第10話:身体強化、マジで最強すぎて引く
特別小等部、最初の実技演習。 学院内の結界訓練場には、クラス中の「天才児」たちが集まり、私とエドワード王子の対峙を固唾を呑んで見守っていた。
「いいか、レナ・アークライト。これは『教育』だ。属性魔法こそが至高であり、無属性などという欠陥品は、王族の輝きに触れることすら許されないと思い知れ!」
エドワードは高らかに叫び、光魔法の奥義を練り上げた。 彼の周囲に無数の光の剣が浮かび、目も開けられないほどの輝きが訓練場を包む。
「……はぁ。光らせすぎ。マジで目に悪いんだけど」
私は棒立ちのまま、心の中で【無属性魔法:身体強化(硬度極限型)】を起動した。 【自己鑑定:レナ・アークライト】 【出力:無属性Sランク相当】 【防御術式:魔力膜による細胞単位の固定(絶対防御)】
「消えろ! 『ライトニング・バスター』!!」
エドワードが腕を振り下ろすと、巨大な光の濁流が私を飲み込んだ。 ドォォォォォォンッ! という爆音と共に、地面が抉れ、砂煙が舞い上がる。 「……ふん、やりすぎたか。これに懲りたら二度と——」 「……ねえ、もう終わり? 結構あったかくて、お昼寝にはちょうど良かったけど」
砂煙の中から、欠伸をしながら私が現れた。 制服の裾一つ、髪の毛一本すら焦げていない。 それどころか、私の肌に触れた光の残滓が、まるでガラスのようにパリンッと弾けて消えていく。
「なっ……!? バカな、僕の全力の光魔法を……防具もなしに、生身で受けただと!?」
エドワードが顔を引きつらせて後ずさる。 壁際で見ていたカイトやミーナも、言葉を失って固まっている。 当たり前じゃん。属性魔法なんて、魔力に「属性」っていう不純物を混ぜて加工した劣化品なんだってば。 純度100%の無属性魔力で固めた私の体は、この世界のどんな物質よりも「硬い」んだよ。
「次、私の番でいいよね。……お兄ちゃんに教えたみたいに、ちょっとだけ『コツ』を見せてあげる」
一歩。 私が地面を踏みしめた瞬間、強化された脚力が結界内の空気を爆発させた。
ドンッ!!
「え——」
エドワードが反応する間もなかった。 私は彼の目の前に一瞬で移動し、指先で彼の胸元をトンッ、と突いた。 ただの、デコピン程度の軽い衝撃。 でも、SSSランクの魔力でブーストされた私の質量は、それだけで物理法則を無視する。
ドゴォォォォォンッ!!
「がはっ……!?」
エドワードは自慢の光の防壁ごと、訓練場の壁の端まで弾き飛ばされた。 そのまま壁に深々と埋まり、白目を剥いて沈黙する。
「あー……。防御力に全振りしすぎて、攻撃の加減忘れてた。マジで調整ムズいわ」
私は静まり返った教室の面々を、ぐるりと見渡した。 さっきまでの「無能」を見る目は消え、そこにあるのは、圧倒的な「恐怖」と、底の見えない「怪物」への畏怖だった。
セルンさんが、狂ったように記録機を叩きながら呟く。
「……防御は絶対、攻撃は一撃。無属性の真理は……『極限の単純化』による暴力……。素晴らしいわ、レナ様!」
……あー。 スッキリはしたけど、これ明日から「おまけの無能」としてお菓子食べるの、絶対無理でしょ。 崖っぷちギャルの隠居計画、第10話にして完全終了のお知らせが届きました。




