第16話:深層鑑定、その裏に隠された「バグ」
「うーん……やっぱり、何かがおかしいんだよね」
特訓初日。庭で全属性の魔力を必死に練っているレオを見ながら、私は顎に手を当てて考え込んでいた。 レオは物凄く筋がいい。教えたことは即座にこなす。でも、どれだけやっても「最高級の優等生」の域を出ない。
お兄ちゃんたちの時に感じた、あの「魂が震えるような爆発力」が足りないのだ。
「全属性A……。普通なら天才だけど、私の弟としては物足りない。……ちょっと、本気で覗かせてもらうよ」
私はレオの背後に立ち、進化し続けてきた鑑定眼の出力を最大まで引き上げた。 ただのステータス閲覧じゃない。魂の構造そのものを分解し、その奥底に眠る「隠しページ」をハッキングする。
【鑑定スキル:深層展開——起動】
視界が真っ白に染まり、レオの魔力の系図が膨大なデータとして流れ込んでくる。 すると、今まで「全属性A」と表示されていた文字が、ノイズのように歪み始めた。
「……え、これ……マジ? 文字化けしてんだけど」
ノイズの向こう側から、真紅の文字が浮き上がる。
【真・魔力適性:終焉——潜在判定不能】 【真・武器適性:模倣——潜在判定不能】 【特殊スキル:欠損した英雄】 ※全属性をAランクで『平均化』することで、真の力を封印している状態。
「…………は?」
私は思わずマドレーヌを落としそうになった。 「全A」っていうのは、突出した才能がないんじゃなかった。 「あまりにも強大すぎる力を制御するために、魂が勝手に全属性へ分散して薄めていた」という、とんでもないバグだったわけ。
「レオ、ちょっと止めて。……あんた、今まで魔法使う時、なんか『窮屈だなぁ』って思ったことない?」
「え? うん、いつも少しだけ、体に重い鎖が巻き付いてるみたいな感じがするけど……。これ、みんなそうでしょ?」
「……んなわけないじゃん! あんた、それ全部『重り』つけて走ってたようなもんだよ!」
私は興奮でレオの肩を掴んだ。 「全能」どころじゃない。こいつは、私と同じ――あるいはそれ以上の、世界の理を壊す側の人間だったんだ。
「レオ、よく聞いて。今日から特訓内容、全部変更。属性なんてちまちましたもん、もう使わなくていい」
「えっ、じゃあ何をするの?」
「全属性を『混ぜる』んじゃない。全部を一つの点に『叩き潰して戻す』の。あんたの本当の力は、そこにあるんだから」
私はニヤリと笑った。 レオの「全A」という偽りの仮面を剥ぎ取った時、この異世界にどんな怪物が誕生するのか。 あの日、守れなかった弟。 でも、この世界では私が、あんたを「神様すら手を出せない領域」までプロデュースしてあげる。
「さあ、始めようか。世界を絶望させる、本当の『レオ・アークライト』の作り方をね」




