第6話:お兄ちゃんの「剣」、マジで終わってる!?
お姉ちゃんの魔法がアップデートされて数日。 今度は、魔法騎士団の訓練に行っていた兄・アレンが帰ってきた。
……けど、帰ってきた瞬間から部屋に引きこもって、出てこない。 パパも「アレンは努力家だが、剣の筋に伸び悩みを感じているようだ」なんて、苦渋の表情を浮かべている。
私はハイハイで(最近、だいぶスピード上がってきたんだよね)、アレンの部屋の前に到着。 ドアの隙間から中を覗いて――即座に【鑑定】発動。
【名前:アレン・アークライト】 【状態:重度のスランプ・剣への執着】 【魔力適性:槍術(潜在A)、炎魔法(潜在S)】 【武器適性:剣(潜在C)】
……はぁぁ!? ちょっと待って、これマジ? お兄ちゃん、剣の才能はぶっちゃけ「並」以下じゃん。 なのに、槍はAで、炎魔法にいたってはSランク!?
アークライト家が「剣と精霊魔法」の家系だからって、向いてない剣を一生懸命振って、一番強い「炎」を放置してるとか……。 マジで、努力のコスパが悪すぎて見てるこっちが辛いんだけど。
部屋の中では、アレンがボロボロの木剣を握って、床に膝をついていた。 その横には、訓練で使う予定だったのか、長い「槍の柄」が転がっている。
「……父様のような鋭い一撃が、どうしても出せない。俺は、アークライトの面欲しだ……」
……あー、もう! 湿っぽい! そんなに自分を責めなくていいって。あんた、別の才能が爆発してんだから。 私は部屋の中に突進した。 そして、アレンが大事そうに握っている「木剣」を、短い手足で力いっぱい蹴っ飛ばした。
「あぅ! ぶー!」
「……レナ? なんでここに……。あ、こら、剣を蹴っちゃダメだ」
アレンが剣を拾おうとするのを邪魔するように、私は転がっていた「長い柄」の上にどっしり座り込んでやった。 「あぅー! ぱぁー!」
「……それをどいてほしいのか? 仕方ないな……」
アレンが私を抱き上げようとして、ついでに私が座っていた「柄」を右手で掴んだ。 その瞬間だった。
剣を握っている時とは明らかに違う、しっくりとした感覚が彼の手に宿ったのが、見ていて分かった。 「……? なんだ、この感覚」
アレンは無意識に、剣を置いてその柄を握り直した。 鑑定で見える彼の魔力が、剣の時とは比べ物にならないほどスムーズに、その長い柄へと流れ込んでいく。 アレンがその柄を軽く一振りすると、先端に彼自身の魔力が自然と集まり、かすかに赤い火花が散った。
「……軽い。剣よりもずっと、自分の体の一部みたいだ。それに、魔力が……勝手に出口を探して、ここに集まってくる……?」
アレンの目が、驚きから確信へと変わっていく。 そうだよ、お兄ちゃん! あんたの手は、短い剣でチマチマ斬るより、長い得物で豪快に炎をぶち撒ける方が合ってんだって。 「……レナ。お前、もしかして俺がこれに向いていると分かって……? いや、まさかな。はは、赤ん坊に励まされるなんて、俺も末期か」
アレンは自嘲気味に笑ったけど、その瞳にはさっきまでの絶望はなかった。 彼はもう一度、その柄を力強く握りしめる。 あぅー! ま、きっかけなんて何でもいいっしょ。 これでアークライト家の戦力、また爆上がりしちゃったね。
お姉ちゃんが「太陽」で、お兄ちゃんが「炎の槍」。 ……マジで、私の将来の安泰度がハンパないんですけど!




