【結論】俺は冒険者になれない……今のところは。
色々試してみたんだけどなぁ……
俺はペン先に魔水晶がついたペンをくるくる回しながら考えた。
剣士も格闘士もそもそも戦闘全般むかない……ダンジョンの訓練もぜんぜん無理だしな。
魔法は……生活魔法限定だし……憧れの無詠唱とかできないしな……
チートでかっこいいハーレム冒険者になってウハウハ人生とか目指してたんだけどね。
そもそも俺って何でここに生まれ変わったんだろう?
俺は何も描いてない紙のおいてある机に肘をついてあごを支えた。
ああ、言ってなかったっけ?
俺はニホンって言う国でアニメとかゲームとかラノベとかが大好きな高校生してた男だ。
死因は覚えてないが気がついたらここに転生していた。
初めて気がついたんは赤子の時で全く自由が聞かなかった。
『可愛い〜いもうと? 』
『おとうとだ』
『マリエルそっくりだ』
よくわかんないけど男性の話し声が聞こえてさ柔らかいもの……ベッド? に寝かされてるのがわかった。
おおー異世界転生〜。と生まれた当初はチートでハーレムウハウハ人生って思ったけどな。
赤子の羞恥プレイをぼんやりした意識のなかしましたよ。
お母様が可愛いわ、ウフフって言ってるのももうろうときいてたよ。
前世はごくごく普通の一般人だったから周りを見回したらお屋敷で重厚な作りでビックリしたな。
どんな偉いうちに生まれたんだと思ったら裕福な下級武門貴族だった。
今は裕福じゃない下級貴族っていうのもいるのは知ってるけどね。
やっぱり転生したら冒険者とかデフォじゃねぇか?
あと何かの才能があってチートで大モテの戦う男とかなりたいって思うじゃねぇか。
戦えなくても生産チートで異世界ものでボロもけとかさ。
ところがどっこいこの世界便利過ぎてニホンの技術が入る隙間もねーよ。
現在はハーレムのハの字もないぜ。
ああ、冒険者でも騎士でも戦士でもないしなぁ。
でもいつか……きっと……あきらめない。
でもさ、俺は思ったんだ、ハーレムっていうのはカリスマ性というかやってることの実がともなわないとできないもんなんじゃないかなぁと……だから頑張ってみるよ。
現在俺は帝都の『神聖帝立オダーウエ学園』に通っている。
初等科をへて中等科に入ったところだ。
オダーウエ学園は帝都のハズレのなんたらドーム数十個分とやらの広大な学園なんだよな。
でも帝都内ならモノレールとか路面列車とかあるし……通学てきる圏内なんだ。
俺はウハウハハーレムを目指して寮生活希望したらヤイリさんが護衛でついてきたんですけど。
自分で洗濯とかしようとしたら洗濯サービスあったんです。
貴族寮って最低メゾネットタイプで使用人とか護衛とか連れてくる人も多いらしい。
最高ですか? 小さいお屋敷一戸建てですよ、くっそ。
まあ、貴族用たって裕福な庶民? もお金さえあれば入れるし、貧乏な貴族が一般寮に入ったりも可能だ。
俺は悲哀の独身男ヤイリさんとその部下エドさんと一緒に住んできちんと寮の食堂でたべてます。
料理人連れて行くなら帰ってらっしゃいとお母様に恐ろしい様子で言われたので……
時々、付いてるキッチンで料理します。
メイドさんとかつけてるところあるのに男ばっかりって寂しいよ。
掃除? お掃除サービス頼んでます。
一般人の寮は四人部屋から一人部屋で風呂は共同らしい。
ある意味ワイワイ楽しそうなんだよな。
ハーレムどころか彼女も婚約者もいない……出会いがない。
同級生は女の子がすくないんですよ。
マイナーな学科選んじまったのでね。
文学科とか芸術系とか選んでればウハウハだった?
