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【結論】俺は冒険者になれない。  作者: 阿野根の作者
第二章☆児童は今日もお試し中
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【考察】伝令竜騎士

やっぱりリーチがあった方がいいかなぁ。

俺は実家の武器庫の前で腕組みした。


家は武門の貴族だけあって武器庫がある。

たまには虫干しとかしてるので覗いてみた。


だって最下位の(カッパー)クラスとはいえ冒険者登録できたんだぜ〜。


武器の一つも使いたいじゃんか。


まあ……『美味しい保存食』のための限定的な登録なんだけどよ。


武器庫も一般的な市販品クラスから迷宮のドロップアウト品、名匠(メイショウ)の一級品まで数か所に分けて収納している。


当然覗いてるのは一般的な市販品の倉庫だ。

それでもたくさんあって目移りしそうだ。


「ちい坊っちゃん、危ないですぜ」

「これなんてどうかな?」

鉄球らしきもんがついたフレイルを持ち上げようとしてよろけた俺をヤイリさんが支えた。


うーん、非力だ……

ちい坊っちゃん、危ないもんは大将がうるさいし俺もぞわぞわすんでやめてくださいとヤイリさんが俺を後ろから抱きしめた。


過保護だ……俺はもう幼年学校行ってるんだぜ。


困って後ろを振り向くと廊下に見覚えない、でもジェアサーナ私兵の軍服を着た若い男性が足早に歩いてきた。


「ヤイリのおっさん」

「エドか、悪いな」

ちい坊っちゃんをヤイリさんが俺をそのまま抱き上げて男性に渡した。

「ヤイリさん? 」

「ちい坊っちゃん、大将の用事で少し離れます、エド、頼んだぞ」

ヤイリさんは寂しそうな目で俺を見てエドさんの肩を叩いて振り向いてあるき出した。


遠くなってくヤイリさんを見たあとエドさんを見上げると視線があった。


「あ~俺はエドです、領地の方が中心なのでほぼはじめましてです、ちい坊っちゃん」

俺を片腕に乗せて筋肉マッチョな好青年が頬を指でポリポリかいた。

「ラナテスです、よろしくお願いします……ヤイリさんは」

「ヤイリのおっさんはあれです、大将……ちい坊っちゃんの父さんが海外に視察に行く軍事大臣に同行するんで……本当は離れたくないんでしょうね」

エドさんが困った顔で武器庫の槍をつついた。


槍か……


「ヤイリさんと父上が海外いくと寂しいです」

「ヤイリのおっさんもちい坊っちゃんの護衛を心配して……俺を信頼してくれて嬉しいぞです」

槍を持ち上げてエドさんは確かめるように上下に振った。

「槍を使うんですか? 」

「槍も使いますが、基本武器はやっぱり片刃剣……です」

エドさんがちらっと腰に視線を向けた。

刀みたいな剣が腰につるされている。

「槍なら、坊っちゃんみたいな竜騎士の基本武器だ……ですよ」

「そうなんだ」

坊っちゃん……ヒル兄上とかミドリ姉ちゃんが戦う姿を妄想した後に俺はまだエドさんに赤ちゃん抱っこされてるのに気がついた。


おろしてくださーいと筋肉厚い胸を叩くとヤイリのおっさんに野放し危険っ言われてるんだけどな……ですと頭をかきながらも降ろしてくれた。


どうもなれない敬語を使ってるみたいだ。

俺みたいなちびに……でも多分ヤイリさんが信頼してるんなら必要だろうからしばらく様子を見よう。


「やっぱりリーチがあると有利かな」

「そうだ、いや、そうですね」

変な会話を続けているとパタパタと羽音が聞こえた。


トンっと軽やかに何かが俺の頭に降りた。


「……で、伝令竜がなんでここに? 」

「伝令竜? 」

俺は腕を上げた何かが伝わって来た。


スラリとした体型のエメラルドグリーンの鱗の体長20センチから30センチの竜が背中にオダーウエ聖竜騎士団のマークの入ったリュックを背負って腕に立っていた。


「くわ〜」

気持ち良さそうに俺の頬に首をすりつける。

赤ちゃん竜と違うよね、ちっちゃいけど。


なんでこんなとこにいるんだろう?

足音が聞こえてエドさんがさり気なく俺を後ろにかばった。


「ルル〜人様の家で勝手してはいけませんよ」

細身の男性が手を差し出した。

よく見るとオダーウエ竜騎士団の制服を着てる。

戦闘能力あるのかな?

