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『崖っぷちギャル、赤子に転生! 〜鑑定スキルで家族を最強プロデュースして、自分は魔法で天下取る〜』  作者: 沼口ちるの


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第21話:最高戦力の壁は、絶望的に高い

「……ふふ、面白かったわよ、レオ。エドワード様たちをあそこまで手玉に取るなんて」


 膝をつくエース三人組の横を通り、フェリス姉様がゆっくりと前に出た。  その瞬間、演習場の空気がピリリと引き締まる。レオの「多重属性」が作り出していた乱雑な魔力が、お姉様の一歩だけで静まり返った。


「でも、レオ。本当の『上』には、手数は通用しないの。……少しだけ、付き合ってあげる」


「……っ、お願いします、お姉様!」


 レオが気合を入れ直し、さっきと同じように「火・風・土」の三重複合弾幕を放った。  並の魔導師なら即死する密度。でも、フェリス姉様は杖すら構えない。


「『聖域・拒絶』」


 パリン、と薄い光の膜が張られた。  レオの放った魔法は、その膜に触れた瞬間にまるで雪が溶けるように霧散した。


「え……!? 全部、消された……?」


「属性を重ねれば重ねるほど、それぞれの魔力は薄まるわ。純度100%の聖属性で押し潰せば、形を維持することすらできないのよ」


 レオは焦って今度は剣と槍で肉薄する。  でも、後ろで見守っていたアレン兄様が、瞬きする間にレオの背後を取っていた。


「……遅いな、レオ」


 槍の柄で、レオの背中をトンと突く。それだけでレオは、巨大な大槌で叩かれたような衝撃を受けて地面を転がった。   「……っ、がはっ……!? 見え、なかった……」


「お前のハメ技は『相手に思考させること』を前提にしてる。だが、俺たちの速度は思考を追い越す。小細工を弄する暇があるなら、その全属性Aを一つに束ねて、俺の槍を止めてみろ」


 アレン兄様の槍先から漏れる、圧倒的な熱量。  レオがどれだけ属性を組み替えても、その「純粋な暴力」を押し返すだけの地力が足りない。  これが、10代を戦場で過ごし、国を背負ってきた「本物」の重み。


 レオは泥だらけになりながら、初めて悔しそうに歯を食いしばった。


「……あーあ。完敗だね、レオ」


 私はマドレーヌを飲み込み、フラフラのレオに駆け寄って泥を払ってあげた。


「お姉ちゃん……。僕の魔法、全然効かなかった……。全部、無駄だったの?」


「んなわけないじゃん。相手が悪すぎただけ。あんたの戦術は『最適解』だけど、あの二人は『ゴリ押しで正解を書き換えるタイプ』なんだから。……でも、これで分かったでしょ? 今のあんたじゃ、あの二人には100回やっても勝てないよ」


 レオは小さく頷いた。  エース三人を圧倒して少し天狗になりかけていた鼻が、実の兄姉によって綺麗にへし折られたわけだ。


 地面に転がったレオを見つめながら、アレン兄様が槍を収めた。 「……レナ。こいつの技術は確かに凄いが、決定的な『重み』が足りない。Aランクをいくら束ねても、Sの極致……ましてや俺たちの領域には届かないぞ」


 兄様の言葉に、フェリス姉様も静かに頷く。二人が見せたのは、小手先の技術を無に帰す「圧倒的な地力」。


「……分かってるって。レオ、悔しい?」 「……うん。お姉様には触れることすらできなかった。僕、もっと強くならなきゃ」


 泥だらけで立ち上がるレオ。その瞳には、敗北を知った者だけが持つ鋭い光が宿っていた。


「……おやおや、手厳しいですね。救国の英雄ともあろうお方が、たかが6歳の子供相手にそこまで本気にならなくても」


 演習場の影から、冷めた声と共に一人の女性が現れた。  かつての特別小等部担任、セルン・フィアットだ。


 8年前、レナが地下遺構で「無属性」の真価を発揮したあの日。彼女はその異常な魔力残滓を観測し、レナの正体が「ただの無能」ではないことを確信した。  結果、彼女はレナを研究(観察)したいがために、レナの中等部進学に合わせて教師を辞職。アークライト家に「レナ様の家庭教師兼、身の回りの管理役」として、パパに自分を売り込んで入り込んだのだ。


「セルンさん、また隠れて記録取ってたでしょ。趣味悪いよ」 「レナ様の教育理論をデータ化するのは私のライフワークですので。……さて、アレン様。レオ様の『重み』不足……それ、解決策はもうレナ様の中にあるようですよ?」


 セルンは眼鏡をクイと押し上げ、レオの魂の深層……レナが「オメガ(終焉)」と名付けたバグに視線を送った。


「……セルン、お前。教師を辞めてまでうちの妹にベッタリだと思えば、今度はレオか」  アレン兄様が呆れたように溜息をつく。


「当然です。この姉弟は、私の魔法理論を根底から覆す『未知』そのものですから」


 レナがプロデューサーなら、セルンはそれを記録し、世間から隠蔽(あるいは捏造)する「共犯者」。この8年、レナが「無能」のフリをして中退までこぎつけられたのも、彼女の情報操作があったからこそ。


「……レオ。セルンさんの言う通り、遊びは終わり。全属性Aのハメ技で勝てない相手には、もう『アレ』を地力にするしかない」


 私はレオの肩に手を置いた。


「属性を重ねるんじゃない。全部の属性を、自分の肉体という一点で『終焉オメガ』させな。あんたの体そのものを、魔法法則が通用しない『虚無の塊』に変えるんだよ」


 セルンが狂喜したように記録機を叩き始める。  兄姉が「地力」で圧倒するなら、レオはその「地力」という概念そのものを消去する領域へ。


 15歳の姉と、6歳の弟。  そしてそれを支える最強の兄姉と、狂気の研究者。    アークライト家の裏庭で、世界を再定義するような地獄の特訓が、再び幕を開けた。

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