死亡フラグ
ニャサコー星系での戦いは想像以上に激戦だった。
敵味方隊列を乱され半ば殴り合いのような艦砲射撃戦となっている。
一隻、また一隻と敵味方の艦船がシールドを破られて炎上していった。
一部の艦は緊急FTLジャンプでこの宙域から逃れ、直撃を受けた場合など
そうすることが出来ない場合は艦を捨てての退艦脱出となる
とある巡洋艦が敵主砲によってシールドと装甲を貫かれ致命傷を受けた。
艦は大破し炎上する。まもなく爆発するだろう。
艦長である彼女は最後までクルーの退艦の指揮を執り、最後に自らの脱出を試みたがブリッジ内の爆発によって飛散した鉄片が彼女の腹部を切り裂いた。
薄らぐ意識の中、彼女は遠くを見つめ
「はい、喜んで・・」
と呟いた・・。
時をさかのぼるーー
「なぁ、ルナ!結婚してくれ!」
「ま・・待ってよ。何いきなり!」
「いや、いきなりでもないぞ。ずっと考えていたんだ。次は前線への出兵だ。
どうなるかもわからない。だから今言うしかないんだ。この戦いに勝ったら
結婚しよう!」
「ちょちょちょ・・ちょっと待って。そういうの死亡フラグっていうの!
やめてよ、縁起でもない。そうね、あなたが本気だって言うのなら
勝利の度にプロポーズしてきなさいよ。
100回プロポーズしてきたらフラグぶち破ったってことで考えてあげるわ」
彼女は同艦隊に所属する同僚で幼馴染のラッツ艦長とそんな約束を交わしていた。
あの時、素直になれなかったルナはお互い惹かれあっているにも関わらず
それからのラッツの勝利の度のプロポーズを断る羽目になった。
「ルナ!結婚しよう!」
「No・・。 (・・なんでこいつあんなの真に受けるの?これじゃあ100回待たなきゃダメになったじゃない!)」
「何回目~?」
別の同僚が面白がって揶揄う。
「ふっ。51回目、中間地点を越えたぞ!」
半ば艦隊内の恒例イベント化してしまった。
その後、激戦に次ぐ激戦を乗り切り、遂に数日前ルナは99回目のプロポーズをラッツより受けた。
ようやく100回目を迎えるかと艦隊の皆が期待していたところだった。
彼女が意識を失うと同時に彼女の艦は爆散した。




