第15話:15歳と6歳、あの日の続きを。
鏡の中に映る私は、15歳。 ……くしくも、あの日、崖から落ちて人生を強制終了させた時の私と同じ年齢だ。 そして。
「レナ姉様、おやつ食べに行きませんか?」
私の服の裾を引っ張るレオは、6歳。 ……あの日、私がその手を離してしまった、生前の弟と同じ年齢。
名前も、年齢差も、あの時と同じ。 運命の神様が仕組んだ皮肉か、それともリベンジのチャンスか。 どっちにしても、今の私はあの時の無力なギャルじゃない。SSSランクの魔力と、世界をプロデュースしてきた知略がある。
「……レオ。あんた、今日から学校行かなくていいよ。お姉ちゃんも昨日で辞めてきたから」
「えぇっ!? 姉様、学院の卒業目前だったのに!? 僕だって、友達と遊ぶ約束が……」
「友達? そんなの、お姉ちゃんが100人分遊んであげる。……いい、レオ。あんたは『全適性A』なんていう、器用貧乏になりかねない危うい才能を持ってんの。既存の学校教育じゃ、あんたのポテンシャルを潰しちゃうんだよ」
私はレオをギュッと抱きしめる。 小さな、温かい体。今度は絶対に、この手を離さない。
「パパにも話は通してある。今日からレオの教育担当は私。……不満、ある?」
「……姉様が言うなら、しょうがないなぁ。でも、勉強ばっかりは嫌ですよ?」
私はレオの頭を撫でながら、【鑑定】を走らせる。
【名前:レオ・アークライト(6)】 【適性:全属性A、全武器A】 【運命:多才ゆえに道を迷いやすい。……が、最強の保護者により補正中】
全適性A。それは裏を返せば「突出した武器がない」ということ。 かつての私も、弟を守るための「強さ」を持っていなかった。だからこそ、レオには「何が来ても、誰が来ても、全てを上回ってねじ伏せる力」を叩き込む。
庭に出ると、そこには私の中退届を握りしめたバルトパパが、ため息をつきながら待っていた。
「レナ……。お前が学校を辞めてまでレオに付きっきりになるとは。アレンやフェリスの時もそうだったが、お前の教育は『常識』を壊しすぎる」
「パパ。常識で守れるものなんて、たかが知れてるでしょ。私は、この子を誰も届かない場所に置きたいの。……いいよね?」
パパは、15歳になった私の瞳に宿る、圧倒的な魔力と「意志」に気圧されたように頷いた。
アレン兄様とフェリス姉様は、すでに「国家の剣と盾」として家を離れている。 今、この屋敷でレオを守れるのは私だけだ。
「さあ、レオ。特訓開始。まずは、全属性の魔法を同時に展開する『全域防御』から。……お姉ちゃんが納得するまで、一歩も外に出さないからね」
「えええー! 姉様、スパルタすぎるよ!」
文句を言いながらも笑うレオを、私は絶対的な力で見守る。 6歳の弟と、15歳の姉。 あの日、崖の上で途切れた物語を、この世界で最強のハッピーエンドに書き換えてやる。 それが、ギャル転生者レナ・アークライトの、今世最大のプロデュース案件だ。




