フクフクコント『カフェ』
洋介がカフェを見つけたので入店してみると、カウンターを拭く若い女性のウェイターと目が合った。眼鏡をかけたそのウェイターは入店した洋介に微笑み、落ち着いた声で言った。
「いらっしゃいませ。今は全て空席です。お好きな場所へどうぞ」
「……あ、はい」
一瞬、洋介はその女性に見惚れてしまった。
「オリジナルブレンドのコーヒーをください」
「かしこまりました。サイズがMとLとございますが、どちらになさいますか?」
「じゃぁ、Mで」
「ありがとうございます。並一丁!」
「おっ!?」
ウェイターは突然、店中に響き渡る大声で注文を復唱した。
「失礼しました。実は別の店でもアルバイトをしているもので」
「あっアルバイトだったんですね?」
「はい。それが何か?」
「いえ、マスターなのかと思っていたので」
「マスターは出稼ぎ中です」
「店主が出稼ぎしてるんですか!?」
「お待たせいたしました。オリジナルブレンドでございます」
カウンターに一杯のコーヒーが、黒い盆ごと置かれた。
「……またアルバイト先の癖が出てませんか?」
「それはコーヒーが溢れても掃除しやすいようにしているだけです」
「本当ですか?」
「本当です。ところで、お客様以外に誰も入店されませんねぇ。マスターも帰ってこないし。そうだ、クイズをしませんか?」
「クイズですか?」
「はい。私の副業を当ててみてください。正解したらテイクアウトのクッキーを差し上げます。ヒントは……そうですねぇ」
「ノーヒントでも答えられる自信あるけどなぁ」
洋介の声は流された。
「ヒントは、油を売る職業です」
「とんでもない偏見じゃないですか!」
「そんなことありませんよ」
「そう聞こえるんです! 逆に今でしょ油を売ってるのは!」
「だって暇なんだもん」
「やっぱりわざとだ! しかもあざとい!」
「それで、解答はどうなさいますか?」
「牛丼屋!」
「残念」
「嘘でしょ!?」
「正解はガソリンスタンドのスタッフでした」
「本当に油を売る職業だった!」