第19話:アークライト家、魔王城より密度高いんですけど
エドワードたちが門前で私にビビり倒していた、その時だった。
「——おいおい。俺の可愛い妹に、妙なナンパでも仕掛けてんのか? エドワード」
空を裂くような熱風と共に、紅蓮の槍を担いだアレン兄様が着地した。 さらに、周囲の空間がキラキラと精霊の光に包まれたかと思うと、フェリス姉様が優雅に姿を現す。
「あら、エドワード様にカイト様、ミーナ様も。学院時代の同級生が揃って、うちのレナに何の用かしら? ……もしレナを困らせるようなら、私が『聖域』の外へお連れしますけれど?」
お姉ちゃんの笑顔がマジで怖い。背後の精霊たちが「やっちゃえ!」みたいな顔で武装してる。
「ア、アレン殿! フェリス殿! 誤解だ、我々はただレナ様に挨拶を……!」 『閃光の貴公子』の異名を持つエドワードが、完全に腰が引けている。
国家最高戦力の二人。 各組織のエース三人。 そして、その中心にいる私とレオ。
【鑑定眼】で見ると、この場に渦巻く魔力の総量だけで、隣国の一つや二つ、余裕で地図から消せるレベルなんですけど。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、お帰り。……タイミング良すぎ。もしかして、レオの魔力爆発、嗅ぎつけて来たの?」
私の一言に、アレン兄様の目つきが変わった。 彼はレオの前に膝をつき、その小さな体から溢れ出す「異質な気配」をじっと見つめる。
「……ああ。王都にいても肌がピリついた。レオ、お前……一体何を教わった?」
「えへへ、お兄ちゃんお帰り! 姉様にね、全部を『混ぜて消す』やり方を教わったんだ。ちょっとだけ、見せてあげようか?」
レオが素直に「終焉魔法」を練ろうとした瞬間、エドワードたち三人が「ヒッ」と声を上げて数メートル後ずさり、アレン兄様とフェリス姉様も本能的に武器に手をかけた。
「待て待てレオ! ここで出したら屋敷が消えるからダメだってば!」 私は慌ててレオの魔力を【無属性SSS】で包み込み、強制シャットダウンさせる。
「……レナ。お前、なんてものを作り出してるんだ……」 アレン兄様が、引きつった笑いを浮かべる。
「お兄ちゃん、失礼なこと言わないでよ。私はただ、レオが自分を守れるように『コツ』を教えただけ。……ねえ、エドワードたちも、レオの稽古相手になりたくて来たんでしょ? ちょうどいいじゃん、みんなでレオを揉んであげてよ」
私の言葉に、エース五人の顔が真っ青になる。 かつてレナに「分からされた」彼らは知っている。この姉が「コツ」と言った時、それは物理法則が死ぬ合図だということを。
「……レナ姉様。僕、あのお兄ちゃんたちと戦ってもいいの?」 キラキラした目で「獲物」を見るレオ。
「いいよぉ。レオの『終焉』にどこまで耐えられるか、お姉ちゃんが審判してあげる」
かくして、アークライト家の裏庭で、 【国家最高戦力・精鋭エース連合軍】vs【最強の姉に育てられた6歳のバケモノ】 という、世界が終わってもおかしくないレベルの「兄弟喧嘩」が始まることになった。
……あー、これ。観戦する私とセルンさん用に、マドレーヌもっと用意しなきゃ足りないわ。




