【考察】祈念術2
神殿変われば規則変わるんだね……
うちに帰ると何故か騒がしかった。
「大将? 」
ヤイリさんが驚愕の眼差しを向けた。
ガシャガシャと足音がして玄関に信じられないもんが入ってきた。
防御力の高い特殊なアンダーの上に紋章魔法で軽量化されたプレートアーマーをつけうちの親父が脇にフルフェイスヘルムを持って歩いてきている。
あれ……二十キロはあるしろもんだぞ。
その後ろから同じフル装備に固めた私兵のみんなが続いている。
「ラナ、今、お父様がゴエルティノ大神殿に突撃してくるからな!! 」
恐ろしい迫力でお父様は叫んだ。
お父様……その背中の斧はほんもんですよね……
「大将〜ダメですよ」
ヤイリさんがあわてて止めた。
そ、そうだよね。
「まず宣戦布告しないと」
続いたヤイリさんの言葉に俺はずっこけた。
の、脳筋だ、まごうこなき脳筋がいる。
「うむ、すぐにゴエルティノ大神殿で宣戦布告」
「あ、な、た……どういうことでございますの? 」
お母様の声が玄関に鳴り響いた。
騒音にまぎれてお母様の玄関を開けた音に気が付かなかったらしい。
「つまりだな、最高位の知恵巫女として選ばれたラナをゴエルティノ大神殿に取られないようにだな」
「交渉に行かれるのは良いとして、その戦支度はいただけませんわ」
口ごもるお父様の胸にお母様が指を突きつけた。
「つまりだな……」
「ゴエルティノ大神殿からはご連絡をいただいております」
お母様が通信機のメール画面を出した。
お父様が飛びつくように通信機を持った。
「この度はご子息様の最高位の知恵巫女様発現おめでとうございます……だと〜つきましてはご子息とご都合のよろしい時にゴエルティノ大神殿へご訪問いただければ幸いでございます……すぐにぶっ潰してやるわ!! 」
お父様が通信機かかげた。
「攻め込むぞ〜」
おーと私兵のみんなが拳を掲げた。
お母様が足早にお父様に近づいて腕を振るい上げた。
まさか実力行使?
「オレイアス……あなた、軍の礼装の方が似合ってるわ」
お母様がお父様の頬をなでた。
お父様はうっとかなんとかいって真っ赤になったあとくるりと踵を返した。
大将〜いかないんですかい? と戦闘モードに入ったヤイリさんが聞いた。
「貴様ら〜戦闘は中止だ!! 」
お父様が手を上げると私兵のみんながブーブー言い出した。
黙れとお父様が怒鳴って追い立てた。
大将の横暴〜と言いながらみんな戻っていった。
ちなみにお父様……いい加減父上とか呼ぼうかな? 泣かれそうで怖いけどさ……父上は現在軍事大臣の副官をしてる。
そのせいで敵が多いんだよね。
だから俺に専属護衛がついてるんだ。
大坊っちゃんと坊っちゃんの時はこんなに過保護じゃなかったのにとヤイリさんが言ってたけど……下級貴族のお父様……父上が出世したせいもあると思うよ。
「うふふ、ラナはどんな格好にしようかしら? 」
俺はお母様の声に寒気を覚えた。
「えーと学園の制服でいいと思う」
俺はお母様をそっと見た。
それが学生の正装だよな。
あらあらいいじゃないのとお母様があいまいに微笑んだ。
フリフリ絶対に回避だぜ。
ゴエルティノ大神殿は帝都でなく島にあったので飛行艇に乗るはめになった。
青い青い空白い雲海……
「わーちい坊っちゃん〜」
ヤイリさんの声遠くに聞きながら俺は白目を向いた。
高所恐怖症なんだよー。
気がつくとヤイリさんに抱き上げられて窓の見えない位置に移動していた。
「ラナって高いところが苦手なのね」
「空を飛ぶのは気持ちいいのだが……」
お母様と父上が笑い出しそうな顔で俺を見てた。
「父上、お母様……ひどいです」
俺は二人を軽くにらんでぷいっと横を向いた。
そこにはやっぱり楽しそうなヤイリさんの顔があった。
他人の不幸は蜜の味ってことなのかよー。
フーンだ。
すねてるとツンっとほっぺをつつかれた。
「ラナったらすねないの」
「それよりなんで父上なんだぁ〜」
楽しそうなお母様と対照的に父上がこの世の終わりのような顔をしていた。
「僕ももう十歳ですからね」
「うふふ成長したわね」
