過去1
………昔の夢をみた
まだ生まれ故郷の村にいた頃の夢だった
俺の村は勇者伝説が語り継がれる古くからある村で
その歴史は千年も前に遡るらしい
なんでも当時魔王を倒した勇者が一緒のパーティーだった聖女と隠居して開拓したのがこの村らしい
本当かどうかは今となっては誰も知らない
そんな村の村長の家に三男として生まれた俺は転生した大学生だった
転生時特典としてスキル[識別]と[隔世]をもらった
特に説明はなくスキルをくれたモノも
「世界のバランスを崩せないので大したものでは無い、いずれ分かるだろ」
くらいに言われた
本当に大したことなく
[識別]は知っていることに補足をしてくれるくらいの能力しかなく
例えば薬草を識別すると
薬草
簡易治癒
新鮮
傷口に絞ると回復が早くなる
ポーションの材料
など、その薬草の効能、状態、簡単な説明が出るシンプルなスキルだ
一見便利なようにみえるが
これには勉強しないと効果を十全に得ることができないというデメリットがある
異世界に来ても勉強しないといけないとは使えないスキルだ…
もう一つの[隔世]に関しては発動もせず
なんのスキルだかもわかっていない
本当に役に立たない
それでも村の権力者の息子で勇者の子孫
そして転生者とスキル[隔世]…
様々な要因が重なり俺は有り体に言って調子に乗っていた…
子供の頃から
「いつか冒険者になって一旗上げてやる!」
なんて毎日のように木剣を振り回していた
それなりに才能はあったらしく、村の子供の中では負け知らずだった
簡単な動きを教えてくれた狩人のおじさんからは
「お前はは弓のほうがあってると思うぞ」としきりに弓を勧められたが…
おじさんには娘がいた
同い年で気が強く、大人にも物怖じしない芯の強い子だった
「あんたなんかがすごい冒険者になれるわけないでしょ」
ってその子には毎日のように言われていたが精神年齢も体相応だった為か俺は聞く耳を持たなかった
あの時あいつの忠告を聞いていれば…
なんてここ数年は毎日のように思い出している
気がつけばもう俺も30を過ぎる年になってしまった
この街に18歳で来て12年
未だに冒険者のランクは下から四番目
所謂下級ってとこ止まりだ