せめて戦闘能力があれば今頃彼女が……できてないよなぁ。
長かった髪は一応まとめられるくらいのセミロングにした。
お母様には不評だけどね。
あのあと保育園に行けたかというと……行けなかったなぁ。
お父様が軍部の重要な役についてる関係上、戦闘能力が低い俺はオダーウエ学園みたいなセキュリティーがしっかりしてるところじゃないと無理との判断だったらしい。
オダーウエ学園って名門だけあって幼稚園しかないんだよな……
ドレン先生とカイラさんの一家とは今でも会うよ。
お父様はミドリおねえちゃんがお兄様たちどちらかのお嫁さんになってもらいたいみたいだよ。
お母様はデイナちゃんがお気に入りでよく休みの日に食べ歩きしたりショッピング行ったりしてる、俺の嫁? ええ? 嫌だよ、この間作ったサンドイッチとられたもん。
ミドリおねえちゃん、竜騎士様になったんだよ。
ヒルお兄様もなったけどね。
本当にうらやましい。
リンお兄様はオーレウス帝国軍に入ってメキメキ頭角を表しているらしい。
エウリール神殿のみんなとも仲良くしてる。
俺も神殿に行ったりしてさ……ついにうわさの殿下にあっちまったよ。
セシーは……いまでも大親友だぜ。
長身でスラリとした美青年じみた幼なじみの胸が成長してよかったとしみじみ思うよ。
エウリール神殿の巫女戦士の正装であるV字ネックの袖無しの長衣を着てる時はアンダーにTシャツ着るようになったしな。
いつもの男装の麗人っぽいカーキ色の戦衣にハードレザーの胸当て背負った槍の姿もかっこいいけどね。
そんなことを思っていたらセシーが来た。
足早に歩いてるから忙しいのかな?
俺とセシーはだいたい放課後は一緒だ。
セシーは俺の紋章魔法の開発の手伝いをしてくれてる。
でも……最近しばしば予定が入っちまうんだよなやつのせいで……
寂しいよ……大親友。
「ラナ、今日の放課後は殿下と冒険者ギルドに行くからな」
セシーはヤクザモンのたまり場と屋敷のみんなが俺を止めまくった『冒険者ギルド』に登録している。
まだ若年なので青銅クラスなんだそうだけど、実力はこいつを引っ張り込んだ『殿下』と共に白銀クラス並と言われているらしい。
俺も一度冒険者ギルドにいきたい登録したいと言ったらセシーにラナはあんなところに来るべきじゃないと説得されていけずじまいだったんだけどとある事情で登録だけはしてるんだ。
冒険しない冒険者だけどな……ハア。
こいつは昔から俺をお姫さまと思ってるところがあるから過保護なんだよな。
「また、殿下なの? 」
俺はがっかりした。
セシーに実験を手伝ってもらえないこともだけど。
セシーといられないのが寂しいんだ。
殿下っていうんはセシーが仕えている神聖皇帝陛下のうるわしい……愛息子だ。
そう、しょせん『男』で戦闘能力も祈念魔法も使えるチートな皇子だ。
いつもけっと思いながら見上げている。
ええ、俺より身長たかい細マッチョのくせに『男の娘』なんですよ。
しかも無意識にハーレム作ってやがる。
羨ましいー。
「やっぱり、セッちゃんはラナさんのところにきてるんですね」
うわさをすれば影がさすってか?
中性的な美青年が長い一つにまとめた金髪の髪を揺らめかせて入ってきた。
「殿下、俺とラナの逢瀬の邪魔しないでください」
「本当にセッちゃんはラナさんが好きですね」
綺麗な紫色の瞳が俺を見た。
妙に色気があるんだよな。
本人がその気がなくても惹きつけられるっていうか……これが本当のカリスマ性?
こいつ……ウラーシア殿下は本当に規格外の人間で『人間』のくせに無詠唱で詠唱魔法が使えるんだよな。
どうやってるんかセシーをまってここまで来た時聞いたら、イメージでといってたけど。
いくらイメージしても普通は詠唱魔法を無詠唱人間はつかえねーつうの。
「今日はどちらに行くんですか? 」
俺は魔水晶のペンを回しながら聞いた。
「冒険者ギルドにいってから決めようと思ってます」
ラナさんも行きませんかと殿下が微笑んだ。
本当なら俺もこのカリスマ性とやらにやられてウハウハついていくんだろうなぁと男性もいる殿下のハーレムのメンバーを思い出した。
その中でも一番かっこいいのはセシーで殿下にとっても信頼厚い幼なじみだ。
セシーは……殿下と結婚とかしたいのかな?
胸がズキッとした。
ま、まて俺はセシーが好き?
他の男のハーレム要員を好きになるなんて不毛すぎるだろう?