お母様がツンツンほっぺをつついた。
お母様やめて〜あと成長したからヤイリさんも膝からおろして〜。
そんなことを騒いでるうちに空港についた。
南のその辺境は前世のオキナワみたいで暑かった。
そこに涼しそうな木製の大神殿は平屋で椰子の木とかパイナップルの木とか植わっている。
「暑いな……」
軍部の濃紺正装を着た父上が暑そうに詰め襟を緩めた。
「あらあらご挨拶するまで崩してはダメですわ」
そういうお母様も濃紺のワンピースで暑そうだ。
ちなみに制服は却下された。
紺のボレロ丈のジャケットにドレスシャツに半ズボンだ。
ヤイリさんも私兵の黒い軍服を着て後ろに控えている。
受付で面会の約束を告げた。
この辺は暑いせいが褐色の肌の綺麗なおばさんだ。
うん、おばさん……
「最高位の知恵巫女ラナさーんいらっしゃーい、おいしい保存食作ったそうですね」
栗色の頭に布の被りものを巻き褐色の肌の胸の開いたシャツに極彩色の模様の足首丈の巻きスカートを着た青年が楽しそうに出てきた。
その足の影から褐色の肌のクルクルの栗色の天パの子供が覗いてるのが見えた。
「いらっしゃいです〜」
ちっちゃく手を振って子供が笑った。
可愛い〜可愛い〜俺くらい?
華やかな花柄のピンクの巻きスカートはいてる。
上はミントグリーンのTシャツだぁ~。
「ミミル、ラナちゃんをご案内してくれるかい? 」
青年が子供、ミミルちゃん? を優しくなでた。
うんとミミルちゃんがうなづいて俺に近づいてきた。
「ミミル、9歳です、ラナちゃんご案内します」
「ラナテス・アゴラ・ジェアサーナです、十歳です」
ペコと頭を下げたミミルちゃんが可愛くてニヤけながら胸に手をあてて丁寧に礼をした。
「ラナちゃんは巫女だからもう巫女名ラナしかないのです」
ミミルちゃんが小首をかしげた。
あれ? そうなのか?
そういえば俺、セシーの……セシリアのファミリーネーム知らない……
「ラナはラナテスは、ジェアサーナ家の息子だぁ~」
「別に否定はしませんよ」
拳を振り上げかけた父上に青年が手を前に出して振った。
でも神様からの巫女名は重要なんですと青年はそっと手を胸に当てて頭を下げた。
そんなもん? そんなもんなんか?
「あ、な、た」
お母様がたしなめて父上を見た。
フンっと父上は鼻を鳴らした。
ゴエルティノ大神殿はなんか落ち着くインテリアでまとめられていた。
「ま、招き狼……」
「停滞巫子様の趣味なのです」
青年神官ララスさんがまん丸の柴わんこのような生き物が招き猫の真似してる一メートルはあろうかという置物を指差した。
その向こうに薄いカーテンがあって部屋があるらしい。
カーテンおさえかな?
「シシルナ様、入りますよ」
「ちょっとまってくだ……」
ララス神官はカーテンを開けた。
寝椅子に寝っ転がる妙齢の女性が困った顔でバナナケーキを口に運ぼうとして固まっていた。
「い、いらっしゃーいですわ」
女性は二ヘラと笑った。
なんか力がぬける光景だ。
「シシルナ様、最高位の知恵巫女のラナちゃんが来てくれてるといっておきましたよね」
「そうなのです」
ララス神官とミミルちゃんににらまれてシシルナ様はタジタジになった。
「わかってますわ~」
シシルナ様が立ち上がった。
そのまま歩いて来て俺の前にペタンと座った。
「最高位の知恵巫女ラナちゃんいらっしゃいですの」
妙齢でボインの美女が俺の手を握った。
うーんいいなぁ……こういう美女がハーレム……
あれ? 最近あんまりそういう気になら無いなぁ。
「シシルナ様に驚いてラナちゃんが固まってるのです」
「わたくしがのほほん過ぎてあきれてしまいましたかしら? 」
シシルナ様が小首をかしげた。
「はじめまして、ラナテス・アゴラ・ジェアサーナと申します」
俺は胸に手を当ててお辞儀をした。
「わたくしはゴエルティノ神様の停滞最高位シシルナですわ」
シシルナ様が俺の手を持って微笑んだ。
後ろでバシッとなんか殴る音がした。
振り向くと父上が痛そうに腰を撫でてた。
シシルナ様の胸でも見入ってお母様に叩かれたのかな?
