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月影の砂  作者: 鷹岩良帝
1 動き出す光と伏す竜
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1-31話 遺跡探険?

ルーセントが歩く謎の建造物の内部は、ほぼすべてにおいて黒い素材を使って建造されているようだった。しかし、中は何の光源もなく真っ暗でもあった。

 窓がひとつもない、その真っ暗な室内に侵入を断念すると、松明(たいまつ)を作りに外に出ていく。魔法で松明に火をつけると、ふたたび内部へと侵入していった。


 ルーセントが、歩く壁を何度かたたくと、カンカンと金属音が返ってくる。床、壁、天井とすべてが同じ素材で作られているようだった。かなりの時間がたっているはずなのに、金属でできた内部には、腐食どころかサビのひとつもない。そのアーチ状の柱があるトンネルのような通路を歩いていくと、灰色に近い大きな扉の前にたどり着く。そこには“地下通路”と表記されていた。


 本来なら自動扉のように横に開くものであったであろうが、今は沈黙している。ルーセントは松明を床に置くと、扉の切れ目に手をつけてゆっくりと開いていった。


「さすがに、ホコリがすごいな」


 どれほどぶりに開いたのであろうか、その扉は濁った空気とともにかび臭い空気をはき出した。

 ゴミが目に入るルーセントが苦労しながら、ジャリジャリと靴でホコリや砂利をすりつぶす音とともに部屋の中へと進んでいく。そこは広い空間に中央の一部が円状にへこんでいる場所だった。さらにその奥には、壁の一部がガラス張りになっている別室があるようだった。


 少年はその奥の部屋へと向かう。


 細長く狭さを感じさせる部屋には、細長い机と一体になった機械の端末と、たくさんのモニターがほこりをかぶってルーセントを見下ろしていた。

 少年が適当に端末にあるキーを押してみるが、何の反応も示さない。


「やっぱり、エネルギー供給がされてないからダメかな?」


 ルーセントは、端末の上に降り積もった綿のようなホコリを魔法の炎で焼き払いながら、いろいろなキーを押していくが、何の反応も示さなかった。そこに“非常電源装置”と書かれた、透明なカバーのついた大きなレバーを見つける。


「非常電源装置? これを動かせばいけるか?」


 ルーセントは、物は試しとカバーを開けてレバーを動かした。

 しかし、しばらくたっても装置は何の反応も示さなかった。


「やっぱりダメかな? 古そうだもんな……」


 少年は心底残念そうに端末の部屋を出ると、もう一度だけ円状にへこんだ床の上までやってきた。


「ここから地下に行けるのかな? 何があるんだろう、行ってみたいなぁ」


 ルーセントは衝撃を与えたら動くかもしれない、と何度かジャンプを繰り返す。そのとき、急に部屋の中が赤く光った。それと同時に女性の声が流れる。


『主電源の停止を確認しました。これより非常電源装置に切り替わります。なお、非常電源は三時間で停止します。すみやかに施設から退避してください。繰り返します……』


 ルーセントが赤い光と女性の声におどろいていると、先ほど出てきた端末の部屋が明るくなっていることに気づいた。すぐにその部屋に戻ると、今まで消えていたモニターに文字が浮かび上がっていた。

 “読み込み中……”の文字が消えると、今いる施設と地下全体の骨組みのような全体像が表示されていた。


 ルーセントのいた場所はエレベーターになっているようで、そこからドーム状に造られた地下施設へと行けるようだった。

 ルーセントは画面の指示に従ってタッチパネルを操作していく。すべての工程を終えると、エレベーターの方から大きな起動音が響いた。ルーセントが急いでエレベーターである床の上に向かう。


「リミットは三時間か、気を付けないとな」


 ルーセントが時計を確認すると、そこに女性の声が響く。


「十秒後にエレベーターを起動します。ご利用の方は、すみやかにエレベーターの中央に移動してください」

「よし、動くぞ!」


 カウントダウンが終わると同時に床に振動が走る。ルーセントはプレゼントの箱を開けるかのようにわくわくと楽しそうな表情を浮かべていた。そこに天井から光の筒が降りてくる。光に包まれた少年は、下がっていく床とともに消えていった。



 降下していくエレベーターは、幾何学模様のように組み立てられた鉄骨のドームの中を通過していく。数十メートルほど青白い光の筒の中を移動すると、最下層に到着して光の筒は消え去った。


 ルーセントがついに地下へと降り立つ。そこには、小さな街が存在していた。


 エレベーターからは一直線に長い通路が通っていて、最奥にある一番大きな建物へとつながっている。その長い通路の横には、何本にも分かれた道と朽ち果てた民家らしきものがあった。


「人は……、いないよな。やっぱり」


 機械の起動音だけが響くその広大な空間に、ひとりぼっちのルーセントは恐怖を感じていた。どこからか吹いてくる風の音にもビクッと驚いては立ち止まる。そのうち、建物をひとつずつゆっくりと確認して歩く少年の目に“武器屋”と、かろうじて読めるボロボロになっている看板を見つけた。


「こんなところにも武器屋なんてあるのか。なんか、残ってるものがあるかな?」


 ルーセントは、廃虚に近いなんとか原型を残している建物の中へ恐る恐る進んでいく。細かいガレキが積もるショーケースの中を物色していくが、それも腐食していて使い物にはならなかった。少年は、なんの収穫もないことにがっかりして、さらに奥へと進んでいく。おそらく会計のカウンターであったであろう場所まで来ると、ルーセントが驚きの表情を見せた。


