第17話:中二病っぽい名前だけど、威力はマジ笑えない
特訓二日目。 私はレオを、屋敷からかなり離れた私有地の荒野に連れ出した。 屋敷の庭じゃ、確実にパパに怒られるレベルのことが起きそうだったからね。
「ねえ姉様、さっきから言ってる『終焉魔法』って何? 名前、ちょっと怖くない?」
「あー、名前は気にしないで。私が勝手にそう呼んでるだけだから。要は、あんたの体の中にある『全部の属性を一つにガッチャンコして、全部無かったことにする力』のこと」
レオは不思議そうな顔をしてるけど、私の【深層鑑定】にはハッキリ見えている。 彼の魂の奥底で、七色の魔力が互いに食らい合い、真っ黒な「虚無」の塊に変わろうとしているのが。
「レオ、まずは火も水も風も、全部同時に出してみて。で、それを自分の中で無理やり一つに凝縮する。……爆発しそうになったら私が止めてあげるから、全力で行きな」
「……分かった。やってみるよ!」
レオが両手を広げた瞬間、周囲の空気が一変した。 全属性Aランク。その全ての魔力が、彼の周囲に巨大な渦となって現れる。 炎が舞い、氷が砕け、雷鳴が轟く。……普通ならこれだけで「大魔導師」レベルの光景なんだけど、レオの本当の力はここからだ。
「……っ、う、あああああ!」
レオが叫びながら、その七色の渦を両手の間で強引に押し潰していく。 キィィィィィィィン……!
鼓膜を突き刺すような高音が響き、周囲の風景から「色」が消えていく。 レオの手のひらの間に現れたのは、親指ほどの大きさの、透き通った「真っ黒な球体」。
一見、地味。 でも、それが発生した瞬間、荒野の岩石が、風もないのに砂となって崩れ落ちた。 【鑑定結果:終焉魔法(不完全起動)】 【状態:事象の崩壊。対象を構成する分子結合を強制解除する、宇宙のバグ】
「……ちょ、レオ、そこまで! ストップストップ!」
私が慌てて【無属性SSS】の魔力でレオを包み込み、その黒い球体を「無色」でコーティングして封じ込める。 レオはその場にヘナヘナと座り込んだ。
「……はぁ、はぁ……。姉様……今、何が起きたの? 腕が、消えちゃいそうだった……」
「……あんた、マジでバケモノだわ。これ、ただの攻撃魔法じゃない。『存在そのものを消し去る』権能だよ」
全属性が完璧に混ざり合った結果、光も闇も打ち消し合って「無」になる。 名前は中二病くさいけど、その実態は「世界のデリートキー」。
「……いい、レオ。今の力、絶対にお姉ちゃんの前以外で使っちゃダメだよ? 王子様とかに見せたら、間違いなく国に拉致されるからね」
「……うん、分かった。でも……これがあれば、僕、姉様を守れる?」
レオが不安そうに私の顔を見上げてくる。 あの日、崖の上で離れてしまった小さな手。 今はその手に、神様すら殺せそうな力が宿っている。
「……当たり前じゃん。あんたが最強すぎて、お姉ちゃんの出番なくなるかもね」
私はレオを抱きしめながら、密かに笑った。 プロデュース大成功。 でも、これだけヤバい力が覚醒しちゃったら、あの「勘のいい女」セルンさんや、国家最高戦力になっちゃった兄姉たちが黙ってないだろうなぁ。
「……あー、隠居したいのに、どんどん事態がデカくなっていくんですけど!」