「知恵巫女の方たちはいらっしゃらないのですか? 」
お母様がアルカイックスマイルじみた笑みを浮かべた。
一刻も早く巨乳美女から父上を離したいらしい。
父上痛そうにしながらシシルナ様の胸がん見してるもんね。
そういや思い出したくもないけど乳母も巨乳だったよ。
このおっぱい武人め〜。
お母様だってそこそこあるだろう〜。
俺はチッパイでも大パイでも普通パイでも全て愛してるよ。
俺もおっぱい少年だったよ……落ち込みそうだ。
「本当ならば知恵巫女……閃きの巫女たちがお出迎えするのが筋ですが、みんな世界中に研究に出てしまってまして……」
ララス神官が頭を掻いた。
「外に出てもいいんですか? 」
「へ? ええ、どこに住んでもかまいませんよ、閃きの元はどこに落ちてるかわからないが教えですから」
ララス神官が不思議そうな顔をした。
つまり……ここにすまなくていいんだ。
『なんで1か所にすまなきゃいけないのさ』
ゴエルティノ様の声が聞こえた。
……ファリシアおばさんやティオラお兄ちゃんはエウリール大神殿に連れてこられたって聞いたので。
『エウリールとかオーラダーの考えは知らないけど閃きも停滞も自分のいたい所ですればいいんだよ、ラナちゃん」
ゴエルティノ様が頭をなでてくれた。
美味しい保存食さ、今度はご飯のバリエーションができるといいよねとゴエルティノ様はヒントをくれて去っていく気配がした。
僕、バナナケーキも好きだよ〜と最後に聞こえた。
「ちい坊っちゃん……大丈夫ですかい? 」
ヤイリさんの顔が近くてびっくりした。
気がつくと横に支えられている。
「神様からお言葉をいただくとこうなるのですわ」
シシルナ様はおっとりと微笑んだ。
途端みんなほややんとなった。
安息の巫女はのほほんな雰囲気発動の祈念術を授かっていて最高位となれば微笑んだだけで世界大戦をとめたという記述もあるらしい。
それにセシーも時々意識消失してたよ。
すぐにもどるけどさ。
「どこに住んでもいいなら襲撃しなくともいいな」
父上が少し残念そうにシシルナ様の胸をみた。
「ええ、あなた」
お母様が父上の首を自分の方に向けた。
楽しそうなご両親ですわねとシシルナ様が口に手を当てて笑った。
ちなみに知恵巫女は自己に対して閃きを促進するのが祈念術なのでハデハデしくない。
俺の場合、美味しい保存食開発が発現の契機になったらしいけど。
元々生まれた時からゴエルティノ神様の最高位の知恵巫子についてたみたいなんだよな。
一応チートなんかな?
その後、一応最高位の知恵巫子の就任式をした。
どうもララス神官もミミルちゃんもシシルナ様もその他のみんなも俺の事女の子だと思ってたみたいだ。
だって巫子の正装フリルついてた女の子もんだったもん。
なんでだ〜と騒いだらヤイリさんが一言。
そりゃちい坊っちゃんが可愛すぎだからですぜと発言してみんなが頷いたのは不本意きわまりなかった
ぜ。
【結論】なんか知らないけどゴエルティノ神様の最高位の知恵巫子になりました。
研究の結果とかも閃きの掲示版とかいうネットで共有できるみたいだしよかったぜ。
ミニ神棚をもらってお供えするように言われたよ。
巾着収納可能で持ち運び便利のサイズだったよ。
でも最高位の知恵巫子就任式の女装写真は封印の方向でお願い致します。
読んでいただきありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ
フルプレートアーマーは調べたら重くてびっくりしました♥




