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アマゾン川

作者: 白蛇奮迅

「確かにあいつだ」男は仕事が終わり夜遅く家に帰っているところであった。彼は帰る途中、人ごみの中に大学生時代の同級生らしき人物をを見つけたのである。その同級生とは大学時代親友で仲が良かった。大学を卒業すると共に男は一般企業に就職したが、彼は世界をもっと見てみたいと言い、世界へと旅立っていった。その友人が今目の前にいた。

 「やあ、久しぶりだな」男は声をかけた。振り向いた顔はまさしくあの友人だった。その幾分老けた顔に男は懐かしみを感じずにはいられなかった。彼は少し当惑した表情で男を見つめていた。自分に声をかけてきた男が誰なのかわかっていないようであった。彼はまじまじと男の顔を見つめ、何本もの糸を探り当てるかのように目を細めた。そして突然一本の糸を探り当てたかのように顔を輝かせた「ああ、何年ぶりだろう!久しぶりじゃないか」彼は昔の同志が突然現れたことへの驚きを隠せないようであった。その驚いた眼は自然と真珠のように湿っているようにも見えた。そして二人は互いに感動を分かち合い、再会できた喜びを嚙み締めあった、「なあ、ここで会ったのも何かの縁だし飲んでいかないか、飲みながらゆっくり昔の話でもしようじゃないか」「それもそうだな、飲みながら話でもしよう」二人は近くの居酒屋で飲むことにした。

 「こうやってお前と話すのも何年ぶりだろうな、大学を卒業してからすぐ海外へ行っちゃうんだから、あれからどうしたんだ」「そうだなあ、あれからいろんな国を回ったよ、アフリカのサバンナでライオンを見たり、北極に行ってエキスモーと一緒に暮らしたともあったな」「そうだったのか、それでこれからはどうするつもりだい」「ああ、また世界に出て旅を続けるつもりさ、久しぶりに故郷を見てみたいと思って今日帰国したんだよ、そうそう」彼は思い出したという様子で言った「話したいことがあるんだが、これは僕がブラジルに行った時の話なんだけどね、何とも言えない奇妙な体験をしたんだ」

 それはアマゾン川を見ようと思ってブラジルに行ったときのことだ。僕は現地のガイドと一緒にモーターボートでアマゾン川を横断していた。アマゾン川には3メートルを超える巨大ナマズやいろいろな珍魚が生息しているらしいので、内心僕はとても興奮していた。しばらくは写真を撮ったり、自然を眺めたりしてアマゾン川の自然を満喫した。そして時間も遅くなってきたので、そろそろ帰ろうということになり。ガイドがモーターボートを操作しようとしたその時だった。僕はボートの水面の近くに何か影が浮かび上がってくるのが見えた。ガイドに「あの影は何ですか」と聞いてみると、ナマズか何かだと思という答えが返ってきた。しかし、そう話していくうちにも影はだんだん大きくなり水面に近づいてきた。僕は驚いた、なんたってその影は軽く10メートルぐらいはありそうだったから。ガイドにあんなに大きいナマズがいるのかと聞いてみたところ、あれがもしナマズだとしたらあんなに大きいナマズは見たことがないと答えた。僕とガイドがそう話しているうちにも影はどんどん大きくなり、それはついに姿を現した。僕とガイドは放心し立ち尽くした。影の正体はやはりとてつもなく大きなナマズだった。それも全長15メートルぐらいはありそうな巨大ナマズだった。濁水の中に虚しい程悠々と穴を開け、尾鰭を微速に揺動させながら川を徘徊するその姿は、まるで川の主に会った様な気魄だった。僕はあの巨大ナマズの無変貌で赫灼とした目が此方を睨んでいる様な気がして、思わず身震いせずにはいられなかった。しばらくは声も出なかった。あのとてつもなく巨大なナマズが口を開けば、たちまちボートはあの分厚い唇の中へ吸い込まれてしまいそうで僕にはそれがとても恐ろしく感じられた。

 どれれくらい時がたったのだろうか。いや、それはほんの一瞬だったのかもしれない。しかし僕はそれがとてつもなく長い時間に感じられた。しばらくすると巨大ナマズはアマゾン川の深い川底に沈んでいった。しばらくは動くことができなかった。やっと我に返った頃にはあたりはこれまでどうり静けさに包まれ。前の出来事は幻だったかのように感じられた。とは言え、この出来事は衝撃的だった。ガイドもあんなに大きいナマズは見たことがないと始終つぶやいていたいたほどだ。それから僕たちはすぐに帰って現地の人たちにこのことを話してみた。まあ案の定誰も信じてくれなかったけどね。

「いやあ、僕はその後とても後悔したよ、あの巨大ナマズの写真を撮っておけばよかったてね。そうすれば僕が本当に巨大ナマズに遭遇したことを証明できたのになあ」そう言って彼はグラスに残ってたビールを一気に飲み干した。

 無論、男は彼の話が本当だとは信じられなかった。しかし彼が噓を言っているようにも見えなかった。「まあ信じてくれなくても結構さ。でも僕私かに見たんだよあの大ナマズをね。人間はこれまで多くの偉業成し遂げ多くの謎を解き明かしててきた。だから自分たちにもう知らないことはないと思っている。だけどそれは間違いだよ。この世には一万年、一億年かかっても解き明かせない謎が山ほどある。だからアマゾン川にとてつもなく巨大なナマズがいたとしても何も不思議なことではないんだよ」

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