第4話 氷解の時
突然の爆発に騒然となる会場内。
煙で視界が遮られ、不安が煽られているのだろう。
そこかしこから叫び声が響き、パニック一歩手前と言った感じだ。
まったく、殆どが非戦闘員とは言え、ちょっとした爆発程度で情けない。
お前らテロリストだろうが。
俺は勿論冷静だ……まぁ、俺が仕掛けた爆弾だからな。
いざという時のため、俺はこの本部内の至る所に爆弾を仕掛けている。
持ち込みだけじゃ足りないんで、殆どは帳簿をちょろまかして、このアールヴァイスの予算で買った奴だ。
集会開始前、俺はトイレに行くと言って、集会場に仕掛けた分のロックを解除した。
然るべきタイミングで騒ぎを起こし、イングリッド様が会場を抜け出す隙を作るためだ。
さてそのイングリッド様は……。
『んっ、ぐっ、あっ、くぅぅっ、待てっ、まだ、まだだ……っ!』
お腹を抑えて、こちらに向かってきている。
爆発の騒ぎに紛れて俺が滑り込んだ、この会場から1番近いトイレに続く扉に。
122%、673/552ml(27ml)
爆発に驚いたのだろう、そこそこの量をちびっている。
これじゃあ、下着はもうビショビショだろう。
本来こうゆう時、幹部は首領の守りに回るべきなのだが、真面目なイングリッド様がそれを放棄してトイレに向かっている。
相当な緊急事態ということだ。勿論、俺はそれを正確に把握しているわけだが。
さぁ、最後の仕上げだ。
俺は廊下の奥に走り、トイレまであと10mほどのところにある曲がり角に身を隠す。
すると間もなく、イングリッド様の尿意を示す数値が近付いてきた。
125%、690/552ml(31ml)
ここにくるまでに、また少しだけちびったようだ。
物陰から顔を少しだけ出し、そっと様子を伺う。
イングリッド様は、先ほど同様、両手でお腹を庇い、軽く前屈みで早歩きをしている。
誰も見ていないと思っているはずだが、それでも出口を押さえないのは幹部としてのプライド故か。
そんなイングリッド様が俯かせていた顔を上げる。
視線の先には、女子トイレのマーク。
一瞬表情が緩み、直後に大きくブルルっと震え、とうとう両手で出口を押さえ出した。
122%、673/552ml(48ml)
やはり、最後の最後で気が抜けて、また出してしまったんだろう。
――追い込むなら、ここだ。
俺は、ゆっくりと曲がり角から出て、全力でおしっこ我慢中のイングリッド様の前に姿を見せる。
俺の姿を捉えたイングリッド様は、一瞬で直立の姿勢に戻り、キッと表情を改める。
だが、目元を拭う暇はなかったようで、大粒の涙が溢れている。
至近距離にきたおかげで、脂汗塗れの顔面もよく見える。
「イングリッド様!? 集会場で爆発があったと聞きましたが、こんな所で、いったいどうなされたのです?」
「そ、それは、ん゛っ! その、緊急、の゛っ!」
俺は会場外の担当のフリをして話しかける。
それにしても緊急、緊急ね。
そりゃ緊急でしょう。何せもう、おちびりが止まらなくなってるんだから。
「緊急? いったい、それはどのような任務なのでしょうか」
「だから、あ゛っ、き、きんきゅぅうっ!? ご、ごくひ、のぉっ、くうぅっ!」
鋼の精神力で我慢ポーズを解除したイングリッド様だが、その代償は大きい。
両手の支えを失った出口は、もう自力では締めきれないのだろう。
大体1秒に数mlのペースで小便が漏れ出している。
溢れる度にイングリッド様の表情が歪み、脚がもじもじと切なそうに動く。
スカートの裾を握っているのは、そうしていないと俺の目の前で出口を押さえてしまうからだろう。
だがそのせいで、股下1cmしかなかったスカートは完全に機能を失い、黄色く濡れた縞パンが見えてしまっている。
せっかく我慢ポーズをやめたのに、これでは漏らす寸前だと全力でアピールしているようなものだ。
なので、俺は少しだけ話をそっちに持っていく。
「しかしイングリッド様、どうも顔色が優れないようですが……」
「これは、あ゛っ、ト、トイ、ん゛っ、いや、なんでも、なんでもないっ!」
「ですが、先ほどから震えていらっしゃいます。やはりお体の具合がわるおのでは――」
「くっ、空調、ん゛ん゛っ、空調だ! 室温が、あぁぁっ、ひくくて、それ、でぇ……!」
「室温ですか? 私はそうは感じませんが……」
話している間にも、イングリッド様の堤防のヒビは広がっていく。
おちびりも進んで、この数秒で太ももにも両脚合わせて6~7本の雫が落ちた。
数値は――
116%、640/552ml(92ml)
大分出てる。もう『お漏らし』って言ってもいいくらいじゃないだろうか?
