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小説情報チェックという無駄な時間の浪費から抜け出したい……

 つい先日、長編作品を一つ完結させて、次回作の構想と書き溜めをゆるゆるやっています。



 70万文字を9ヶ月で書き上げたということは自分で自分を褒めてあげたいですが、この間、結構な無駄な時間の使い方をしたこともありました。


 絵心もないくせに自作の登場人物の絵をコピー用紙にボールペンで書き殴ったり。

 アニメ化されたら声優さんはこの人がいいなあ、とか、制作発表の場でこんなこと喋ろうか、なんて夢想したり。

 作中には出せない登場人物の濡れ場をメモ帳に書き殴ったり。



【◆合理的思考】

『そんなことしとる暇あるならさっさと続き書けや!』



 と、頭の中の妖精に怒られながら連載期間を過ごしていました。


 そんな私がにとって、この9ヶ月の連載期間の中で最悪の時間の浪費こそが――

「『小説情報』の確認」という無駄行為です。


 なろう利用者の方はご存知の通り、作品の『小説情報』ページには自作の感想やレビュー、ブックマーク、評価ポイントの項目があり、さらにはアクセス解析機能がついています。

 つまり自作の読者数とその評価が一目で分かるということです。


 投稿を始めて最初にこのページを開いた時、しっかりと記されていた「ブックマーク3件」の文字列……

 それに私は歓喜し、ガッツポーズを取りました。

 本当に嬉しかったんです。

 アクセスだけならちゃんと読んでくれたか分からないけれど、ブックマークをつけられたということは少なくとも投稿分は全て読んでくれて今後も読み続けてくれる読者ができたという証拠なのですから。

 それが嬉しくて、その日は仕事の合間やトイレをしている時やテレビを観ている時も繰り返し自分の小説情報ページをチェックしていました。


 そう、私は「小説情報中毒」になってしまったのです。


 作品の投稿は順調に進みました。

 序盤の方はある程度書き溜めもしていましたし、物語世界がほとんど出来上がっていないので気楽に頭の中にある映像を文字に書き起こすだけでやっていけました。


 しかし、その間もわたしの「小説情報中毒」は進行していきました。


 PCの前に座って書き始める前に小説情報をチェック。

 書いてる途中に気分転換に小説情報をチェック。

 PCを閉じる前に執筆の終わりに小説情報をチェック。

 布団の中で一日の終わりに小説情報をチェック。

 朝起きて小説情報をチェック。


 感想が書いていれば感想一覧に飛んでいく。

 ポイントが大幅に伸びたら日間ランキングに飛んでいく。

 ブックマークが外れていたら、直近の投稿分がダメだったのかと反省。

 アクセス数の部分別表示を確認して、一話を読み始めた人が継続して読んでくれている数と率を解析。


 それはとても楽しく、刺激的でした。


 ソシャゲーのレベル稼ぎや素材集めにも似た作業的快感。

 他者に自分の作品を読まれるという承認欲求の充足。

 それを求めて細かいスパンで小説情報を確認しに行く。


 これはなろう作者だけが味わえる特別な快楽に他なりません。

 同じような状態に陥っている方もいらっしゃるでしょう。



 ハッキリいいます。この行為はこの上なく時間の無駄です。

 最悪の無駄行為です。

 5ページブチ抜きで無駄無駄無駄無駄ァです。



 小説情報のチェック自体はアクセス時間含めて2、3分の行為です。

 ですが、この行為を1日10回やっていたなら1日で30分の時間をそれに費やしているということです。

 いっそWikiで何か見ていればそこそこ雑学が付いたと思います。



 先程、執筆作業の気分転換に……なんて書きましたが、それが最悪なのです。

 気分転換とはすなわち、集中した状態をぶった切るということに他なりませんから。


 私の所感ですが、小説の執筆作業の集中力の流れは、最初50くらいから徐々に上がっていき、筆が乗り始めたところで100になります。

 そして、台詞回しや言葉選びや次の展開に対する悩みや迷いにぶち当たり、あやふやな知識の確認作業などが挟まると集中力は見る見る落ちていきます。

 それでも50以上あれば執筆を続けられるのですが、50を切った瞬間に気分転換の虫が騒ぎ出します。


「そろそろ気分転換したいなあ。

 でも、あくまで気分転換だから何時間も映画見たり本を読んだりするのはご法度だ。

 アニメ……でも30分かかるし、書いているものに余計な影響与えそうだし……」


 と、もやもやした挙げ句選んだ行為は、


「そうだ! 小説情報を確認して気分転換しよう!

 感想とか来た日にはモチベーション上げられるし!

