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月影の砂  作者: 鷹岩良帝
1 動き出す光と伏す竜
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1-1話 絶望の始まり

 千年前、月の女神を裏切った絶望が魔物を従え月から落ちた。

 地上に降りた絶望は、千の魔法を使って人類を蹂躙(じゅうりん)する。

 悲嘆した月の女神は、すべての力を使い果たして人類に希望の光を与えた。

 最初の英雄は絶望の大陸メルトにて、その魂を五個のクリスタルに封印する。

 最後の英雄は、再び現れた絶望をメルト大陸にて滅ぼした。

               ~歴史家 スターレイ・ドール~



 はじまりは、とある国の少年が見た不思議な夢だった。

 惑星サンドミリオンには“絶望の大陸メルト”を除いて四つに別れる大きな大陸がある。件の少年はその内の一つ、中央に位置する広大な大陸“ポセタ大陸”の東を統治する“レフィアータ帝国”という国にいた。

 褐色の肌をもつ五歳になる第一皇子“クドラ・レフィアータ”がその少年だった。

 数日前に世界中で起きた大地震の影響で、各国が復興に追われているさなか、昼寝をしていたクドラは不思議な夢を見ていた。


 ――クドラはどこまでも続く一本道の上に立っていた。

 そこは深い霧に覆われていて、ただひたすらに岩と砂の大地があるだけだった。


『我を見つけよ。我は汝、汝は我なり』


 大地全体に響くような低い声が、突然クドラの頭の中に響き渡る。

 おどろいたクドラは誰かいるのか、と辺りを見回すものの誰も近くにはいなかった。

 

いつまでも同じ言葉が頭に流れる。


 クドラは頭をポカポカとたたきながら寒々しい荒野を歩いていく。その指向性を持った声に誘われるがままに。

 長い時間にも感じるほどに進み続けたクドラの視界の先には、大小さまざまなクレータがいくつも存在する空間が現れた。


 小さな少年が恐る恐るその穴をのぞき込む。吸い込まれそうな湾曲を見て、ここからすべり落ちたら楽しそうだ、と子供らしい感想を抱きつつも何気なく顔を上げると、穴だらけの大地の中央に蒼いクリスタルに閉じ込められている巨大な黒い竜を一匹見つける。


 好奇心に満ちあふれた少年は、クリスタルを氷と勘違いしていて、寒くはないのだろうか、と興味深そうにじっと真ん中の竜の顔を見つめる。


 この竜には三本の首があり、城とみまがうばかりの大きさがあった。

 巨体を見上げるクドラと竜の目が合ったとき、その目が赤く光った。

 今まで聞こえていた声が、大音量で再び脳内に響く。


『我が名はルーイン、すべてを破壊し統べる者。我は汝、汝は我、我が力をもってすべての光を滅せよ』


 声が止むと、再び周囲は無音の静けさに包まれる。

 クドラは何だったのか、と光を失くした竜の目をじっと見つめ続けていた。

 そのとき、クドラの左手首がまるで火にあぶられているかのように熱くなった。


 おどろくクドラがとっさに左手に視線を落とすと、その瞳には手首から立ち昇る蒸気が映っていた。

 蒸気は次第に黒と紫色に変色していく。それと同時に浮かび上がった白い光の輪が砕け散た。光の輪は、なおも赤黒く光りながら、あふれ出す黒と紫色の霧が手首を包み込んでいく。

 クドラは理解を超えた恐怖に耐えきれずに思わず右手で手首を押さえた。


 その瞬間、うしろから無数の咆哮(ほうこう)が響き渡った。

 声は身体を、大地を揺さぶるほどに空気を震わせる。

 おどろきうしろを振り向いたクドラの前には、いつからいたのか、広い空間を埋め尽くすほどに無数の魔物がひれ伏していた――。

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