喜怒哀楽
卒業が近づく。もうすぐこの学校とはお別れだ。卒業したらもう、このクラスで二度と授業は出来ない。「卒業」皆さんはどう思います?喜んでも、怒っても、哀しくても、楽しくても。卒業はやってきます。「あ~あ。もうすぐ卒業だ。やだな~~。」「そうだね~。卒業式でうち、絶対泣いちゃうよ~。」「私も!」「ね!」私は晴道歩。もうすぐ小学校を卒業する六年生です。「じゃね~!」卒業まで十日をきっています。「卒業か。」今まで色々あったなぁ…。一年生、小学校を入学して、遠足行ったり…。二年生は校外学習とか…。三年生は長縄頑張ったし、四年生はグリーンスクール。五年生は林間学校。そして…六年生は修学旅行。最後は…卒業式。小学校生活は楽しかった!でも、何でだろう…。この、心にぽっかりあいたようなこの感じ。……。まぁ。どうあれ卒業したらもう大丈夫だろう。歩はこの気持ちを卒業する寂しさなどだろう。と思い、気にせずに過ごすことにしました。 歩は忘れていました。大事な大事な友達とした約束を。
残り、八日。「おはよ~!」いつも通りの一日、でも少し違う。今までと違って卒業練習が始まった。「つかれた~!」「うん…」卒練は思ったよりも結構ハードだった。「……。私さ」「うん」「まだ、卒業するって実感わかないんだよね…。」とうちの親友、由良が言った。「……確かに。」卒業するってちゃんと納得できないのだ。まだ、私は小学校生活を送るって感じがどうしても消えない。たぶん、卒業したくない。という気持ちが強いのだろう。「あ~あ。たぶん卒業式終わってから改めて実感すんだろうな~」「そうだね~。」「後悔することないかな……?」「あっ!!」「?!なっ何?!びっくりすんじゃん!由良!」「あった‼卒業までにしなきゃいけないこと!」「?何?何かあったっけ?」「あんた…忘れてたの?!自分で言い出したくせに…。約束したじゃん。」「?なんだっけ?」「こ・く・は…」「あ~~~~~~~‼‼」「やっっと思い出したか。」「忘れてた!」「ヲイ!」歩が忘れていたのは由良とした大事な約束でした。
三か月前…。 「由良~!」「何?歩」「由良って龍のこと好きなんだっけ?」「ちょ…!」由良は声を小さくして言った。「そうだけど!もうちょっと声小さくしてよ!皆にバレたらどうしてくれんの?!」「ごめんごめん。」「ていうか、それいったらあんただって緑都のことが好きなんでしょ?」歩は少し照れながら言った。「そう、それでさ…。」「?」「卒業するまでに、うちら好きな人に告白しない?」「はい?」「だってさ、由良とうちの好きな人、違う中学になっちゃうじゃん?それだと、後悔すると思うんだ。」「……。」「まぁ、当たって砕けろっていうでしょ?」「わっわかった。」由良はしぶしぶうなずきました。「約束ね!」「うん…、約束。」
「…というようなことが。」「それ!あんたは何で自分で言ったくせに忘れてんの!」「いや~。ごめんごめん」「で?したの?」と由良はニヤニヤしながら歩にたずねた。「……してない。」「だと、思った。」呆れ顔で由良は呟いた。そんな由良の態度に少しむっとした歩は言った。「そういう由良はしたの?」というと、由良は突然顔を赤らめた。という予想外の反応をした。「まさか…由良…」「うん。したよ。」「したのっ?!」と驚きのあまり、声を張り上げる。「声大きいっ!」と由良は歩を叩いた。「いてっ」「…で?歩はいつするの?」「え」「まさか、やらない。な~んてことは歩はしないよ・ね?」「由良っ!こっ怖いよ!」「やるよね?」「え。そっそれは~。」「やれ。」「はい!」由良の恐ろしい剣幕ではいとしかいえなかった。「よかった!」「そういえば、由良、告白成功したの?」「うん。」「おめでと!」「ありがと」由良は幸せそうだった。「あ、そうそう。あんた告白すんの卒業式ね」「え?」「忘れててたから。強制的に卒業式に告れ。」「ムリっ!絶対ムリ!」「決定!じゃあ歩。うち先帰るから!バーイ!」「え…ちょっ、由良~!」うそだうそだうそだ……。卒業式?絶対ムリ~~!
