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よくある婚約破棄物 のようなもの  作者: 猫湊
国立ラウサ大学附属高校編(○○編)
14/20

なるちゃん折れる ―2/2

「以上国主家一族固有個体のみが保有する、超長距離射程極大砲撃魔法の実演でした。これくらいの威力になると外部からのエネルギー供給が無いと、発動できないことが多いです。無理したらぶっ倒れます。あまり保有魔法力が多くないのに無理して大威力の術式を展開しようとしたら、…ああなるので気をつけるように。」

全員の視線があのうぬぼれ小僧に向かう。

うぬぼれ小僧は、魔力切れを起こして、ぶったおれている。だが、誰も助け起こそうとはしない。

まあ、魔力切れで倒れた場合というのは熱中症で倒れたときと違って、非常にゆっくり倒れる上に40分程度寝ていれば、自然回復でき、その間の体温制御さえ出来れば、処置は全く必要ない。

[なんで倒れてるんでしょうね。]

「神流砲まねしようとしたんだけど、あれって、万が一周囲に高魔力集積体とか有ったらそこから強制的にエネルギー吸収するじゃん。そのせいで、体内の魔力をすっからかんにすわれたんじゃ無いの。

一人だけ端末つけてないしね。」

ザイラス領域に住む者は必ず利き腕と反対の手首にCATと呼ばれる情報端末を装着することが義務づけられている。

これは、住民の監視、管理と言うよりも、災害時をはじめとした、有事の際の住民の現在位置を確認し、速やかに安全地帯へと転送させるための物であり、つけてない者のことは知ったこっちゃ無いというのが、ザイラ王国政府の姿勢である。

これ言うと、頭を耕耘機でふっかふかに掘り起こされたとか思えない奴らが騒ぐが、あいにくと、ザイラも我が王国も憲法の上位に主師しゅさがいる。

王国の法形態は簡単に言えば、戦前の日本と同じであり、最高法規が2つ有る。一つは国民の権利、義務や国の在り方を定めた憲法。もう一つが、王族の義務、権限、在り方を定めた、王族定義法。王国法制上は最高法規は憲法のみでそのすぐ下に別格定義としての王族定義法がある。

「ところで、神子が指定した座標って何があった?こいつが指定した場所って海の上だよな。」

「乗員13人の帆船が当大陸に事前通告無く接近との報告あり。その当該船舶近傍4kmの地点に着弾するよう指定しました。着弾時の波は、当該船舶を出発した港まで押し戻すでしょうな。」

遥夢とリンが打ち出した収束砲撃は、その気になれば、次元世界を数十は一度に消滅させる威力にもなる。今回はそれを、初速に重きを置いて威力を絞り、大波を起こすためだけに打ち込んだらしい。


[あれだけ嗤われているのに、けろっとしているとしているのは逆にすごいですね。]

「俺らのなかであそこまでけろっとしてるのはリンだな。」

「リンはけろっとしているのでは無く眼中に無いんです。」

翌日から俺たちは二泊三日のザイラ王国陸軍央都基地での合宿となった。

「健全な魔法は健全な肉体でこそ実現する。健全な精神は健全なる教育が育む。健全な肉体と精神が、健全な化学を生み健全な魔法とともに文明を発展させる。」

[誰の言葉ですかそれ。]

「奇滅院長。」

「国崎さん、臭すぎますよー。」

奇滅院というのは、我が国独自の官庁であり簡単に言えば、心霊現象を専門に担当する機関で有る。軍隊と同じような階級制だが、一番下っ端の兵卒に相当する集魔官、下士官の掃魔官を除き、尉官に相当する退魔師、佐官相当の祓魔師と将官相当の滅魔師が織り祓魔師と滅魔師が奇滅師を名乗ることをゆるされている。

そこの長の名を国崎と言い、彼は三つ揃いの背広を着た骸骨として行動している。

「だから、重砲祓魔艦が来てるんだぁ。」

奇滅院には専門の船が配備されている。駆逐艦相当の退魔艦。巡洋艦相当の祓魔艦。空母、戦艦相当の滅魔艦である。

「あ、一人へばってる……。あれどうみても百も走ってないよね。」

長距離走の訓練で出走からわずか100mも走っていないのに、あの鼻っ柱だけは高い魔術院長の息子は地面に大の字になっている。それを冷ややかに見ながらも周回を重ねる、元王太子と騎士団長子息。

