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【結論】俺は冒険者になれない。  作者: 阿野根の作者
第二章☆児童は今日もお試し中
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【閑話】俺の幼なじみの女子力が半端ない件について。

閑話です。

児童編のプロローグ的なお話ですが主人公はでてきません。

冒険者ギルドの受付は今日も混み合っていた。

パーティーの大人たちが並んでる間は俺と殿下でギルドの待ち合いの椅子に座って足をブラブラさせて待っていた。


「セッちゃん、荷物それだけ? 」

金長い髪をポニーテールにした中性的な美少女風美少年が俺のメッセンジャーバッグを見た。

今回は一泊二日の迷宮(ダンジョン)探索なので最低限の荷物にしたが殿下のリュックにくらべると心もとないように見えるらしい。


「お弁当と保存食と着替えと水分だけです」

「保存食……美味しくないよね」

殿下がため息をついた。


確かに保存食は美味しくない、乾パンや干し果物や干し肉、しょっぱいお湯を注ぐと出来るスープとかしかない。


「……仕方ないですよ」

俺はメッセンジャーバッグをみた。


俺の大親友(お姫さま)ラナテスが今回の依頼に行くといったら持たせてくれた弁当と保存食が入ってるエウリール神の逆聖紋の刺繍の入ったメッセンジャーバッグを……


このショルダーバッグは今年の十歳の誕生日にラナからもらって弟妹からうらやましまくられた。


藍色の帆布に赤いエウリールの剣の逆聖紋がバックの被せに見事に刺繍されている。

中はファスナーでものが出ないようになっているメッセンジャーバッグだ。


本体の内側に紋章魔法陣が細かく刺繍してあって空間拡張しているとかでけっこうはいる。


『試してきてほしいの』

可愛い幼なじみが上目遣いで俺に渡したものは本当はほかの奴に渡したくないけど……今晩から配ることになる。


「手続きしました」

近衛兵なのに殿下に護衛のために冒険者登録を業務命令でした、ティオンさんが同じような状況なのに楽しんでるとしか思えないラナのお兄ちゃんのリンテスさんとこちら戻ってきた。

「そのバッグ、ラナの奴がセコセコ刺繍してたやつじゃん」

リンテスさんが楽しそうに俺のメッセンジャーバッグを見た。

「ラナちゃんが作ったんだぁ」

殿下がすごいと尊敬の眼差しでメッセンジャーバッグを見た。


確かにすごいが……この中の保存食の方がもっとすごいとおもうぞ。

俺は試食の時の味を思い出した。


「私が作ります」

ハートがつきそうな甘い声で黒髪黒目で褐色の肌のスラリとしたエルフが木の枝を加工した杖を片手にクネクネした。

魔法の一族のエルフの女性でパリアというまだ十歳の殿下に欲情する変態だ。


殿下のシンパの一人だけど魔法使いは珍しいし普段はセクハラしないのでパーティーに入れている。


ラナがリアルハーレム……って殿下のシンパ何十人って聞いた時羨ましそうにしてた。

俺は殿下と腐れ縁の幼なじみでつきあわされてるだけで殿下のリアルハーレムとやらじゃないからな。


それに俺のお姫様? おれだけで充分でしょう? と頬にキスして微笑んだらそれとこれとは別なのーと叫んで逃げた。


まったく俺のお姫様は言葉と行動が伴わないぜ。


「セッちゃんの知り合いに頼むから」

ラナちゃんだよね、相変わらずすごいと殿下が関心した。

パリアがキッと俺を睨んだ。


「手続き済んだなら行きますぜ」

青銅(ブロンズ)クラス以下パーティーには必ずつくギルド職員のマッパー兼フォロー役の中年男性のシリアンさんが声をかけた。


冒険者のランクは(カッパー)クラス、青銅(ブロンズ)クラス、(アイアン)クラス、(シルバー)クラス、(ゴールド)クラス、白銀(プラチナ)クラスまでが一般的で技能は武術、魔術、探索、生産、雑用にわかれていてレベル9がそれぞれの最高レベルとなる。


銅クラスと青銅クラスは未成年者や見習いがつくランクでとくに未成年者は16歳になるまで青銅クラス以上に上がれない、実力があってもだ。


ちなみに一般クラスより上に特級クラスが技能別にあってミスリルクラス、オリハルコンクラス、アダマンタイトクラスとクリスタルクラスとオパールクラスがあってそれより上は個人で公式に二つ名がつくんだそうだ。


