第14話:アークライト家、それぞれの戦場
地下遺構から溢れ出した禁忌精霊の魔圧。 王都がパニックに陥る中、王宮の最前線には、偶然居合わせたアレンとフェリスが立っていた。
「……フェリス、怖くないか」 「お兄様こそ。……でも、あの子に教わった感覚を信じれば、負ける気はしないわ」
二人はまだ、無敵の英雄じゃない。 でも、レナに「武器の適性」と「魔力の出口」を整理してもらったおかげで、無駄な努力をしていた頃とは比べ物にならないほど、戦いの中に「確信」を持っている。
アレンが放つ炎の槍は、荒削りながらも教団の結界を力任せにブチ抜き、フェリスの広域魔法は、必死に街を守る盾となっている。
……うん、二人はあそこで目立ってて。 「アークライト家の神童、ここにあり」って世界に知らしめてくれれば、私のニート計画に有利だから。
「……さて。こっちはこっちで、面倒な『バグ』を消しに行きますか」
私は小等部のメンツを引き連れて、地下遺構の深部へ。 こっそり裏道を通るのは、この1年、セルンさんの目を盗んで学内を探索しまくったおかげ。
最深部で魔力源を弄んでいた教団の司教は、現れたのが子供の集団だと知って鼻で笑った。
「カカッ! 陽動か。だが、こんな小娘一人で何ができる」
「何ができるって……あんたの魔法、構成がマジで汚い。見てるだけで吐き気がするんだけど」
私は一歩前に出る。 しごいてはないけど、この1年、自分の【無属性】が何なのかだけは、誰にもバレないようにひっそり研究してきた。
【無属性魔法:概念干渉(試作型)】
SSSランクの魔力は、属性という形を持たない。 それはつまり、相手の魔法という「完成した絵」を、ただの「インク」に戻して消し去る力。
「……ちょっと、散らかりすぎ。片付けなよ」
私が手をかざすと、司教が練り上げていた禁忌の術式が、音もなく霧散した。 まるで、最初から魔法なんて存在しなかったかのように。
「……え? 儀式が……消えた? 私の魔力が、動かない……!?」
「あんたの魔力、全部『無色』に塗りつぶしといたから。しばらく魔法、使えないと思うよ」
魔法を奪われた司教に、カイトの重力とミーナの毒針が飛ぶ。 私が魔法の根源を潰したおかげで、彼らでも十分にトドメを刺せる「雑魚」に成り下がっていた。
「……はぁ。マジ疲れる。やっぱりこういうのは、お兄ちゃんたちの仕事だわ」
地上では、大きな爆発と共に禁忌精霊が沈静化していく。 アレンとフェリスが、ボロボロになりながらも勝利を掴み取った合図だ。
私は、座り込んでいる小等部の面々に声をかけた。
「ほら、みんな。今のうちに帰るよ。手柄は全部、お兄ちゃんたちに押し付けるんだから。私たちは『たまたま避難してました』って顔でね」
これが、最強のプロデューサー(7歳)のやり方。 家族に華を持たせ、自分は自由を確保する。 ……はずだったんだけど、地下遺構をこれだけ「無属性」で浄化したあとに、セルンさんが黙ってるわけないよね。
あー、隠居ライフへの道、やっぱり遠いわ。




