第2話:パパの期待が重すぎてマジぴえん
転生してから数ヶ月。 私の生活は、一言で言えば「超VIPなニート」だ。
アークライト家。 この家は代々、精霊魔法使いを輩出してきた名門中の名門らしい。 今日も、当主である父・バルトが、私のベビーベッドの横で真剣な眼差しを向けている。
「いいかい、レナ。我が家系は精霊に愛された血筋だ。この父も、血の滲むような修行の末に、ようやく一国の守護を任されるまでの高みに到達した。だが……この先は、選ばれた才能のみが許される神域。私は今、その壁の前に立っている」
バルトパパの大きな手が、私の小さな手を包み込む。 その掌は硬く、数え切れないほどの鍛錬の跡があった。……この人、マジでガチな人だ。
「だが、お前からは感じるんだ……かつてないほどに清らかで、激しい魔力の胎動を。お前こそが、アークライト家をさらなる高みへ導く希望なんだ。姉のフェリスも筋は良いが、私の壁を越えるには、まだ何かが足りない……」
……あー、重い。 パパの期待、ギガ超えてテラレベルで重いんだけど。 それだけこの人がこの家系と魔法に人生を賭けてるのが伝わってくるから、余計に。
私はそっと【鑑定眼】を発動させた。
【名前:バルト・アークライト(父)】 【状態:期待・静かなる覚悟】 【魔力適性:精霊魔法(潜在A/現在A)】 【分析:アークライト家伝統の術式を完璧にマスターした熟練者。その技術は完成されており、まさに正統派の頂点。……が、完成されすぎていて、ここから先(Sランク)へ進むための『飛躍』が欠けている】
なるほどね。パパが強いのは間違いない。 鑑定で見ても数値がパンパンだもん。ただ、パパ本人が言ってる「壁」っていうのは、この家系の「正解」を突き詰めすぎたゆえの行き止まりなんだろうな。
バルトパパは私の視線を「やる気に満ちた瞳」と受け取ったのか、満足げに頷いて部屋を出ていった。 入れ替わりに入ってきたのは、お姉ちゃんのフェリスだ。
「レナ、パパまた難しい話してた? ごめんね、私の才能がパパの期待に届かないから、レナに負担がいっちゃうんだよね……」
お姉ちゃんは、しょんぼりと眉を下げて笑った。 バルトパパはお姉ちゃんのことを「平均よりは上」程度にしか見ていない。 だから、お姉ちゃん自身も「自分はレナの繋ぎ」だと思い込んでる。
……でも、私の目(鑑定)には、全然違う景色が見えてるんだよね。
私は、お姉ちゃんの指をぎゅっと握った。 鑑定で見えたお姉ちゃんのステータスを、もう一度読み返す。
【フェリス:潜在能力S/現在C】
……お姉ちゃん、あんたポテンシャルだけならパパすら余裕で超えてるよ。 パパが「磨き上げられた一振りの剣」だとしたら、お姉ちゃんは「どう化けるか分からない無限の原石」。
今はその力が巨大すぎて、従来の「アークライト家のやり方」に無理やり当てはめようとしてるから、逆に上手くいってないだけ。
「あぅ、あぅー!(お姉ちゃん、自分を安売りしちゃダメだって!)」
「ふふ、レナは優しいね。お姉ちゃん、頑張るからね」
お姉ちゃんは私の頬にキスをして、魔法の練習に向かった。 おっけー、決めた。 バルトパパの期待に応えられないのは、マジで申し訳ないけど。 でも、私が見つけたこの「お姉ちゃんの本当の輝き」を無駄にするわけにはいかない。
数日後の【鑑定の儀】。 そこで私の「精霊魔法適性ナシ」がバレたら、家は大騒ぎになるだろう。 でも、そこが私のプロデューサーとしてのデビュー戦。
崖っぷちから這い上がったギャルの根性、しっかり見せなきゃね!