「くわーくわー」

のんきにルルちゃんは俺の懐に潜り込んだ。


おーいそこ巣じゃないからね~


「お前は誰だ? 」

エドさんが身構えたのがわかった。

「あ~すみません……」

立派な武器庫ですね~と男性は感心したようにあたりを見回した。


「ハリスさんー」

ヒル兄上が駆けつけた。

「竜の愛し子、ラナテス・アゴラ・ジェアサーナ君に手紙を届けてこいと竜騎士団長より命じられました伝令竜騎士のハリス・アードンです」

ビシッと敬礼を決めたハリスさんには悪いけど……

なんか今、ポコッとルルちゃんが産んだよ……


う○○じゃないよね?


そっと懐からルルちゃんを出すとまたに濡れた薄いエメラルドグリーンのうずら卵大の……


「た、卵」

「伝令竜の卵なんて国の宝の一つだろうがぁ〜、だいたい宝の伝令竜がなんで戦場でなく下級貴族の家に来る〜」

ついにエドさんが叫んだ。


若いってすごいな。


「え~と竜の愛し子獲得のため? 」

でも卵産んじゃったよ……僕にべったりのルルが他の子の胸の中でと呆然とハリスさんがつぶやいた。


へ~ハリスさんにいつもはべったりなんだ。

伝令竜のルルちゃんはおれに嬉しそうにすり寄った。

ついでに背中のリュックサックに目を向けるので開けると俺あてにぜひオダーウエ竜騎士団に遊びに来てほしいと団長から手紙が入っていた。


「ハリスさん、ぶっちゃけちゃだめですよ」

ヒル兄上が激しい息切れと共にハリスさんの口元を押さえた。


それより卵どうすんべ。


「ヒル兄上〜卵〜」

俺はそっと伝令竜ごと卵を持ち上げた。

「……とりあえず、オダーウエ聖竜騎士団に行こうか? 」

「あ~坊っちゃん……今日はヤイリのおっさんと大将が居ないんであんまり出たくないっていうか……」

エドさんが頭をポリポリかいた。


そんなにかゆいんなら温泉でも今度誘おうかな。


「エドがついてるから大丈夫だろ」

ハリスさん行きますよとヒル兄上がヘッドロックしてズリズリハリスさんを引きずった。


成長期がもうすぐ過ぎるヒル兄上は細身のハリスさんよりでかい、でも大人の男を引きずるのだから大変だ。


「ヒル君、自分で歩けるから」

なんかハリスさんってインテリっぽい……伝令竜騎士だからあんまり戦闘能力ないのかもしれない。

「わかりました」

ヒル兄上がヘッドロックを解除して俺たちを見た。


エドさんと俺とルルちゃんとルル卵ちゃんは一歩も移動してない。


「ちい坊っちゃん、槍術見に行きますか」

「うん、そうだね」

「くわー」

ルルちゃんが卵を優しく咥えて俺に差し出した。

手のひらを上に向けるところりとそこに落とした。


生暖かい卵が一瞬キラリと輝いて鼓動を感じた。


「あ~養い親決定……」

「そうですね……」

ハリスさんとヒル兄上が呆然としてるので俺は卵をハリスさんに差し出した。


伝令竜って竜の中でも少ない種族って前本で読んだの思い出した。

みんな国家管理なんだよね。


まあ、竜騎士自体エリートだけどね。


コツコツと卵の中から音がする。


ハリスさんが受け取る直前に卵から群青色の小さな頭と前足が飛び出した。


「キュ」

小さな小さな小さな赤ちゃん竜がヨタヨタと卵から出て俺の腕にしがみついた。

「らな……ちょっと行こうか」

ヒル兄上が俺をルルちゃんと赤ちゃん竜ごと抱え上げた。


「坊っちゃん〜、それ俺の役目だです」

「さすが竜の愛し子だね」

後ろから男二人がついてくる。


どうせなら可愛い女の子がいいなぁ。

そんなことで現実逃避しながら俺はジェアサーナ家から前来た皇宮にあるオダーウエ聖竜騎士団の施設に運ばれて言った。


でも戦闘能力低くていいなら、空飛ばなくていいなら伝令竜騎士もいいかもしれない。


「あ~ついに伝令竜をたぶらかしたかぁ」

見覚えある竜騎士団長がソファーに笑いながらどかっと腰掛けた。

「たぶらかしてないもん」

ヒル兄上の膝の上で俺はルルちゃんとルルちゃんの赤ちゃんをなでながら膨れた。

「これで空さえ飛べればねぇ」

タエナさんが頬杖をついた。

「その子はもうラナ君のもんだ、美味しい保存食共々竜騎士団とお付き合いしていただこう」

