1話 人嫌いの少女
とても短いです。
主人公視点になります。
この世界には勇者という最悪な職業の生き物がいる。
奴等は、何の罪もない魔物を虐殺し、正義を語ることで自己満足する。
そればかりか、死んだ魔物の爪や牙、奴等曰く「素材」を剥ぎ取り、意気揚々と帰っていく。
一体人間の法律とやらに当てはめたらいくつの罪に問われるのだろうか。
それにも関わらず、彼らは罪に問われるどころか、むしろ「英雄」とか呼ばれてチヤホヤされている。さらに、現在では「くろーん」とか言って「牛や豚の良素材を保存する」という研究が進められている。全く冗談ではない。何様のつもりだろうか。人間というのは最低の生き物だ。
この前は、人間に住処を追われた魔物が、子供のために餌を探そうと森に入ったら、その場にいた勇者に射殺された。
その勇者はインタビューに対して「村に降りてきたら危険だと思った」とかほざいていやがる。国も国で、そいつに感謝状とか贈ってるし、とにかく最悪だ。
残された子供達はどうなる?
まだお母さんに甘えたかったかも知れない。
いっぱい甘えて、いっぱい会話して、時には怒られながらも、そこから多くのもの得て成長していくのだ。
お母さんもお母さんで、子育てに嫌気がさしながらも、救われているのは自分の方だとやがて気付くのだ。
そうしてお互いに支え合いながら暮らし、いつかお父さんに出会って「大きくなったな」と頭を撫でて貰うのだ。
……あ、涙出てきた
そんな温かい彼らの未来を、その勇者は壊した。
それどころか、「勇者の品格」とかいうタイトルで本まで出版しやがった。
なにが『大ベストセラー!』だ、ふざけるな!
反省のカケラもないではないか。
他の人間も単純で、それからというもの、「勇者」という職業は大人気になった。
「お前、どこの高校行くの?」
「ん、俺か? 『勇者育成専門高等学校』」
「マジで!? お前、あそこ受かったのかよ!」
「まあ~ 倍率は高かったんだけどね~ 合格しちまった。ハッハッハ!」
「スゲェな! 今日は俺が奢るから、何かあったら助けてくれよ!」
「いいぜ! 俺に任せろ!!」
「タナカさん、どこの大学なんですか?」
「ああ、僕? 僕は『勇者大学』に通ってるんだ」
「キャ~!! ステキ~!! あの『勇大』の生徒さんなんですか!?」
「ああ、あのP教授にも、目をつけて貰っている、曰ばエリートかな(フッ)」
「私、憧れちゃいますぅぅぅ~~~ お付き合いして貰えませんか?」
「ああ、いいよ(チュッ)」
「キャー///////」
などという会話が、至るところで行われている。
大体、そのネーミングセンスは何とかならないのだろうか?
勇者育成専門高等学校?
勇者大学? 勇大?
…………ぷっ
最悪だ
何もかも最低だ
『俺が奢る』だと?
そんなゴミクズに何を奢る必要がある。
『曰ばエリートかな(フッ)』だと?
フッ!!!!
人嫌いです。
ホントに嫌いです。
そんなワケで、私は旅をしています。