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月影の砂  作者: 鷹岩良帝
3 王立べラム訓練学校 高等部1
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3-5話 王都出発

 朝の八時、ルーセントたちは王都の第三城門の前で将軍たちの到着を待っていた。

 ルーセントが周囲を見渡すと、城門前にある三十メートル幅の通路には、商品を積んだ輸送用馬車が門兵の検査を受けつつ、七台ばかりが並んでいた。


 大きな鉄扉の城門は解放されている。


 門の左側には王都を出ていく人たちと馬車の通路、右側はその逆で王都に訪れる人たちが、早い時間帯にも関わらず騒がしく賑わっていた。

 今回の任務は商人に扮して行うため、ルーセントたちは前日に将軍の使いから、王都でも一、二の規模を誇る商会、ドラグミス商会の制服を渡されていた。


 フェリシアだけは神聖科の能力を活かすために、神官服を着こんで武器の携帯を許可されている。

 ルーセントたちは、将軍たちが来る前に、手にしていた武器をティアに渡していた。

 ルーセントが刀をティアに預けると、その前に現れた揺らめく空間を眺めていた。


「ティアの時空収納って本当に便利だよね。今日は武器の携帯は許されていないけど、時空収納なら問題ないもんね」

「そうでしょう、そうでしょう。もっと褒めてくれてもいいんですよ」ティアが上機嫌でにっこりと笑みを浮かべる。

「本当に助かるよ。いつも武器を持ってるから、ないと不安で不安で」

「そうは言っても、ルーセントは体術も優秀じゃないですか。私が勝てない人なんて、聖騎士教会じゃ数えるほどしかいませんでしたよ。びっくりです」


 ティアが訓練学校にやって来た次の日、ルーセントと手合わせをしていた。

 しかし、武器を持っては一勝二敗と勝ちをルーセントに譲り、体術に到っては、ティアは一度も勝てなかった。

 悔しさをにじませるティアの顔がフェリシアの方に向いて、再びにっこりと笑みを浮かべる。


「でも、フェリシアには勝ってますけどね!」


 ティアは自信満々に胸を張り勝利宣言をすると、フェリシアは少し拗ねたように顔をやんわりとしかめる。


「むっ、次は負けないんだから! あのすばしっこいのさえ封じられれば、私だって」

「ふっふっふ、負けませんよ~。そしてパックスは……、弱いです!」ティアがパックスに振り向き指をさす。

「いや、うるせぇよ! お前らみたいなバケモンと一緒にすんな! それでもほら、身長じゃ勝ってんぞ、どうだ! ほれ、ほれ!」


 パックスは自分の頭に手を乗せてティアに向かってスライドさせると、身長差を強調した。

 ティアの目に鋭さが増す。


「ほぉ~、やはり死にたいようですね。いいでしょう、撲殺も悪くありませんね」


 ティアとパックスが構えると、ルーセントがほほ笑ましい笑顔を携えて、二人の間に入りなだめる。


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。パックスは武器や体術は苦手みたいだけど、魔法ならティアといい勝負すると思うよ」

「いいでしょう。それなら、魔法で決着をつけて差し上げますよ。泣いて謝るなら今ですよ」

「誰が謝るか、そっくりそのまま返してやるよ。おれの前にひざまずく姿が今から楽しみだな」

「……お願いだから、物は壊すなよ」


 二人のやり取りにルーセントが諦めた表情でつぶやくと、好奇心に目を輝かせるヴィラがルーセントの横に立った。


「これは魔法障壁とポーションがいるね。強度は足りるかな? 実に興味深い実験ができそうだ。やるなら是非とも日時を知らせてくれよ」

「もう! ヴィラも止めてよ。私たちこれから任務があるんだから忘れないでよね!」

「で、フェリシア様はどっちが勝つと思うんだい?」

「えっ! む、難しいわね」


 ティアとパックスが騒がしく挑発を繰り返し、ルーセントとフェリシア、ヴィラがその様子を眺め会話をしていると、ドラグミス商会の紋章の入った馬車がやって来た。馬車は全部で六台、それぞれ三台ずつに別れてルーセントたちの近くで停車した。

 ディフィニクス将軍が馬車の後ろから馬に乗ってやってくる。


「悪いな、待たせたか?」

「いえ、大丈夫です。それにしても、ずいぶんと大掛かりなんですね」

「まあな、山賊の砦が近くにある街になんて、誰も行きたがらないだろう。だから物資が枯渇ぎみらしくてな、ついでに輸送もしてしまおうとドラグミス商会に協力を仰いだわけだ」


 将軍とルーセントが会話をしていると、馬車から一人の和やかな笑顔を浮かべた中年の男が降りてきた。

 手入れが行き届いた服装を折り曲げてあいさつをのべる。


「本日はよろしくお願いいたします。ドラグミス商会の輸送部門、責任者のロイ・ブルアと申します」


 ロイの気品漂うきれいなお辞儀が元に戻ると、冒険者に扮した護衛役の兵士と、ルーセントたちに、将軍自らが今回の任務の説明を始めた。


「いいか、今回はアルファチームとベータチームに別れて二つの村に、輸送と敵の情報収集を行ってもらう。アルファチームは俺と護衛役の二十五人と、商人の従業員に扮した訓練生でオルマンの街へ、ベータチームはアクアヴォラナの街へ行ってもらう……」


 将軍の説明を聞き、それぞれが割り振られた馬車へ移動すると、そこでもさらに任務について説明を受ける。


「訓練生たちは、あくまでも商会の従業員として任務についてほしい。戦闘はこっちに任せろ。街へ着いたら荷物を納品したのちに、一週間滞在する。そこで情報収集に移ってもらう。諜報部隊には、着いてすぐに敵砦の調査に向かわせる。それが終わったのちに帰還だな」


 将軍の説明を聞き終えると、ティアが元気よく手を挙げる。


「はい! はい! わたし諜報部隊に入りたいです。隠密魔法があるので潜入は得意ですよ」

「また、ずいぶん珍しい魔法を持ってるんだな。しかし、そんな能天気な感じで大丈夫か?」


 ティアが将軍の言葉に、一瞬だけむっとした表情を浮かべるが、そのままルーセントの後ろに隠れた。

 そして、隠密魔法の認識阻害と気配遮断の魔法を使い、将軍のうしろへと気付かれないように回り込んだ。

 将軍はティアを視界から見失うと、気付いたときには自身の背後から、小さな少女に声をかけられていた。

 驚いた顔をするディフィニクス。ティアを視界に捉え感嘆した声をあげた。


「おお、こいつは大したもんだ、全く気付かなかったぞ。これなら問題ない。レイラ、街に着いたら一緒につれていけ」


 レイラと呼ばれた諜報部隊のリーダーを務める女兵士は「かしこまりました」と答え、ティアに詳しい作戦を伝えた。

 ひととおりの説明が終わると、それぞれが持ち場に戻り、街へ向けて王都を出発していった。

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