 なにより一瞬だ!」


 ハイ。完全に中毒者の取る最悪の行動です。


 この一瞬の気分展開のせいで、40くらいはあった集中力は一気に0に。

 感想が来たらモチベーションは上がりますが、嬉しすぎて執筆の中休みだということを忘れ去ってしまいます。

 一度0に落ちた集中力はなかなか50まで上がりません。

 その流れで作品名を””で括ってエゴサーチしてみたり、まとめリーダーのアプリを起動してみたり、お菓子や飲み物の補充をしてみたり、完全に執筆体勢は崩されてしまいます。


 たった一瞬の小説情報チェックが一日の執筆時間の何十分、何時間と奪ってしまうのです。

 これを9ヶ月、270日繰り返していたと考えると少なく見積もっても50時間位は小説情報のチェックによって執筆時間が奪われてしまっていたと思われます。

 もし、50時間あれば5万文字は確実に書けたでしょう。

 それによって話に深みが出せたかもしれないし、一週間の投稿量を増やすことが出来たかもしれません……



 小説情報のチェック。

 なろう作者だけが味わえる特別な快楽であり権利。

 これを否定するつもりはありません。

 ですが、過度なチェックは時間を無駄にし、あなたの作品のクオリティを下げることにも繋がります。



 大事なことを書きます。



「小説情報チェックの適正回数は一日一回まで!」

「それも寝る前にPCを閉じる直前に感想返信とかとまとめてやれば十分です!」



 感想が一日何十件も来るようなとてつもない人気作家さんならば一日何回も感想チェックして返信しないと追いつきませんでしょうけど、大抵の方はそうでないと思います。

 言ってみれば小説情報を細かくチェックするなんて、ゲームで言うところの一つの戦闘が終わったら毎回ステータスを開いてチェックするような行為です。

 ただでさえホームページには感想やメッセージの通知機能がついているのですから、わざわざ自ら分析までしに行く必要ないのです。




 と、ここで理屈で説いても染み付いた習慣や中毒というのはなかなか抜けきりません。

 ので! ここからは実践編として「小説情報中毒解消法」について書きたいと思います。

 一部、というよりもほとんど執筆作業の集中力をどう維持するかみたいな話になると思いますが、その点は大目に見てください。


 すべては同じ病気で苦しむ、仲間さくしゃたちのために……



1 スマホを手の届かない所に置く


 小説情報をチェックするために、わざわざ小説作成のウインドウを隠して、別ウインドウを立ち上げて確認しに行くのは結構な手間です。

 ので、私はスマホの割合が高かった気がします。


「PCには作成ウインドウが開いているわけだし、作業は続いている!」


 と言い訳するかのように。

 ですので、スマホを手の届かない部屋の片隅に置いておきましょう。

 LINEや着信があればちゃんと着信音が鳴ります!

 大丈夫です! 何の問題もありません!



2 スマホを取り出すのがやっとの日常の合間の時間は脳内でやれることで過ごす


 仕事や学校の授業の合間に小説情報をチェックするのは、結局執筆できないんだから執筆作業に影響を与えないように思いますが大間違いです。

 小説情報をチェックするという行為を習慣化してしまうのが問題なのです。

 日中に何回も小説情報チェックしている人が家に帰って自由になった時に小説情報をチェックしないわけがありません。

 逆に日中チェックしないのならば、せっかく自由な家時間でわざわざチェックしようという気も失せるでしょう。


 じゃあ、合間時間の手持ち無沙汰を何で過ごせばいいのか?

 本を取り出してガッツリ読むのも態度悪く見られそうだし、話しかける相手もいない場合。

 作者の皆さんなら得意でしょう。

「脳内にあるもの」だけで楽しんでください。


 真面目な人なら、これからの仕事や授業のことについて脳内で予習すればいいと思います。

 この上なく有意義な時間です。


 小説を書くことに取り憑かれている人ならば、脳内でプロットの再構成やその日書く予定のシーンの映像化でも試みてください。

 文章を頭の中で書くのは集中力がいりますが、断片的な映像であれば割りとあっさりできると思います。

 作者の皆さん、だいたいアニメ好きでしょ?

 目的に直結する夢想は無駄ではなく有意義な時間だと思います。


 仕事から離れたい! 勉強から離れたい!

 小説に関わることもしんどい時にやりたくない!

 大体の方はこうじゃないでしょうか。

 だったら、脳内で繰り返し観たアニメやドラマや映画を再生でもしていてください。

 結構、現実逃避できちゃいますよ。


 余談ですが、私がヘビーローテーションしているのは無印アイマスの千早ちゃん回の「約束」とかガンダムビルドファイターズのビルドストライクVSザクアメイジングとか、最近ではゾンビランドサガのサガロックとかです。

 実写だとクローズZEROのGPS対芹沢軍団とか、インデペンデンス・デイのお父さんが宇宙船に突っ込むところとかですかね。


 とにかくネット環境から身を遠ざけることが小説情報チェック中毒からの脱却の第一歩です。



3 その気分転換、本当に必要?



 執筆作業中、気分転換で小説情報をポチポチ、ついでにエゴサーチをポチポチ……

 その危険性を上でも述べたところですが、そもそも小説執筆に気分転換って必要なんでしょうか。


 仕事と違って上司もクライアントもいない。

 学校の授業と違って怖い先生もいない。

 部活動と違って暴力を振るう先輩もいない。

 対外的なストレスはありません。

 ならばなぜ、気分転換が必要なのか?


