第20話:全適性Aの真骨頂、ハメ技のレオ
「レオ、いい? 終焉魔法は禁止。……今日は『全属性A』の正しい無駄遣いを見せてあげな」
私の合図で、アークライト家の広大な演習場に、レオと「最強連合軍」が向かい合った。 対戦相手は、エドワード、カイト、ミーナの三人。アレン兄様とフェリス姉様は、流石に「危なくなったら止める役」として見物だ。
「……ふん。いくらレナ様の弟とはいえ、6歳の子供相手に遅れは取らんよ。なあ、お二人さん」 エドワードが光の剣を抜き、余裕の笑みを浮かべる。
「……手加減、難しい」 「怪我させちゃったらごめんなさいね、レオ君」
三人が同時に動こうとした、その瞬間だった。
「——全部、いっぺんに出すね」
レオが短く呟くと、彼の周囲に「火球」「氷柱」「岩弾」「真空刃」「光の矢」が同時に出現した。それも、一発二発じゃない。数十単位の弾幕だ。
「なっ……詠唱なしで、全属性を同時並列だと!?」 エドワードが驚愕する間もなく、レオはさらに地面を蹴る。
右手には炎を纏わせた剣、左手には風を収束させた短槍。 魔法の弾幕を盾にしながら、本人が目にも止まらぬ速さで突っ込んでくる。
「くっ、『屈折』……! 全部弾いて——」 「無駄だよ。土魔法で足場を揺らして、風魔法で光を歪ませたから」
レオの言葉通り、エドワードの光の盾は、レオが事前に仕掛けた「空気の屈折率操作」で明後日の方向に逸らされた。 そこへ、カイトの影縫いを光魔法で焼き払い、ミーナの毒霧を風魔法でそっくりそのまま三人に押し返す。
「ちょ、ちょっと! 自分の毒が自分に来るなんて聞いてないわよ!」 「……重力が、打ち消されて……!? こいつ、全部の魔法をカウンタースペルでぶつけてやがる……!」
三人は絶句した。 レオの戦い方は、一撃の威力こそ彼らSランクに劣るが、「相手がやりたいことを全て先読みし、反対の属性を最適なタイミングで、かつ同時に叩き込む」という、精密機械のようなハメ技。
全属性Aだからこそできる、一切の死角がない波状攻撃。
「……お兄ちゃん、お姉ちゃん。見てた? これがレオの『通常運転』。属性魔法って、こうやって重ねて使うのが一番コスパいいでしょ?」
私はマドレーヌを齧りながら、ドヤ顔で兄姉を見上げる。 アレン兄様は冷や汗を拭い、フェリス姉様は引きつった笑顔で固まっていた。
「……レナ。お前、6歳児に『属性の同時並列演算』なんて化け物じみた技術を教えたのか? 普通の魔術師なら脳が焼き切れるぞ」
「えー、レオならできるもん。ね、レオ?」
「うん! 姉様が『ゲーム感覚でやってごらん』って言うから!」 無邪気に笑いながら、エドワードの眉間に寸止めで剣を突きつけるレオ。
エース三人は、泥だらけで膝をついた。 一撃も食らっていないのに、精神的な疲労でボロボロだ。
「……参った。……レナ様。貴女は、一体何を育てているんですか……」 エドワードの嘆きが演習場に響く。
「決まってるじゃん。私の、自慢の弟。……さあ、次はアレンお兄ちゃんの番だよ? 国家最高戦力なら、レオの10連コンボくらい、余裕でしょ?」
「……勘弁してくれ、レナ。俺まで公開処刑されるのは御免だぞ」
最強の兄すら逃げ腰にさせる、6歳の全能少年。 アークライト家の「教育」が、本格的に世界の均衡を壊し始めた瞬間だった。