でもセシーは俺の事『俺のお姫さま』って時々言ってくれるしな……
「殿下、さっさと帰ってきたいんで参りましょう」
「わかりました、ラナさん次の機会に」
殿下をうながして足早に去ってしまうセシーに寂しさを感じた。
そういや俺みたいな平々凡々の男がなんで殿下のカリスマ性に屈しないんだろうな。
すぐにハーレムとか入りそうなのにな。
カリスマ性に惑わされない、それが俺のチート……ハハハ、まさかね。
ともかく実験あるのみ。
セシーが帰ってきたら戦闘訓練室で使ってもらって……
そういえば……なんでセシーって帝立軍学校の方に行かな……ああ殿下のためか。
俺のためなんか思っちゃ、おこがましいよな。
俺は設計図を描くために製図用テーブルに向き直った。
カリカリとフリーハンドで三重真円を描いて細かい模様を描いて行く。
魔水晶の粉がキラキラと空中を舞った。
今度はこれで爆発的な水を出してみようと思いながら。
俺は現在『冒険者』ではなく『紋章魔法士』の勉強中だ。
どこをどうやっても戦闘能力がつかなかった。
逆にこっちは向きすぎてて生活魔法では初等科で特許を取るほどのある意味チートだ。
だが、未だに戦闘魔法はできていない。
「ラナ君、まだいたの? 」
紋章魔法科の若き教諭イリノエル先生が入ってきた。
長身の男だくっそ〜。
ちなみに副担当で主担当は俺の紋章魔法の家庭教師のジジイの直弟子のやっぱりジジイでピサテル博士だ。
「水の魔法陣の強化版ね……ラナ君は天才だ」
でもここをこうすればいいんじゃないかなと後ろから抱きしめるようにイリノエル先生が指さした。
なんかこういう場面多いんだよな、最近。
「そこはこうする予定で……」
「ラナ君、いい匂いだ」
匂いかぐんじゃねぇよ。
「ラナ君は彼氏とかいるの? 」
ハアハアと荒い息が聞こえて思わず手が止まった。
か、彼氏だと? 気色悪い〜。
「いつも来てるエウリール神官の子かな? 」
「セシーは」
俺はなんとか逃げようとあたりをキョロキョロした。
「あんなこより僕の方が経済力があっていいと思うけど」
後ろから伸びた手が俺の胸をさわった気がする。
おいそこに脂肪はないぞ。
「俺のお姫様を離してくれませんか? 」
冷え冷えとした声がしてエロティーチャーが引き離された。
「何をする! 」
「セシー! 」
俺の大親友がエロティーチャーを壁に押さえ込んでいる。
「忘れ物とりにきてよかった」
「こ、こんなことしていいと思ってるのか〜」
エロティーチャーが暴れてうめいた。
「ラナのためなら何を失っても惜しくない」
セシーがエロティーチャーを壁に押さえつけながら爽やかに微笑んだ。
胸がドキドキする。
「大丈夫だぜ」
どこのやからに金をもらったんだとヤイリさんが短剣を突きつけた。
普段は勉学の邪魔ができない護衛が介入できたということは……お父様の政敵? の攻撃かい?
ひっとふるえあがったエロティーチャーは失神寸前らしい。
セシーちゃん、ちょっと話を聞くから渡してくんなとヤイリがエロティーチャーをセシーから受け取って担ぎ上げて窓から飛び降りた。
ここ、四階だけどね……
おもわず確かめに行ったら無事に地面についててエロティーチャーはピクリとも動かない。
あーあー……なんだってこんなことに……
「ラナ」
後ろからセシーに抱きつかれた。
「セシーありがとう」
「ラナ、お前はうかつすぎる」
俺の肩に顎をかけてセシーがあきれた声をだした。
「仕方ないじゃないか、それで忘れ物は? 」
「ああ、これだ」
セシーが俺の首にキスをした。
少し気が遠くなった。
「ラナは俺のお姫様だからな」
俺から慌てて離れてセシーはかけていった。
ど、どういう意味なんだろう?
結局のところあのエロティーチャーは本気の本気の本気で男色で俺をねらっていた。
しかもお父様の政敵の上級貴族に雇われていて息子が男色家いうことでスキャンダルにしようとしていた。
なぜ目をつけたかというと明らかに爽やか美男子? のセシーと男の娘風の俺が付きあってると思ったかららしい。
ピサテル博士は自分の弟子が金と欲の二人連れでそんなことしてるとおもってなかったらしい。
イリノエル教諭のその後の事は恐ろしくて聞けない。
ヤイリさんが今は幸せの国に行きましたと満面の笑みで答えた。
恐ろしい……一応生きてるらしいよ。
どうに処理したのか次の日から可愛いドワーフの男性教諭アーサー先生になったよ。
教え方上手だしお買い得品の買い方も教えてくれるしとっても素敵な先生だよ。
困ったことは……セシーが最近エロい……どっちかと言うと男の色気でアピールされることかな……過保護になってるし。
俺らは親友、大親友……と唱える日々だよ。
あと超過保護な親と兄ちゃんたちがうちに帰ってこいコールがつらい。
俺チートハーレム冒険者に憧れるけど……全然なれそうにないよ。
【結論】俺は『冒険者』になれない。とりあえずは。
くっそー、いつかきっとなんか戦闘能力つけてチートでかっこいい冒険者になってハーレム作ってやるんだからなぁ。
過保護の親と兄と幼なじみさえなんとかできれば……無理か?
幼児編これにて終了です♥
学園編は需要があったら妄想予定です(*´艸`*)
読んでいただきありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