奇抜な賞金稼ぎ達
ここは帝国鉄があるトヨ地区から三駅離れた少し地方のチリウと言う駅。ミルクと蝶子、そしてニートは十時少し前に駅に来て予想通り丁度十時三分に真田が来た。
ミルクが手を上げて呼びかける。
「おう、真田。この前はすまんな。またデートしてな」
だが真田は何時通りのテンションでなくシリアスな顔持ちだった。そして切符を出すと、
「あれから一晩考えさせて頂ました。勿論、デートの事ではなく今回の件の事です。事情は察しますですがやはり危険です」
ミルクは切符を取ろうとすると少し力を入れて真田は止めミルクは、
「何だ、俺は仕事としてやるって言ってるんだ別に過去とか未来とかの話をする気はない」
だが真田は語る。
「確かにマルコさんのそう言う所が私は好きです。ですが人はロボットと違い感情が時に間違いを産みます。私はそれが怖いのです。人は人故に成功も失敗もする。これはマルコさんの母であるソーダさんの書、「人と機械を考える機会」の中で私がもっとも好きな言葉です。私は失敗する人間が好きです、成功する人間も好きです。ですが好きな人の失敗した姿は見たくない。マルコさん、今回の作戦は私も参加します。もしもの時は同じ墓に入る覚悟です。お願いします。失敗だけはしないで頂きたい」
真剣な真田に対してミルクはあくまで軽い気迫で返す。
「はいはい。私は皆と一緒の棺桶は嫌だからな。
わかったよ。一緒に行こう」
列車に乗ったミルク達。そこには賞金稼ぎと言うより軍人や殺し屋に近い。冷たく冷徹な雰囲気を持った者達が静かに座席に座っていた。
そんな中ミルクは、
「またここもここでしけた空気だね」
蝶子は少し笑みを浮かべて、
「でも、強い人いっぱいっす。目を合わせただけで首が飛びそうな人たちばかりで後で手合わせお願いしたい人ばかりっす」
そしてニートは、
「すいません、すいません。私こんな所に来て大丈夫なんでしょうか?」
相変わらずの平謝りだった。
列車は街へ向かうと思われたが反対方向の荒野を走り出す。そして走り続けて一時間した時、真田とその横には帝国鉄の制服を着た体長三メートルくらいある大男が立っていた。大男が、
「我は一番列車車掌の滝川源平である。今回は我が列車に乗員まことにご苦労である。気づいている者の多いと思うがこれは五番列車ではない。知っている者も少ないが二番、三番は武力行使部隊が出動した場合の特設車両。四番、五番は個人単位の武力行使が行われた場合の車両となっている。ならば一番車両は何の為にあるか? それは対戦争時用の急務車両なのだ。皆はこの事態と乗った車両の意味をしっかり理解して頂きたい。何か質問が有る者は挙手を」
すると緊張した車両の中でミルクが飄々(ひょうひょう)と手を挙げた。
滝川は指を指し、
「そこのビキニ姿、名前は?」
ミルクはあっけらかんと、
「ミルクだ。何で帝国鉄の人間は話が長いんだ?」
それを聞いた真田はロボットながら冷や汗が出るような表情をするが滝川は怒るどころか冷静に、
「状況説明の為だ。鉄道員足るもの少しの説明不足が死を招く。報告、連絡、相談。これこそ仕事を失敗しない第一の言葉だ。仕事を失敗しないと言う事は仕事を成功し続けると言う事だ。他には?」
次に手を挙げたのはスーツを来た青年。
「ロマンス・マッケンジーだ。これは誘拐事件を聞いたが相手の要求は何だ? 場合に寄っては武力無しで解決出来る内容じゃないのか?」
そこ言葉に空気になじまない女性の笑い声が飛ぶ。そして手を挙げたのは黒人の女性。
「バーニャ・カウテロ。そんなのどうでも良い。てか、時間の無駄。まず第一にそれが出来たらまずやっている。第二に私たちが集まった時点で武力的な解決以外に道はない」
そこへロマンスが、
「だが、麒麟児氏を殺す目的ならもう終わっているだろ? なのに何故、まだ人質なんだ」
「そのそろそろ井戸端会議を終わらせないか?」
そこには白衣にサングラス、革手袋の変な格好の白人が居た。
「ライス・バーター。白衣の堕天使と呼んでくれ」
「ライス・バーター? お前、赤十字軍ライスか?」
ロマンスが声を荒げた。
「ノンノン。ライスは仮の名前。私の真名は人類では理解できない言語で構成されている」
自慢げなライスにバーニャが、
「で、井戸端会議が何だって?」
ライスはサングラスの位置を直すと、
「バーニャ氏が言った通りこの問題は武力解決以外ない。だが考えるのはそこまでで良い」
「どう言う事?」
バーニャには考えは浮かばない。
「何、簡単な事さ。相手が仮に平和的に解決策が有ろうと無かろうと我々が雇われた限りは武力的解決を帝国鉄が望んで居ると言う事だ。違うかな? 滝川氏」
滝川はそれに眉も動かしもせずに、
「その通りだ。願わくばと鈴木会長を生きて帰って頂きたいが我々の決断はテロリストとは交渉はしない事である。人質の生死問わず。テロリストを殺すことが我々の今回の使命である」
そんな話の中。列車の窓に小石が当たる。それは几帳面な真田が気が付くほどの事だが真田はそれの意味を理解した。
「衝撃準備!」
真田が大声で叫ぶと同時に列車の前方が爆破し列車は大きく滑った。
終