「師匠、やはりあのプライド馬鹿は鍛錬を怠っていました。昔から、自分や、ゼリオス様がたしなめても無視していたのですから自業自得です。」

「私も同じ意見だ。」

遥夢曰く、この二人は制裁の対象から除外するとのことだ。

婚約破棄を言い出したのは無知故だが、あのねちっこい遥夢がこうもあっさり許すと言うことはそれだけ、能力を高める素地があると言うこと。

なにせ、あの後、真実というか、正しい話を改めて聞いて、過ちなど無いとふんぞり返る親二人を剣の柄でぼっこぼこにした上で引きずってこちらに謝罪してきたんだから。

まあ、こっちに来てすぐ、騎士団長子息とともに俺のところへ弟子入り志願してきたときは閉口したぞ。説明役をいつもやる神子は大笑いして使い物にならないし。遥夢に至ってはこちらに背を向けてうずくまったままけいれんしてたからな

「本当にあの親から、こういうのが出るのはなかなか面白いな。」

「どうだった?」

「あれは単にどうかっこつけて詠唱するかしか考えてない。王国の魔科融合文明はなるべくして成ったのは概論受けてればすぐにわかるんだけど。

てかさ、6歳レベルの概論も応えられないってどれだけ程度の低い天才なのさ。

あのねぇ。」

神子が自分で言う、神子に呆れられるようだと終わりというのは、なんだかんだ言って一番他人に甘い神子に見放されるほどだと言うこと。

因みに王国では毎年、神子がその年で最も呆れた出来事を発表している。これがまた大人気なんだが、それにノミネートされるぞこれ。

メタ話は神子に任せるが、どうした物かな。



「最近元気ないなあれ。」

「そりゃあ、ねぇ。

自慢をしようにも、誰にも相手にされず近寄れば遠ざかられたうえに、下に見てた子達が軒並み無詠唱で、強力な魔法を発動できればあのちっぽけなプライドは、ぼっろぼろさね。

あとねえ、先月に神流砲真似しようとしたでしょう。あれで、肝臓内の魔力炉が逝っちゃって自家魔力精製が出来なくなったみたい。

CATがあれば、あれが、血液内に投入するナノマシンが魔力炉を修復するんだけど、あれ、CATを的にして、魔法弓の練習してたらしいからどうにも出来ない。ARの認証通したパーソナルチップもつぶれたから。シリアル登録されてて、再登録難しいんだよ。リンがあれだから。」

こちらに来る際ザイラス領域に入るときにCATが各自配布されたんだが、それをあそこでへこんでいる自称天才君はそのまま馬車の中に置きっ放しにしていたそうな。

その馬車の所在、中身の現状は事細かに彼の実家が逐一記録しているから、CATを無くしたと言っても再発行なんてしてもらえない。

「きいてきたよー。」

涼子が戻ってきた。

「父親から、見放された上に、数少ない見方だった母親からも見捨てられてやんの。ただ、なんでかプライドは……ねえ。」

龍脈炉が組み込まれた腕輪した状態で、なかなかにすごいことをしでかした。

簡単に言うと、原付バイクを動かそうとして、エンジンに核融合炉を組み込んだ。

あんなちっぽけな術式発動のためだけに、ものすごいご大層な発動陣を展開しやがったもんだから、龍脈炉から供給過多になったエネルギーがオーバーフロー起こして、危うくクレーター作るところだった。

回りのゼリオス勢が無詠唱で、花火にしたから何とかなったけど。

震えてるって言うことはあれ何も理解していないな。

「「蹴るんかい!!」」

神子が近づいて、助け起こしたように見えた次の瞬間には思いっ切り背中に靴の跡が付くほど強く蹴飛ばしたため、吹っ飛んでやんの。

「神子ー、男子の前でそこを蹴ることだけはせんでくれ。」

「………。春閣街50店。1店あたり4人一人3回。」

俺今回何もしてないぞ。因みに春閣街とはこのラウサにあるザイラ最大の歓楽街であり、風俗街。

「正規はそうねえ。―に行くからつきあえ。量はうちが決める。…極で良いな。」

「あれ食えるのリンか遥夢だけだ。麺だけで2kg有るじゃねえか。トッピング含めて3kgあるし。」

「3人で1つ。」

そうか。その前に、

「60回はさすがに死ぬだろう。」

「つぶさない代わりに絞りきる。」

そういう考えだったか。


まあ、若いからか、多少やつれた程度で済んでるようだけど、俺たちを見ると、この世の終わりのような顔で漏らすのだけはやめてほしい。

特に屋内で。

床板が腐る。

「正規も容赦ねえなあ。」

「事実だろう。」

「毎回毎回同じところで同じだけ漏らすから、そこに魔力検知できればわかる警戒線ひいといた。あれだけがわからないで同じ事繰り返すもんだから、そのうちあそこ踏み抜くんじゃ無いかと密かに楽しみにしてる。」

そういう見方もあったか。

まあ、いじめじゃ無くて、自分で墓穴掘ってる形だから誰も胸を痛めなくて良いな。

ところでだ。

「誰だよあの二人に花子の弾道スタート教えたの。」

「「「花子」」様です。」

おい御山家サラウンドで言うんじゃねえ。


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