第14話:手柄? そんなのコスパ悪すぎでしょ
地下遺構の最深部。教団の司教を無力化し、魔力源の汚染を完全に「無色」に塗りつぶした直後。 私は、まだ腰を抜かしているエドワード王子の襟首をぐいっと引っ張り上げた。
「……あ。エドワード王子。いいこと教えてあげる」
「な、なんだ……。レナ、貴様今、一体どんな魔法を……」
「魔法? 使ってないよ。それより、今からあんたがここのリーダーね。教団の残党を追い詰めて、魔力源を救ったのは、第3王子であるエドワード様と、その学友たちの功績。……おっけー?」
「はあぁ!? 貴様、何を……! 実際にやったのは貴様だろう!」
私は、震えるカイトとミーナにも冷たい視線を送る。
「カイト、ミーナ。あんたたちも、私の名前を一人でも出したら、明日から毎日10倍の重力で特訓させるから。……いい? 私はずっと、避難所で震えてたの。マドレーヌを食べてね」
三人は、私の「無属性SSS」の余波を間近で見た恐怖からか、カクカクと機械的に頷いた。
地上では、アレンお兄ちゃんとフェリスお姉ちゃんが、禁忌精霊を倒した英雄として国軍に迎えられている。 そして地下からは、エドワード王子を筆頭とした「特別小等部の勇者たち」が、捕らえた司教を引き連れて凱旋する。
「おぉ……! 王子自ら、地下の根源を断たれたか!」 「アークライト家の神童たちのみならず、次世代の芽がこれほどまでに……!」
大人たちの称賛の声が響き渡る。 私はその喧騒の隙間を縫って、一人でトコトコと避難用のテントへ向かった。
適当な椅子に座り、隠し持っていた最後の一つ――少し潰れたマドレーヌを口に放り込む。
「……あー、マジで疲れた。英雄なんて柄じゃないし、注目されたらお昼寝もできないじゃん。手柄は全部、プライド高い王子様に熨斗つけてあげて正解だわ」
お兄ちゃんとお姉ちゃんは「救国の英雄」。 クラスメイトは「未来の希望」。 私は、ただの「魔法適性ナシの末娘」。
完璧。これで私の隠居ライフは約束されたも同然——。
……なんて、満足げに目を閉じた私の目の前に、スッと長い影が落ちた。
「……さすがに、無理がありませんか? レナ様」
セルンさんだ。 彼女は、手元の記録機の数値を私に見せながら、ニヤリと眼鏡を光らせた。
「地下から観測された、この『完全に無色な魔力波』。王子の実力では逆立ちしても不可能です。……レナ様、貴女。本当は——」
「……あー。セルンさん。明日、マドレーヌのいいお店、教えてあげるから。その話、一生黙ってて」
私は、口の中に甘い香りを残しながら、夕焼けに染まる王都を眺めた。 結局、プロデューサーってのは表に出ちゃ負けなの。 ……まあ、隠し通せる気は全くしないけど、とりあえず子供時代はこれで「おしまい」。




