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月影の砂  作者: 鷹岩良帝
3 王立べラム訓練学校 高等部1
92/134

3-30話 一攫千金!魔物競技3

 発走直前に競技場内に実況のアナウンスが流れる。


「本日は魔物競技にお越しいただきありがとうございます。第六レースは各魔物がゲートに収まりまもなく発走です」


 出走魔物が全頭ゲートに収まりってレッドシグナルが点灯する。

 数秒後、シグナルが緑に変わるとゲートが開いて一斉に魔物が飛び出していった。


「さあ、レースの開始です。最初のコーナーまでの六百九十メートル、この直線ではベストな位置を確保しようとポジション争いが繰り広げられています。ここで先頭に立つのは六番ブラックサーヴァント、そこから二魔身離れて十番オラトリオが続きます……」

「おお! フェリシア見てください。選んだ魔物が二頭とも前を走ってますよ! いけー! そのまま!」


 ティアが興奮を隠せず楽しそうに叫んでいる。

 フェリシアもおとなしいながらも大型モニターに釘付けになっていた。

 フェリシアたちが選んだのは十番、九番、六番のワイド。ひそかにきゅうちゃんの予想を見ていて選んだ魔券であった。

 ルーセントたちの前を通りすぎていく魔物は最初の障害へと向かっていった。場内を盛り上げる実況が観客席に広がっていく。


「さあ、各魔物が最初のコーナーを曲がって第一障害『水濠障害(すいごうしょうがい)』へとやってきました。ここで水中に落ちると大きなロスとなります。全魔無事にクリアーできるでしょうか? 最初に突入するのは逃げる六番ブラックサーヴァント。水中から伸びる石柱をリズミカルに渡っていきます。続いて十番、三番が横並びで進入、デッドヒートが続きます。おっと! ここで二番ミルキーウェイと五番プリンスキャバリエが衝突して水中へ投げ出されてしまった! 近くにいた八番も体制を崩すがなんとか持ち堪える」


 二頭が水中に落ちた瞬間、場内に悲鳴と怒声が飛び交う。所々で紙が宙に舞って早くも魔券を捨てる者まで現れた。


「よし! 順位が上がったぞ。そのままで良いぞ、体力温存していけよ。最後の直線に賭ければ良いんだからな」


 パックスは最後尾にいた一番人気の魔物に応援を送る。一番人気のソウルリングは転落した二頭を交わして現在八番手にいる。

 場内実況が次の障害へと進めていく。


「さあ、再び小回りのカーブを曲がって次の障害『飛越障害(ひえつしょうがい)』へと入ります。ここは五〇センチから二メートルの壁が行く手を阻むようにそびえ立ちます。やはり最初に進入するのは、逃げる六番ブラックサーヴァント。続いて一魔身縮めて十番オラトリオと三番メルカリアルが並んで進入していきます。一番人気のソウルリングはまだ後方、三番目といったところ」


 ルーセントは二着に選んだ九番ブルーピーターを探していた。


「んー、九番はどこだろ?」

「きゅう?」


 きゅうちゃんも首をかしげてモニターを見守る。

 ルーセントのつぶやきを聞いたヴィラは、モニターに指をさす。


「九番ならあそこにいるよ、前から四番目。結構良さそうだね。高水準でバランスのとれた魔物だし、三番人気でいるのが不思議なくらいだよ」

「お、本当だ、ありがとう。きゅうちゃんが選んだ魔物だからね、楽しみだよ」

「ああ、確かウリガルモモンガは“幸運を呼ぶ生き物”って呼ばれてたね。これはもらったな」

「ふん、きゅうすけにそんな力はねぇよ! 一番人気をなめんなよ」

「きゅう! きゅう!」


 パックスの言葉に反発するきゅうちゃん、なだめるルーセントの耳に場内実況が響く。


「さあ、第二障害を越えて先頭は相変わらず六番ブラックサーヴァント、二番手は三番のメルカリアルに変わっております。三番手が十番オラトリオ、その半魔身後方には並びかけるように九番ブルーピーターがいます。ここで各魔物は左回りの長い上り坂を越えて第三障害の手前、直線三百二十メートルの下り坂を降りていきます。ここで飛ばしすぎると体力のロスにつながってしまい後半に響くため注意が必要です。おっと! ここで先頭が速度を落として差が詰まる。さあ、第三障害の立木障害(たちきしょうがい)が見えてきました……」


 ティアは相変わらず声をあげて応援をしている。

 フェリシアは無言で祈るようにモニターを見つめる。

 ルーセントも前の椅子の背もたれをつかんで不安そうにモニターを見ていた。

 ヴィラは余裕を見せつつも、時折なにかに納得するようにうなずく。

 パックスも身を乗り出してモニターに釘付けになっていた。

 ざわつく場内に実況の声が軽快に状況を伝える。


「さあここで六番ブラックサーヴァントが外に持ち出した。機敏に立木をいなしていく。三番は最短コースを選んで最内に入った。ジグザクと立ち木を抜けて一着に迫っていく。おおっと! ここで十番オラトリオが仕掛ける! 三番の進路をふさぐように外から内側へと切り込んだ! メルカリアルは進路確保のためにスピードを落とす。その隙を縫って九番ブルーピーターが横をすり抜けた。ここで二着が入れ替わりました。一番人気ソウルリングはまだうしろ。いつ仕掛けるのか」


