ひき肉@シドニー
【おうちでごはん】企画参戦させて頂きました。
出来ればひっそりしていたいです。起承転結なくてすみません。。。ただの思い出話だったりします。
作中に出てくる話は作者が実際留学中に見聞きした話です。今現在とは異なっている部分も多々あると思われますが、何せ何年も前の話なのでサラッと流してやってください。
★10/30 22:30 致命的に調味料を入れ忘れていたので足しました。話の流れは変わりません。
いくつか、条件があるの。
冷凍保存できて、パスタでも米でもパンでも、とりあえず炭水化物に合うおかず。
ランチで学校にも持っていくから、汁物はNG。
更には生まれてこの方27年間実家暮らしだった私のお料理スキルでも何とかなるモノ。
そして次が最大の条件。
出来るだけ、出来るだけ安く上げること!
つらつら考えながら、かごを提げて駅直結のスーパーをうろうろするのが放課後の日課。
人間が人生のうちで一番多く足を運ぶのがスーパー(食料品店)だって何かで聞いたことがあるけれど、あれホントだわ。
ここオーストラリアでは、何でもかんでも一つ一つがデカイ。
30歳を前に一念発起してやってきたこの国(ていうか大陸?)は、全てのものがデフォルトで日本の1.2倍のサイズになる。特に食べ物とか、人とか、食べ物とか。
例えば日本でパスタ一人前といえばだいたい100gくらいでしょう?でもここだと一人前はだいたい120gくらいあるらしいんだよね。ジャパレスでシェフをしてるシェアハウスのオーナーが言ってたからホントだよ。ステーキのメニューでおっきいのだと1kgとかあるしね。誰が食うんだよ、あれ。
あ、こっちでは日本食レストランのことをジャパレスっていうの。ジャパニーズレストランの略なんだけど。初めて聞いた時にはなんだそりゃ!?だったけど、しばらくすると全く違和感無くなるんだから慣れって恐ろしいもんだ。
まぁそんな感じで、どこで一人前を頼んでも日本で言うところの「大盛りサイズ」が出てくるわけ。そして日本人て子供の頃から「ご飯は残さず食べなさい」って言われて育つから、デフォルトで大盛りのこっちのご飯も何とか完食しようと頑張っちゃうのよ。
真面目は日本人の美徳だが。
だがしかし。時間通りに待ち合わせに来るのは日本人とドイツ人だけだって言ってたの、何人だっけ?
今はそれはいいよ。
ただでさえいろいろハイカロリーなのに、更に胃袋おっきくしちゃったらそりゃ太るわよ。
こないだ知り合った女の子は半年で+12kgって言ってたな。すげー。洒落にならん。
ペットボトルは500mlじゃなくて600ml。ミルクはポリタンクで2L。お肉のパックは単位がkg。
もちろん小さいサイズも売ってはいる。けれど全てのアイテムで共通しているのは、この国なぜか少量のものより大きいパックのほうが断然安い。安いと言うか、少量小分けのものが異様に割高なのだ。日本の比じゃないよ、マジで。
これオージークオリティその1。
これはなぜかと言うと、大きいほうが人の手がかかっていないから、なんだとか。
人件費が高いこの国では人の手がかかればかかるほど物の値段が上がる。だから外食はもちろん出来合いのお惣菜なんかもあるけど、日本のそれらと比べれば全体的に割高だ(さらに味の保障は無い)。だから最低賃金も高いらしいんだけど、まぁそれは今はいいや。ここでのあたしは学生だし。
けれど言い換えれば、人の手がかからない食材はそう高くない。モノによっては日本なんかより大分安い。だから材料買って自炊する。貧乏留学生の基本的節約術だ。
日本にいてもそうなのかもしれないけれど日本では就職してからも延々パラサイトシングルだったから、実は日本での食品の値段なんてちゃんと把握してない。だから食品の相場ってのはあたしにとっちゃここが基本。日本に帰ったらシドニーの値段と比べて日本はコレが高いとか安いとか思ったりするんだろうな。
普通逆だろうけど。
あぁ、また話が逸れた。
