脅迫外交 ー 焦土の魔女
ニャニャーン神聖帝国がコリンズ共和国に対して独立保証を提案し、その調印式が行われた。
独立保証条約とは提案側が相手側の独立を保証し、相手側の防衛戦争には同盟として参加する。(侵略戦争はその限りではない)
相手側を強制的に従属させようとする第三国が現れた場合、提案国は武力行使で阻止できる。
弱国を餌に大義名分を得ることも、いずれは属国に仕立て上げることもできる。
ニャニャーン側の全権大使の柚希大使が条約調印式前の控室につながる廊下でコリンズ側のポテル大使と鉢合わせた。周りには二人しかいない。
「これはこれは柚希さん、いつもながらお美しい。本日はよろしくお願いいたします。」
「ポテルさん。お世辞がお上手ですね。はい、貴国のことはこのニャニャーン神聖帝国にお任せください。」
「これは頼もしい。貴国の意図が何であれ、頼らせていただきます。」
「ときにポテルさん」
そういうと柚希はふっと近づき肩に手を置き、上目遣いでポテルを見上げた。
整った顔立ちで確かに美しいがその目には感情がこもってなく、底知れぬ闇が宿っていた。
ポテルは柚希の目を見つめた途端、冷や汗が出ていることに気づいた。
「もし貴国が我々に害する行動を裏でとるようなことがあれば・・・。」
ポテルは心臓が凍り付きそうになりながら。
「滅相もありません。そのようなことは決して」
「私の親友に花音提督という者がいるのですが、ご存知ですか?
彼女は『焦土の魔女』と二つ名があり、彼女の怒りに触れれば惑星は・・・。
その彼女が言うんですよ。
もしコリンズに何かあれば知らせろと。
私は物騒なことが嫌いなんですが・・。
ポテルさん、最悪の事態にならないようにご尽力願いますよ」
「ははは・・はい。お任せください。」
すっと柚希は離れていつもの笑顔に戻っている。とても高貴で美しい。
「ポテルさんとは良い関係が築けそうです。」
「そうですね。そっそれでは失礼いたします。」
・・・・・
「花音だと・・?知らん名前だがニャニャーンのことだ・・それは魔人のような提督に違いない。」
時と場所が変わって
ニャニャーン領星系のとある惑星。
花音提督は休暇を取得していて、趣味のケーキ作りをしていた。
「・・。うん!美味しい。上手にできましたー♪
柚希ちゃん、そういえば遠方星系に長期出張と言ってたっけ?食べさせてあげたかったなぁ。
・・・(くちゅんっ) 誰か噂してる?」
花音提督は国境内のパトロール艦隊の提督で人はおろか虫も殺さない優しい性格の無害の提督だった。
外で魔人やら焦土の魔女やら呼ばれていることに気づいていない。
美人の柚希さんと無害な花音さん、名コンビ。