「え? なんだこれ、なんでこれだけきれいに残ってるんだ?」その視線の先にあるショーケースの中で、まるで新品のようにたたずんでいる大きな黒い金属製の弓が鎮座していた。


 全長が二メートルほどある弓は、十センチから中央部分に行くにしたがって二十センチほどの厚みがある。持ち手付近の中央部には、透明な小窓と長い棒状のセンサーらしきものがついていた。

 壊れたショーケースから、ルーセントが弓を取り出す。見ため以上に軽いその弓におどろきつつも、構えて弦を引いた。それは子供であるルーセントでも軽く引ける機構をした弓であった。


「すごいなこれ、こんなに大きいのにそんなに重くないし、弦だって簡単に引けるぞ」


 ルーセントは、さらに隣に置いてあった矢筒と矢にも手を伸ばす。おそらくは弓と同じ素材でできているであろう一メートルほどある黒くて長い矢、それを入れる矢筒には十本ほどの矢が入っていた。矢筒のベルトをたすき掛けにすると、ルーセントの身体では大きくて、肩から膝の近くまでにもおよぶ。一度、矢筒を外すとカウンターへと置いた。


 ルーセントが弓をどうやって持って帰ろうか、と悩んで矢筒の近くに弓を置くと、弓の先端から三分の一の部分が折りたたまる。ルーセントが弓を矢筒全体のくぼみにはめ込むと、ロックがかかって持ち運べるようになった。


「よし、これでいいか。ちょっと動きづらいけど、お宝ゲットだな。ふふふ」


 ふたたび弓がくっついた矢筒をたすき掛けにして店を出るルーセントは、探検の楽しみでもあるお宝を手に入れて、意気揚々と最奥の建物を目指していった。



 目の前にそびえる大きな建造物は、地上にあった建物同様に黒い金属で造られている。横幅が五十メートル、高さが三十メートル近くある巨大な建造物、ルーセントは大きな扉を通って内部に侵入していく。建物内部は大きな一本の通路が中央にある円形のエントランスへとつながっていた。

 ルーセントは、通路の両側に流れる水路と、花が咲いていたであろう土だけが残る花壇を見ながら奥へと進む。高い天井からはどこに光源があるのか、太陽のような光が内部をやんわりと照らしていた。


 キョロキョロと辺りを見回しながら歩く少年が、自分の背丈よりも高いエントランスの入り口にあった案内板を見上げる。


「A・B通路は地下鉱山入り口で、C・D・E通路は加工、錬金施設、FとG通路は出荷場って書いてあるのかな? あとはよくわからないな」


 長い年月のうちにかすれて汚れてしまった案内板に格闘しながら、何が書いてあるのかを探り当てていく少年は、円形のエントランスの脇に造られたゲートを見ながら確認していった。

 水路で挟まれた二重構造になっている円形のエントランスの中央には、一段高くなっている土台に円筒形の大きなエレベーターが乗っかっている。階数表記には、一階から五階までが書かれていた。


 二階と三階は倉庫になっているらしく、ルーセントはお宝を求めてエレベーターへと乗り込む。二階では、鉄骨で組み立てられた高い棚と、それが何本もある広い空間があるだけだった。棚にはなにもなく空っぽのものばかりで、ところどころにある見慣れない材質の箱の中には腐食した金属が入っているだけだった。

 つまらなさそうなルーセントは、続いて三階へと上がっていく。三階は二階とは違って、厳重に管理されているようだった。


 まず最初に、エレベーターを降りてすぐにゲートが少年を出迎える。さっきの場所とは違って、だれでも自由に出入りができるような作りではなかった。


「う~ん、ここは勝手に入っちゃダメな場所なのかな? でも、誰もいないからな。ま、いいか」


 ルーセントは誰もいないのをいいことに、ゲートを乗り越えて内部に侵入する。ところが、倉庫内に入った瞬間に警報が鳴り響いた。

 身体を震わせておどろくルーセントに、天井付近から女性の声が降りそそぐ。


「違法侵入を検知しました。IDの照合を行います。しばらくお待ちください」倉庫内に赤い光の幕が行き来する。


 ふたたび女性の声が流れる。


「……IDの確認ができません。対象者はすぐにこの場所から退去してください。警告に従わない場合は、即刻排除いたします。繰り返します……」


 ビー、ビー、ビーと繰り返して鳴り響く警報音が止まらない。ルーセントは、どうせ誰もいないから、と警報を無視して進んでいった。

 倉庫のつくり自体は二階と変わらなかったが、先ほどとは違う箱が何個も置かれていた。ルーセントがそれをのぞくと、そこには弓と同じ材質であろう黒いインゴットが詰め込まれていた。


「おお! これはひょっとして、弓と同じやつじゃないか? これで刀を作ってもらったいいのができそうだな」


 ルーセントは、寿命の近い刀の代わりになるかも、と鳴り続ける警報にうんざりしながら肩にかけるバッグにインゴットを詰め込んでいく。すべてのインゴットを移し終えたとき、遠くからガシャンと複数の音がルーセントの耳に届いた。


 少年が「え?」とおどろいて振り向くと、その視線の先には頭から下向きの角を生やした人型の何かが大挙してきた。

 ボロボロの黒いフードをかぶったその顔には、三つの赤い目が光っている。その赤い光がルーセントを直視する。手に持っている薙刀(なぎなた)にも似た大型の武器を、両手で小枝のように振り回す。


「なんだ、あれ。人、じゃないよね」


 ルーセントはバッグを床に置いて刀を抜くと、三つ目の人型と対峙(たいじ)した。

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