第4話:お姉ちゃん、プロデュース開始!
【鑑定の儀】から数日。 アークライト家のお屋敷は、なんだかどんよりした空気に包まれていた。
無理もない。 パパがあんなに期待してた私が「精霊魔法適性ナシ」の無属性だったんだもん。 パパはあれから、書斎にこもって古い文献を読み漁ってる。たぶん、鑑定の間違いを探そうとしてるんだろうな……。
でも、その間もお姉ちゃんのフェリスは、一人で庭で練習を続けてた。 「……やっぱり、私じゃダメなのかな。精霊さんの声、あんまり聞こえないや」
ポツリとこぼれたお姉ちゃんの独り言。 練習用の標的に向けて放たれた火の玉は、パパが放つような鋭い弾丸じゃなくて、ボフッていう頼りない煙を上げて消えちゃった。
……あー、もう! マジで見てらんない! お姉ちゃん、それ「飛ばそう」とするからダメなんだってば。
私は乳母車の中から、必死に手を伸ばした。 「あぅ! あぅー!」
「レナ? どうしたの、お外に出たいの?」
お姉ちゃんが私を抱き上げてくれる。……よし、チャンス。 私はお姉ちゃんの腕の中で、彼女の魔力の流れを【鑑定】でじっくり見つめた。
【現状:魔力を無理に『形(弾丸)』に固めようとして、精霊の自由な動きを邪魔している。お姉ちゃんの魔力は、固めるんじゃなくて『広げる』ほうが、本来の力を発揮できる】
なるほどね。パパたちの「鋭い攻撃」っていう伝統に縛られてるのが、お姉ちゃんには一番合ってないわけだ。 その時、パパが疲れ切った顔で庭に現れた。
「……フェリス、まだやっているのか。根気は認めるが、伝統的な術式がその程度では、やはりアークライトの看板を背負わせるには……」
パパの言葉に、お姉ちゃんがビクッと肩を揺らす。 今だ! 私はお姉ちゃんの胸元で、精一杯の「あぅー!」を叫んだ。 そして、お姉ちゃんの魔力が溜まっている右手を、私の小さな手でグイッと横になぎ払うように動かした。
「あー! ぱぁー!」
「えっ、レナ? ――あわわっ!?」
私の動きにつられて、お姉ちゃんが思わず溜めていた魔力を「横」に放出した。 すると――。
ボフッなんて音じゃない。 庭一帯に、キラキラした光の粉がふわぁぁっと広がったかと思うと、一瞬で辺りの気温が跳ね上がった。 それは弾丸じゃなくて、温かな、でも圧倒的な熱量を持った「光の波」だった。
「…………なんだ、今の魔法は」
パパが目を見開いて固まった。 お姉ちゃん自身も、自分の手を見つめて固まってる。
「攻撃力は低い……だが、この範囲、そして精霊たちの密度の高さ。……フェリス、お前、今何を意識した?」
「……えっと、レナが手を動かしたから、つい……。固めるんじゃなくて、広げるような……」
パパは無言で、お姉ちゃんと、その腕の中にいる私を交互に見た。 そうだよ、パパ。 お姉ちゃんはパパと同じ「剣」にはなれないかもしれない。 でも、戦場全体を包み込むような「太陽」にはなれるんだって!
「……私は、自分のやり方を押し付けすぎていたのかもしれないな。フェリス。お前には、私とは違う精霊との向き合い方があるようだ」
パパの声に、さっきまでのトゲが消えていた。 パパはお姉ちゃんの頭を優しく撫でて、少しだけ笑った。
「明日、新しい家庭教師を呼ぼう。伝統に縛られない、精霊術の研究者を。……レナ、お前の『直感』には、何か教えられることが多いな」
パパが私の鼻をツンと突く。 あぅ! マジでそれ正解! お姉ちゃんが覚醒すれば、アークライト家は安泰だし、私はその横でぬくぬく末っ子ライフを満喫できる。
崖っぷちギャルのプロデュース第1弾、大成功っしょ!