 おそらく、執筆を続けていてその作業に対し単純に退屈し始めているのだと思います。

 学生時代、人間の集中力は50分が限界と聞かされながら受験勉強をしていましたが、それはあくまでピークを保てる時間のことだったと今になって思います。

 正直、仕事を始めると何時間もぶっ通しで作業に取り掛かるようなことはよくありますし、集中力がちょっと下がったくらいで気分転換を要するほどストレスがたまっているとは思いません。

 多少、気乗りしなくても書いていて山を超えたら集中力は自然と回復します。

 ほんの一時間程度で気分転換を入れてしまえばせっかく高まった集中力を切るだけだと思います。

 脳は筋肉とは違うので、こまめな休憩よりも長時間の集中後、ガッツリと気分転換の方が効率的なはずです。


 一つの目安として、3時間以上、パソコンの画面の外を一切見ず執筆し続けたなら多少のストレスは溜まるでしょうし、気分転換も必要かもしれません。

 3時間執筆に集中して、その後2時間映画を観る。

 クリエイターとして最高のインプット・アウトプット比率ではないでしょうか。



4 お前が信じる作品を信じろ


 小説情報をチェックするのは楽しい。

 なぜならばその情報の先には自分の作品を読んでいる読者がいるからです。

 多くの人達に認められたい、喜んでもらいたい、もそしてそのことを知りたい。

 だから、作者ヒトは小説情報のチェックに手を染めてしまうのです。


 ですが、冷静に考えてみると一時間刻みのアクセスチェックに何の意味があるのでしょう。

 アクセスチェックをしたところで読者は増えませんし、彼らも喜びません。

 作品が投稿されることで、読者が喜び、結果的に読者が増えるのです。

 小説情報の数字の向こう側にあなたの読者がいるのではありません。

 あなたの作品の向こう側にあなたの読者がいるのです。


 小説情報を読む暇があるなら自分の投稿した作品を読み返すほうがよっぽど有意義です。






 ……と、勢いで書きなぐりました。

 これを書いた理由は連載を終えて一週間が過ぎても未だに私が小説情報中毒を抜けきれていないからです。

 完結ブーストが働いて、評価ポイントは完結後2000以上増えましたし、tweetも増えました。

 それを観るのが楽しくて楽しくて……


【◆合理的思考】

『それじゃダメや言うとんねん!!

 書け! 早く次の作品を書け!

 いつまでも時間があると思うな!

 プロでもないくせに連載終了の余韻に浸ってサボるな!

 下手くそはたくさん書かな上手くならんねん!!

 書け!!』


 そうなんです。

 感想が書かれたら嬉しいし、絶対返信することを心がけています。

 レビューをもらえば天に昇る気持ちです。

 ランキング入りしたらふしぎな踊りを踊ります。


 でも、これらはあくまで結果です。

 作品を書いたことに対する。


 私にはありあまる時間があるわけでもなく、小説を書くことに使える時間の全てを費やせるほど一途でもない。

 だから、手元にある時間をムダにすることはしてはならないのです。

 小説情報中毒を克服するためにこのエッセイ……? を書いています。

 さすがに意志薄弱の私でもここまで大々的に書いて有言実行しないわけには行きません。

 いわば、自分を抑えつける鎖であり、よりストイックな創作スタイルに自身を矯正するギプスです。


 小説執筆以外のこともたくさんします。

 仕事や家のことはもちろん、しなければ生きていけませんし。

 本を読み、映画を観て、知識を蓄えます。

 年末年始、年度末も近いし、飲み会も増えるでしょう。

 ガッツリ寝る日もあるでしょう。

 ですが、無駄な時間は一秒たりとも作らない。

 そうありたいと思っています。



 小説情報機能。

 散々苦しめられていますが、この機能自体は究極の発明だと思います。

 単純な読者傾向の分析だけでなく、プロの作家が自著の売上の動向を見て一喜一憂する感情の疑似体験ができてしまうのですから。

 なろうのポイントシステムについて賛否両論あれど、作者にとっては孤独であるしか無い執筆作業の中で、読者という他者の存在を身近に感じられる癒やしでもあります。


 で、あったとしても癒やしに溺れてしまわぬように。

 あなたが欲しい喜びは良い作品を書き上げることでしか得られないものであり、そのための時間を浪費してはならないのです。


 大事なことなので2度書きます。



「小説情報チェックの適正回数は一日一回まで!」

「それも寝る前にPCを閉じる直前に感想返信とかとまとめてやれば十分です!」



 小説情報中毒に苦しんだ身として、このような思いをする作者さんが一人でもいなくなれば、と願います。




ムシャクシャしてやった。

今は反省している。


なお、小説情報を見る回数は減らしますが、いただいた感想などはちゃんとお返しします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すっごくためになるエッセイでした。 同じようなことにハマり、スマホ依存ならぬ小説情報依存になりかけております。恐ろしいことです。 [一言] ホムンクルスを読み出し、こちらへたどり着きました…
[一言] 取り敢えず新作を早くお願いします。 早く見たい。
[一言] 身につまされるお話ですね。 私の底辺のくせによくチェックしてしまうんです…… アル中に近いですね。
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