 十番の頭脳プレイに歓声と怒号が場内を包む。

 パックスを除く四人が拳を握り締め喜びを表した。

 ヴィラは興奮したように、隣に座るルーセントへ饒舌(じょうぜつ)に語り出した。


「よし! さすがはベテラン競技者、三番は経験不足が出たね。あそこは最内を通ると進路をふさがれるのさ。だから六番は外に持ち出したんだ」

「へぇ、ただ走るだけじゃダメなんだね。面白そうだな、やっぱりやってみたいな」

「もし競技者になるなら、僕がみっちり教えてあげるよ」


 ヴィラの解説にますます興味を持つルーセント、二人が話している内にレースは佳境へと入っていく。


「さあ、心臓破りの坂もあと一つ。最終コーナーを残すだけ。おお! なんとここで十番オラトリオが仕掛ける。勾配十五パーセント、角度にしておよそ九度の坂を速度をあげて駆け登る。その最高到達点は地上から四十メートルの高さにもなります。ここで六番を抜いてオラトリオが先頭に躍り出た。差をどんどん広げていきます。最後まで持つのか! 二番手とはおよそ五魔身といったところ。さあ、先頭は下り坂に入ってさらに速度をあげて行く」


 先頭のオラトリオが最後の直線に差し掛かると全頭が地響きをたててゴールへと迫る。

 五人が声を出してそれぞれの魔物を応援する。

 実況も最後の直線に熱を帯びる。しゃべる声は早口に、次第に声が大きくなっていった。


「最後の直線に入り全魔が速度をあげて行く! 依然先頭は十番オラトリオ。その差は七魔身、このまま逃げ切れるか! おおっと! ここで一番人気ソウルリングが追い上げにかかる。速い! 速い! まるで周りが止まっているかのようだ! どんどんとオラトリオとの差を縮めていきます! 他の魔物も負けじと二頭を追いかけるが、勝つのはどの魔物か!」


 場内が揺れんばかりの歓声に包まれる。

 勝利争いは十番オラトリオ、一番ソウルリング、六番ブラックサーヴァント、九番ブルーピーター、そして七番グレアムの五頭。

 直線も残り二百メートル、実況も会場もテンションが最高潮に達する。


「さあ、残り二百メートル! 一番ソウルリングがオラトリオを捕らえ差を広げる! 勝つのはどっちだ! 残り百メートル、ソウルリングが二魔身の差をつけ引き離す。このまま決まってしまうのか! 他の魔物も必死に追いすがって差を詰めてくる。おっと! ここでソウルリングが失速! ずるずると後退していきます。体力が尽きたか? そして、再びオラトリオが先頭に躍り出た! 外から六番ブラックサーヴァントも襲いかかる。さらにその外、九番ブルーピーターも並ぶ! さあ抜け出すのはどの魔物だ! 残り五〇メートル! ソウルリングは完全に失速! さあ、ここで三頭が並んだ! 六番ブラックサーヴァントか、十番オラトリオか、九番ブルーピーターか、互いに譲らず横並びで競い合う。し烈なデッドヒート! 三頭が固まって今ゴーーーーール! 最後に抜け出して僅差を制したのは十番オラトリオ。その差はアタマ一個分。二着、三着はほぼ同時、九番ブルーピーターがやや体勢有利か? これは写真判定です……」


 熱気が漂う会場、魔物がゴール板を駆け抜けたと同時に外れた無数の魔券が宙を舞う。オラトリオの魔券を持つものは視線を外さずモニターに釘付けとなっていた。

 ルーセントたちもそれぞれ感情を爆発させて喜び、そして約一名が嘆く。


「ちくしょおおおお! 体力持たせろよ、下手くそがああ! 仕掛けが早いんだよ!」

「やったあぁぁ、フェリシア当りましたよ!」

「すごい! 全部当たったよ、ティア!」


 パックスの罵声をよそに、フェリシアとティアは手を取り跳び跳ねながら喜んだ。

 ルーセントはヴィラと片手を掲げて叩き合う。

 そして喜びを爆発させた。


「うおおおお、よっしゃあああ!」

「きゅっ! きゅっ! きゅっ!」

「最初から分かってたよ。当然の結果だね!」


 約一名を除いて、喜びを溢れさせる三人の前に写真判定の結果がモニターに表示された。

 一着十番オラトリオ、二着九番ブルーピーター、三着六番ブラックサーヴァント。

 単勝と複勝を五千リーフずつ買っていたヴィラは、十七万三千リーフの払い戻し。

 フェリシアとティアはワイド三点を的中、各二千リーフの購入で七万二百リーフの払い戻し。

 ルーセントは五千リーフで買った二連単が的中した。

 その払戻額は、驚異の百二十六万七千五百リーフ。

 撃沈したパックスは、死んだ瞳でルーセントに話しかける。


「ルーセント、マジかよ……。今日初めて買って百万越えってなんだよ」

「オレじゃなくて、きゅうちゃんのおかげだからね」

「きゅう、きゅう」


 ルーセントの肩の上、自信満々に胸を張るように立ち上がるきゅうちゃん。

 パックスはきゅうちゃんの威光にひれ伏すと、すがるように輝く瞳で手を合わせてきゅうちゃんに謝った。


「きゅうちゃん、おれが悪かった! 次のレースを予想してくれ、お願いします!」

「きゅっ!」


 パックスの懇願に、きゅうちゃんはそっぽを向いてルーセントの制服のポケットへと入ってしまった。

 パックスはきゅうちゃんをバカにしたことを心の底から後悔した。何度も謝るが、きゅうちゃんは疲れてしまったのか、ルーセントのポケットの中で眠ってしまった。

 その後、ルーセントは三レース予想して的中は一回だけ。フェリシアとティアはすべてを外してヴィラは二回的中させた。

 パックスはすべてを外してしまい、二度ときゅうちゃんをバカにしないと心に誓うのであった。

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