はい、現在地は大手スーパーです。日本で言うイオンとかヨーカドーとかそんなとこ。
そして今あたしのキッチンにあるのは、オニオンとキャロットと、…セロリもまだあるな。
………またアレか。我ながら美味しいから良いけどさ。レパートリー増やしたいなぁ。同じものしか買わないから、出来上がりも同じになっちゃうのよね。かと言って意味不明な食材に手を出すには勇気とお金が足りない。主にお金が。
まぁしょうがない。
とりあえずいつものミートコーナーに向かい、お目当てのビーフミンスのパックを手に取る。
えぇ、例によって1kgです。でかい方が安い。あ、ミンスって日本で言うところのミンチ、ひき肉ね。デカっっ。と思うでしょ?それがさ、周りにあるものが揃ってデカいから、あんま感じないんだよねぇ。これがポンと日本のスーパーにあったら違和感半端ないんだろうけど。
でもさ、5ドル/kgだよ?牛さんのどこの肉かなんて考えないほうがいいんだろうけど、それでもビーフ100%よ?日本じゃ有り得んね。さすがオージービーフの国。当然と言うか何と言うか、お肉の中では牛肉が一番安いの。代わりに鳥とか豚とか、高いんだよねぇ…。鳥のささ身なんてびっくりするよ?何でも贅沢税がかかってるとかで、ちっちゃいパックで20ドル近くするんだから。オージー的には、鳥のささ身なんて筋肉付けたいスポーツマンしか食べないでしょ?ってなもんらしい。
この国の皆様は赤身の牛肉があればいいんだね。そうだよね、うん。
まぁともあれ貧乏学生には贅沢なビーフ100%でミートソースを作ろうと思います。あ、トマト缶も買わなきゃ。
「ただいまー」
日本のそれより大分薄っぺらい袋に買ったものを詰めて帰ると、まきちゃんが帰ってきてた。今のシェアハウスで私と相部屋の子。二つ年上だけど、とっても優しくて楽しい子だ。
「まきちゃんご飯どうするー?」
「あたし賄い持って帰ってきたからそれ食べるよ~」
まきちゃんは回転寿司でバイトしていて、もらってくる賄いは常にお寿司だ。まぁこっちのお寿司だから高が知れてるんだけど。
他の外国は行った事がほとんど無いけれど、お寿司に限らず外国の日本食って不思議。ハンドロール(手巻き寿司ね)に照り焼きチキンとかから揚げとか巻いてあるし、おそばやラーメンに天ぷらじゃなくてとんかつが乗っかってたりする。から揚げラーメンは人気メニューらしい。謎よね。
なのに、どこ探しても照り焼きバーガーはないのよ。…なぜだ。
まぁそれはいいとして。
「ゆうちゃんは?」
「ミートソース作る~。明日のお弁当もあるし」
大分慣れたもので、そうこう言いながらキッチンで1kgのミンスを10に分割して使わない分はラップに包み、冷凍庫に放り込む。戸棚の自分の陣地を覗くと、あ、ウォルナッツあるじゃん!コレも入れよっと。歯ごたえがいい感じになるんだよ。
そしてオニオンとキャロットを丸々一個ずつみじん切り…ていうか極小賽の目切りにして、ナッツも粗く切った。よし、準備完了。
大き目のフライパンをコンロにどんと置き、火を点ける…為にチャッカマン準備。インフラがあまりよろしくないオーストラリア、その辺のシェアハウスでチャッカマンなしで火が点くのは稀です。
はい、オージークオリティその2。
ウチは幸いなことにガスは出るから、チャッカマンがあれば普通に料理は出来る。インスペクション(シェアハウス見学)行った中にはガスが使えない家もあったし、自炊できるのはありがたいことだ。
最初はボッて点く火におっかなびっくりだったけど、毎日やってりゃ慣れたもの。…この国に来てどんどん逞しくなっていってる気がするわ、自分でも。
まぁフライパンが温まったらひとまず肉投下。だいたい400gくらいかな。油なんて引かないよ、炒めてれば油出てくるからね。そして次々オニオンとキャロットも入れる。ガシガシ炒めりゃ何とかなる。うん。
そうして大体火が通ったらトマト缶丸々一つ投下。何でも基本単位は「丸々一個」です。だってちょっとだけ残してもしょうがないじゃん?