登録証の五角に星のギルドタグには武術、魔法、探索、生産、雑用の象徴が別円でついていてそこを押すと真ん中の円の葉っぱの枚数で今のレベルがわかるようになっている。

タグの地の色が現在のクラスを表してて一番上の象徴がメインクラスで反時計回りに得意なものとなっていて、それぞれの象徴のクラスが円の地色となっている。


3技能以上が今のクラスのマックスになると上のクラスに上がれる試験が受けられる。


パーティ申請してればお互いに許可出してる部分だけみられる。


体力とか魔力も一応クラスわけされてるけど、こっちも銅、青銅、鉄、銀、金、白金と虹(人外? )で別れててランクアップとか関係ないけど、ざっくりしてる。


ギルドタグの後ろの星の数と地色でわかるようになっている、これも九が最高でそれ以上は自動的に色が変わる。


専門家は数値化を提案したらしいけども当時の冒険者の識字率がひくかったので一発でわかるざっくりとわかるような方式のままにしたらしいんだよね。


ギルド職員も違う発動ワード閲覧可能だ。


達成とかも記録してくれてるので便利だ。

技能も自動更新だけどクラスだけはギルドにいって試験を受けないとランクアップできない。


ラナに話したら目をキラキラさせてS級〜SS級〜とよくわかんないこと言ってた。

可愛かったけどね。



ダンジョンは世界各地にある、この帝都のすぐそばにも何個もあって皇宮の地下もダンジョンという噂があるくらいだ。


今回は別に最奥を目指すのでなく近場の魔物の退治だ。


なんでもコウモリ系の魔物が大繁殖したらしい。


はるかなる高みと名付けられたダンジョンはその名の通り塔状の高い建物を登っていくのだが、まだその最高の高さまで行ったものはないらしい。


バサバサと大きなコウモリが襲いかかる。

槍を振り回して仕留めた。


「いっけ〜シャインアロー!! 」

殿下が派手に剣を上に振ると光の矢が的確にコウモリの急所に刺さりおとしていく……何匹もいっぺんにだ。


「おっそろしーお子様だな~」

シリアンさんがコウモリを避けながらつぶやいた。

「でんか〜すてき〜」

杖を振り回して魔法使いが叫んだ。

そんなことしてる間があったらた、た、か、えよ!!


俺はムッとしながらコウモリをたたきおとした。



ダンジョンの途中の小部屋に聖域と呼ばれる結界部屋が作ってある。

大規模紋章魔法で人為的に造った領域で魔物やダンジョンの仕掛けが出ないようになっている。


維持するために使用料金取られるけどね。


リーダーやってるリンテスさんが冒険者タグを扉の冒険者のマークに当てると扉が開いた。


依頼を受けた時にダンジョン入場料と保全料が引かれててそこに使用料が入ってるから使用したほうがお得なんだ。



小部屋の中は寝床用に高くなったところとトイレがある。

水場があって水盤に綺麗な水がこんこんと湧き出ている。


折りたたみ式のコンロを設置して燃料火をつけて水場からヤカンで水を組んで沸かした。


テーブルもイスもおいてあった。


ダンジョンが深くなると単なる小部屋で床に毛布敷いてごろ寝というところもあるし。


「水場があってもなぁ」

飯がまずいんだよなぁと保存食の袋片手にティオンさんがため息をついた。


本当なら兵舎でがっつりとした食事食えたのに……とぶつぶつ言ってる脇で俺はメッセンジャーバッグを開いた。


昼食べた弁当も美味しかった。

ハニーマスタードソースが絡まった鶏肉のサンド、鯖と玉ねぎのサンド、キュウリとトマトのサンドイッチに卵焼きサンド、自家製ジャムサンド……デザートの飲める固さのコーヒーゼリー……ああ思い出してもヨダレが……