卒業まで、二日。
卒練はよりつらくなったけど、歩はこの前のアレのことで何もかも集中出来なかった。
あと、二日、二日、二日、二日……。「おい!」といきなり声をかけられた。「はい?!」声の主は先生だった。「別れの言葉!晴道!お前のところだ!」自分が何をしていたかわかってきた。そう。卒連だった。「あっ。すっすみません!」「最近ボーっとしてるぞ!もうすぐ卒業なのにこれじゃあお前だけ卒業できないぞ!」まわりからクスクスと笑い声が聞こえてくる。自分でも顔が赤くなっているのがわかった。
帰り道。「ふぇ~。先生にしごかれた~。」「あはははは!アレのことで集中できないんでしょ」と由良が笑う。「笑うなんて!由良ヒドイ!」「元々歩が約束覚えてたらこんなことにはならなかったと思うけど?」「うっ…。」由良の言う通りである。「まぁ、頑張れ!」笑いながら由良は去って行った。「この…!薄情者~‼‼」
卒業までとうとう残り一日。
明日、告白すると思うと気が重い…。歩はうつむきながら歩いていた。すると、突然後ろから声が聞こえた。「よっ!」「わぁ‼‼」振り向くと由良がいた。「なんだ。由良か…びっくりするじゃんか。」「まさかそんなに驚くとは思わなかったの~。ごめんごめん。」歩の反応に由良もびっくりしたのか、顔にはまだ驚きの表情が残っていた。「しっかし、あんたすごい背中に悩んでます。ってかいてあるよ。」と由良はにやけながら言った。「なっ!そんな事…!」と言った私の反応など気にせず、由良は「ほら!ちゃんと前向かないとこけるぞ~!」と言ってきた。「無視するなぁ~!」と、怒りかけた。その時…!「わっ…!」と歩はバランスを崩し、後ろに向かって倒れていきました。倒れる…!歩は思わず目をつむりました。といきなり倒れかけていた体が動きを止めました。「?あれ…」ふと、上を見上げると、そこには、緑都がいました。「緑都!」「おう。大丈夫か?」「うん。」「良かった。しっかしお前はほんとドジだな。」と緑都は笑いました。歩は顔を赤らめ、「大きなお世話よっ!」と言うと、「そうか。」と緑都は笑いながら歩いていきました。「歩!大丈夫だった?!」と由良が駆け寄って来ました。「うん。」「良かった!じゃあ、早く学校いこ?遅刻しちゃう!」歩たちは、急いで学校に向かった。
放課後…。
「由良。」と歩は真面目な表情で由良に話しかけました。「ん?」「うち、ちゃんと卒業式にするよ。告白。」「やっとやる気になった?」「うん。しないとほんとに後悔する。」歩の言葉に、由良は「わかった。私もあんたに協力する。」と嬉しそうに言いました。そんな話をしている時、龍の姿が見えた。歩は龍のことを呼ぶと、由良に別れを言い。家に向かった。
由良はちゃんとうちとの約束を守ってくれた。次はうちの番だ。それに…。うちはやっぱり緑都のことを想い続ける。だったら、告白して後悔しないようにしなくちゃ。
卒業式、当日…
うちは、由良が作ってくれた、緑都と二人になれた時、告白した。「緑都、ずっと前から好きでした。その…付き合ってください。」緑都は「ごめん。」と申し訳なさそうに言った。結果はダメだった。けど、すっきりした。
卒業式では、由良と二人で泣きあった。
これからの人生、こういうことを繰り返して、成功したり、泣いたり、失敗したり……すべての思い出を『喜怒哀楽』という箱に詰めていく。命尽きるまでいっぱいにならない、無限の思い出箱。喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。全てが詰まった『喜怒哀楽』