騎士団長が腕組みした。

美味しい保存食の差し入れ気に入ったんですね。


わーい取引先ゲットだよ。

帝国軍も検討中って聞いてるし……生産チートというか真面目な研究開発ができて嬉しい。


さっそく外での伝令竜養育申請書類をもらってきますと事務のおばちゃんがでていった。


ご迷惑おかけします。


でも、でも……

ルルちゃんと赤ちゃんが俺を見た。


「キュー」

「僕、空飛べないの」

「ああ、高所恐怖症だそうだな、とりあえず伝令の心得くらいは学んでほしい……実戦向きではないが」

とりあえず槍でも使ってみるか?

と騎士団長が立ち上がった。


「ちい坊っちゃんに危ないことさせるとヤイリのおっさんにしめられるんで見学で」

それまで黙ってたエドさんに止められた。


ヤイリさーんなんて過保護なんだー。

ヒル兄上もその方がいいとうなづいてなぜか見学会になったぜ。



槍戦闘見てたらまた竜に囲まれて……


「竜ハーレム相変わらずすごいね〜」

「僕、竜好きだけどハーレムはいらない」

タエナさんが楽しそうに笑った。

ハーレムなら女の子が良いぜ。


鍛錬場でヒル兄上の槍が団長に飛ばされたのが見えた。


「その子大事にしてあげてね」

ハリスさんが小さな育児袋(ポシェット)を差し出してくれた。

中には気持ち良さそうな草が沢山入ってる。


ルルちゃんが赤ちゃんをくわえてポシェットにおろした。


「ルルは僕が大事に卵から育てたんだ、おじいちゃんになった気がするよ」

「大事にします」

ポシェットを受け取ってハリスさんを見上げた。


粗末にしたら容赦し無いよとハリスさんが俺の頭を荒くなでた。

少し殺気を感じて見上げるとハリスさんが怖い顔をしている。


俺はギュっとポシェットごと赤ちゃんを抱きしめ大事にしますと強くもう一度言った。


頼むねとハリスさんが笑った。


ルルちゃんは名残惜しそうにくわーと鳴いてハリスさんの肩につかまった。


うん、頑張ろうっと。

でも、俺みたいなちびが良いのかな? 


「さてと外での赤ちゃん竜養育許可申請しないとね」

ラナ君頑張ろうねとハリスさんがルルちゃんを支えて笑った。


わ……頑張ります。



その時何かがすぐ脇をとんだ。

思わず赤ちゃんを抱きしめた。

ドスっと槍が真横に地面に突き通って立った。


俺はフラフラと地面に座り込んだ。


「大丈夫か!? ラナ君」

「ラナ〜ごめん」

「ちい坊っちゃん〜」

団長とヒル兄上がこちらにかけてきた。

よく見るとヒル兄上が槍を持ってない……ああ、槍飛ばされたんだ。


ヤイリのおっさんに殺される〜とエドさんが慌てて俺の身体を確かめた。


エドさんヤイリさんはそんなに心が狭くないぜ……たぶん。


「……家のルルの養育親によくも……」

ハリスさんが槍を引き抜いてつぶやいた。

「お、おい」

団長とヒル兄上がたじろいだ。

ハリスさんは答えずに槍をかぶりふった。


二人が逃げ出した。

一発殴らせなさいー。


やめろーこの脳筋〜。

ハリスさん、強すぎです〜。


三人の追いかけっこに目を丸くしているとタエナさんがやってきた。


「全く……団長より強いくせに伝令竜のことになると切れるわね」

ラナ君もいるのにとタエナさんが頬に手を当ててため息をついた。


わーんすごすぎだよハリスさん。

戦闘能力低かったんじゃないんですかぁ?


【結論】伝令竜騎士って戦闘能力低いんじゃないのかよ。

無理、絶対無理〜。


赤ちゃん竜は書類書いて無事に俺が育てることになりました。


エドは通信機で報告したらヤイリさんになんでこんなことになってるんだと怒られたみたいです。


まだ帰ってこれないから当分エドさんがつくみたいだ。


エドさんは帰ったらコロサレルって蒼白になってた。

でも……俺はヤイリさんが帰ってこないとさびしいな……いつでも一緒だったからね。


よーし頑張って赤ちゃん竜育てて帰って来たヤイリさんびっくりさせるぞ〜。


ちい坊っちゃん、よく頑張りましたねとおっきいゴツい手で頭を撫でてもらうんだ。

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