そしてコンソメキューブ2個も忘れちゃいけない。出汁って大事。水は入れないで代わりに日本食の基本、酒、みりん、しょうゆをこれまた目分量で投下。ダイレクトに大体二回しくらい?甘めが好きだからみりん大目に入れるんだよね。あ、あと一週間で賞味期限が切れるみりんが売ってるのもシドニーで初めて見たわ。…調味料で賞味期限切れって。
そして最後にハインツのケチャップ投下!カゴメのは高くて買えません。でもハインツ万歳。マヨネーズはキューピーが世界一だと日本を出て知りました。
ここシドニーでは日本の食材が大体3倍の値段するの。雪見大福が3.5ドルしてたもん。日本に帰ったらすぐ食べるものリストに入ってるもんね。
いかん、また脱線した。
ミートソースなのにしょうゆって、和風でしょ?落ち着くよ、日本食って。
ほんと日本食って酒とみりんとしょうゆがあれば何でもおいしいのよ。あ、味噌も要るから何でもは言い過ぎか。
そうは言ってもランチタイムにタイとか韓国の子たちに、それどうやって作るの?って聞かれて説明しても大体この3つしか出てこない。
「ゆうのランチはいつ聞いてもしょうゆとみりんばっかだね」
そう言ってタイの子に笑われた。お宅らだってナンプラーとパクチーばっかじゃんって言い返したらexactly!って笑ってたけど。
さて煮詰めてる間にパスタにしようか、と思ったらパスタ切れてるじゃん!はぁ。相変わらずの1kgだから、色々いっぺんに買って来れないのよね…重いし。明日買うか。
今日は冷凍ご飯あるからそれにしよ。ぶっちゃけ炭水化物は何でも良い。パスタでも米でも、パンでも。特製ミートソースは和洋折衷だから、何にでも合うのだ。
シャワーを浴びてきたまきちゃんとテーブルを囲む。まきちゃんはテイカウェイコンテナのお寿司、あたしはミートソースご飯。
ルームメイトでも、生活は別だからもちろんご飯も別。最初は変な感じがしたけれど、シェアで暮らしていれば当然のことだ。
今日あった出来事を肴にそれぞれの夕食。
ある意味毎日がサバイバルな人生初の海外生活。びっくりだらけの毎日だ、話なんて尽きることがない。ここは日本じゃないから当然日本の常識なんて通じない。ここではこちらが外国人なんだから。
それを受け入れられたら、人間大抵のことは笑って流せるようになる気がする。
ただでさえ沸点は高いほうだったけど、こっちに来て更に上がった気がするわ。…って日本の友達に話したら、日本社会に復帰できるかどうか危ぶまれました。
まぁ、たぶん帰るけどね。
日本では体験できないであろうこと。再現できないであろう味。
ここで感じたことも、見たことも、多分一生忘れないんだろう。
山内 詠様の企画に便乗させていただきました。
エッセイに近いんでしょうか。ここで書いたミートソースは今でも作ります。日本では合挽き肉ですが。。。味が全然違うんですよねぇ、ホントに。
書いててオペラハウスが恋しくなりました。シドニーの食事事情、また気が乗れば書くかもしれません。。。その前に連載なんとかしろって感じですね、ハイ。