かばんからラナから渡されたキューブ状のものがいくつも入った袋を出した。

ついでに豚の干し肉袋をだした。

表面は細かい模様の紙でつつまれている白い五センチ四方のキューブで夕食用と言っていた。


「なんだこれは? 」

ティオンさんが不審そうな目でみた。

「干し肉出してちぎって調理マグに入れてください」

自分の調理マグをメッセンジャーバッグから出しながらティオンさんに干し肉の袋を渡した。


調理用マグカップは大きめのマグカップで浅いとってのついたフタ付きなのが特長だ。

フタととっては固定出来て直火にもかけられる。

浅い方はお皿にもフライパンにもできる優れもので色々種類がある。


ものによって性能もピンからきりまでで俺のはラナ特製の紋章魔法付きのものだ。

自浄作用と保温機能があるとかいってた。


そこに小型折りたたみ式ナイフで干し肉を切って入れた。

キューブを包みごとその上においてお湯を注いでフタをする。


「しばらくおいておくって話だったな」

「ふーんラナの試作品か〜」

リンテスさんが自分の調理用マグに干し肉を切った。


だいたい数分でいい匂いがしてきたので開けると白い極上のミルクの匂いがするシチューが出来上がっていた。

干し肉も見事に戻っている、玉ねぎとじゃがいもと人参がきちんとはいっていて食欲をそそる匂いがする。


「うまそうだな」

「わーフリーズドライみたい」

ディオンさんと殿下がのぞき込んだ。

「ラナが試食してほしいと言ってました」

確か乾パンもつけて食べれば美味しいとか言ってたな。


俺は包みを配った。


パリアが興味深そうに周りを見ながら保存と固定の紋章魔法……とつぶやいた。


「この紙はむくのか? 」

シリアンさんがキューブをくるくる回して聞いた。

「そのままでいいそうです、食べられる紙と言ってました」

紋章も食紅使用で書きづらいとラナがぼやいてた。


肉は別なのかとティオンさんが多く干し肉を切って入れた。


そのうち肉とかも入れられるといいってラナが言ってたな。

そう思いながらシチューを金属製の先割れスプーンでかき混ぜる。

これもラナが作ったもので紋章魔法が刻まれていて自浄作用がある。


一通りお湯を入れて乾パンも準備して席についた後でいただきますとみんなで食べ始めた。


クチの中でとろりとしたミルクの味が広がった。

干し肉も適度に柔らかくて美味しい。


「うまい! これが保存食かよ、さすがラナ」

「美味しいです」

「保存食か? これ? 」

「売れるぜ」

みんなの感嘆の声を聞きながら俺は複雑だった。


感嘆の声をラナに伝えられるのは嬉しい。

しかし美味しい保存食を分かち合うのが少しもったいない。


「これどこで売ってるの? 」

「ラナ……リンテスさんの弟の試作品だからまだ売ってない」

パリアの真剣な眼差しにたじろぎながら答えた。


発売したら買うわ、もっとバリエーションはないのかしら?

ポトフとかもいいわね。 とパリアがうっとりとした。


もう一種類あるけどそれは朝用と言ってたからな。


「しかし、なんで保存食ってクソまずいんだろうな」

「まずいんなら俺が食うぞ」

一般的な保存食って意味だよ、俺の取るなと騒ぐティオンさんと保存食はまずいんだろとからかうリンテスさんがじゃれあってるのを横目に食事は終わった。


寝袋をメッセンジャーバッグから出して寝台の方に設置してるとそれも寝やすそうねとパリアが覗いた。

温度調整機能付き紋章魔法のついたラナの試作品で今後の課題は頑丈さだと言ってた。


「セッちゃんの幼なじみさんに会いたいなぁ」

「そのうち」

皇室御用達のロイヤル寝袋に入った殿下が俺をみた。


多分、ラナは殿下に会いたがらない。

ハーレムのことを話したらチート皇子〜くやしいのじゃ〜と壁を蹴ってヤイリさんに後ろから止められてた。

どこのおじいちゃんですかと一瞬思う発言だったよ。


明日も早いし寝よう。



次の日の朝食も大絶賛だった。


「うめー、ミルク粥」

「チーズ味がほんのり聞いて美味しい〜」

「胡椒がきいてていいな」

あさのミルクスープにメシキューブのミルク粥はみんな美味しいと賞賛の嵐だった。


とくにご飯の量がキューブの数で調整できるのが良かったらしい。


シリアンさんが真剣な眼差しでこれ、冒険者ギルドに一定量おろしてくれないかなぁと言ってた。

帰ったらラナに聞いてみますねと答えておいた。


ついでに渡した行動食の塩飴も好評だった。


俺はこの時予測していなかった。

この『美味しい保存食』が爆発的な大ヒットになりやがて冒険者の食生活そのものを変えてしまうことを……


ラナ、気づかなかったけどもしかして天才?

女子力? ハンパないのか?


この成功に資金力を得たラナはますます『冒険者グッズ』の開発にのめり込んでいくこととなる。


あれ? おかしいな? 冒険者になりたいって話じゃなかったっけ?

冒険者じゃなくて、冒険者支援人とか開発研究者になってるよ?


ともかく女子力? の高い大親友の今後を見守っていこうと思う。


あ、危ないことはさせないけどね。

読んでいただきありがとうございます。

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