはり味方だという結論で良いのかな。それなら子爵が連れて降りてくるのを待っている方が良いのかもしれない。


「知っているんだから! 貴方の事、思い通りにはさせないわ!!」


 全く話が見えてこない!

 どういうこと!?


「止めなさい、危ないですよ」


 カルスヴァール子爵の冷静な声が空しく響く中、窓が大きく開け放たれる音がした。まさか窓から逃げるつもり!?

 慌てて私達も近くの窓を開け放つと、幸いというか外も階段があって降りてこられるようになっていたが、完全に緊急用なのか手すりが無い。


「レイチェル! 今行くから中へ戻るんだ!!」


 ウィルが声をかけてから中の螺旋階段を上る。外の階段は一つ一つが岩が張り出しただけという作りで駆け上れるような状態ではないからだ。


「お兄様!!」

「ウィンスター様の言う通りですよ、危ないですから中へ戻りなさい」

「来ないで!」


 レイチェルがウィルに気付いて声をかけたが、外から中へ戻る様子はない。カルスヴァール子爵が窓際に立って居るのがチラっと見える。

 私が慌てて外階段へ足を掛けると、後ろからカーラが声をかけてきた。シェイルや他の騎士達は中の階段を昇って行ったようだ。


「お嬢様、危険です」

「分かってるけど、レイチェル様は中に戻れないよ。あの異様な怯え方尋常じゃない」


 ただ、風害によって劣化しつつある外階段は不安定で、あまりスムーズには登れないので、壁のデコボコに手を掛けながらのゆっくりした上昇になるので、レイチェル達の様子を確認しながら慎重に登っていく。


 やっと一メートル程度上昇出来たという所で、時が止まったかのようにはっきり見えた、カルスヴァール子爵の手がレイチェル様を外へ押し出すのを。


 レイチェル様の華奢な身体が、月明かりの眩い夜空を流れ星のように落ちていく。


「きゃぁあああああ!!」

「レイチェルーーーーーーーーーーーー!!」


 上層へたどり着いたらしいウィルの悲痛な呼び声の中、私は何を考えるでもなく無心で両腕をレイチェル様へと伸ばし、その身を投げ出した。


「お嬢様ぁ!!?」


 カーラの珍しく焦った声が耳に届く中、私の意図を察してくれる黒い蔓草が腕から網目状に広がり、私とレイチェル様を捕食するかのように包み込む。落下速度を緩めても尚感じる風塵の中、地上へと更に蔓草を伸ばし、私達を地面に横たえてから私の腕輪へと戻った。

 建物の外を登ったのはこれの為っでもあったのだ。

 マナスールを竹刀以外で実践に使用したのは初めてで、しかも自分を含めた二人分の命を賭けた行いに私の心臓はバックバクだ。

 隣に横たわるレイチェルの様子を見れば、気絶していた。無理もないなぁと思いながら。私も気が抜けた所為か意識が遠のいていった。


 


















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