「あ゛あ゛ぁあぁっっ!!?」
「っ!?」
111%、610/552ml(122ml)
おおっ、一気に30ml漏れた!
イングリッド様は咄嗟に脚をクロスさせたが、太ももはびしょ濡れで、足元の床にも垂れちまってるぞ。
「も、もうっ、あぁっ、い、いいから! 貴様は、あ゛っ、早く、じゅん、かいに、もどれぇぇ……!」
男に見られている言うのに、イングリッド様の腰が少しずつ弾けてくる。
もう本当に限界なんだ。
あと少し、あと数秒で、イングリッド様の堤防は決壊する。
なら、ここが最後の追い込みどきだ!
「いえ、この状態のイングリッド様を置いていくことなど、私にはできません! 医務室までお供致します」
「いいっ、いいから、あ゛はぁっ! 貴様は、しごと、に、ぃい゛ぃっ! わたしの、こと、は、か、あ゛ぁっ、かまうなぁぁ……!」
「そうは行きません、さぁ、肩をお貸しします」
「や、やめろ、ん゛っ、いま、触られたらっ、あ゛あ゛ぁあっ!?」
近付く俺から逃げるように後ずさるイングリッド様。
だが、歩くことすら致命傷に繋がるのだろう。
まとまった量が漏れ出し、パシャっと音を立てて、床に小さな水溜まりを作る。
さぁ、とどめだ。
「あ、ああ、あ、あ゛っ! だ、だめだっ、たのむから、ん゛ん゛ふぅっ、むこうへ、いってくれぇっっ!!」
「いったいどうしたのです。先ほどから、様子がおかしいですよ?」
「おねがい、だぁ……っ…そこを、とぉして、くれ……とおして、とおし、あ゛っ!? あ、あ、あ、あっ!」
そしてとうとう、イングリッド様は俺の目の前で、両手で出口を押さえ――
「ん゛ん゛っ、だめぇっ! み゛るなぁっ!」
ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!
ジョバババババババババババババババババババババババッッ!!ビジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャッッ!!
ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!!
尿意の数値がどんどん減っていく。それに合わせて、排出量を示す数値がは増加……いや、数値なんて見るまでもない。
押さえた手の間から溢れ出る、金色の体液。それが滝のように流れ落ちて、バシャバシャと床に跳ねる。
イングリッド様が、漏らした。
膀胱からの水圧に負け、我慢に我慢を重ねた小便を漏らしたのだ。
「うぅっ……み、見るな……見ないでくれ……頼む……あぁぁ、止まらない……っ」
普段のイングリッド様からは、考えられないような泣き言だ。
広が水たまりの中心で、顔を真っ赤にして、閉じた目からポロポロと涙を零している。
この光景に、俺は本来の目的も忘れて見入っていた。
下着も、太もも、脚周りも甲冑もびしょ濡れにして、ぐずぐずと啜り泣くみっともない姿。
なのに、俺は時が止まったかのように目が離せない。
「うぅっ……ずっ……えぐっ……嘘だ……私が……こんな……っ」
情けない泣き言すら、ビンビンに俺の脳を刺激する。
美人が漏らす様が、こんなにエロく、そして美しいものだなんで、俺は今まで考えもしなかった。
触れたい。あの、この上なく弱ってしまったイングリッド様に触れたい。
貶め、辱める言葉をかけて、あの泣き顔を更にぐちゃぐちゃにしたい。
行こう。もう仕事なんてどうでもいい。
俺はこの組織でイングリッド様を――
「だめよ♪」
「なっ!?」
イングリッド様に伸ばした手が、真っ黒い鎖に絡め取られる。
そして鎖は生き物のように蠢き、一瞬で俺の全身を縛り上げてしまった。
「こ、この鎖はっ!」
イングリッド様の肩越しに見えた顔に、俺は目の前が真っ暗になった。
そこにいたのは、ボリューミーな紫色の髪をツインに纏めた怪しい雰囲気の女性。
アールヴァイスの女幹部の『ヤバい方』
――『黒鎖』のアシュレイ。