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2(裏)

モニターには、やって来た三人が屋敷の中を見て回っている姿が綺麗に映っている。

「でも時間が掛かったな。」ハリーが言う。「もっと早いかと思ったんだが。」

要が答えた。

「生活があるからね。仕事が今日から休みになるから、恐らくこれぐらいはかかると思っていたよ。まあ、実際あの二人は見積もりだけで三日も掛かってたから、寝てるのは四日間だけだけどね。それで、準備は?大丈夫そう?」

ハリーは、頷いて親指を立てた。

「良い感じだ。意識を誘導するのも、暗示にかかりやすくする薬を試してみたかったんだが、結構利いたよな。美里という検体が、結構な頻度であの事務所を訪れてはあちこちひっくり返しているのを見て、早くこの屋敷へ行きたいと焦ってるんだろうなって思ったよ。弥生という検体も、最初は無理だと言っていたのに、あの部屋に来て薬品に晒された途端、美里の行く行くという言葉に影響されてあっさり当然のように行く事になった。湊という検体は、簡単だ。とっくに部屋に設置してある噴霧器で噴霧して、あとはハッキングしたパソコンで…一種のサブミナルみたいな暗示だったけど、あっさり掛かっていたしな。」

要は、じっとモニターを見つめた。

三人は、二階も見終わってまた一階へと降りて来ている。

恐らくは、これから管理室へと入るのだろう。

「…さて、ここからはアレックスの出番か。」要は言う。「アレックス、すまないな、もういろいろみんな面が割れてて出て行けなくて。こんなことに駆り出すなんて。」

アレックスは、要の友達でチャンヨンという本名だ。皆が居る時はなるべくアレックスと呼ぶが、普段はチャンヨンと呼んでいる。

そんなチャンヨンは、要から教わって日本語も完璧だった。見た感じ、日本人にしては姿が綺麗過ぎるが、日本語を話せばそうだろうと思える感じに装える。

「任せてくれ。いつも面白そうな事をしてるなって思ってたから、参加出来て嬉しいよ。じゃ、また頑張って行って来る。段々不気味にならなきゃならないんだよね?」

要は、頷く。

「そうなんだけど、最初は好青年でいてくれよ。そのままでいいってことさ。」

アレックスは、ハッハと笑った。

「へえ、オレは好青年か。大丈夫、シナリオは頭に入ってるさ。じゃ、行って来る。」

そうして、アレックスは地下室から外へと出て、屋敷の玄関へと回って行った。


アレックスは、こめかみに骨伝導のイヤホンを付けていて、それを隠すために上から部分カツラを付けていた。

綺麗に隠れているので、余程じーっと見つめないと分からない。

そこから通信出来るので、とても便利だった。

モニターには、アレックスが玄関へと向かうのが見えていた。

「管理室に居る。」デニスが、説明する。「出て来るところだ。」

アレックスは、モニターの中で頷いた。

他のモニターでは、湊と美里、弥生が一度外で話し合おうと出て来る流れになっている。

そうして、出て来たところで、アレックスと鉢合わせた。

「…どちら様ですか?お客様は来ないはずですが。」

アレックスはさも不審者に対するかのように言う。

弥生が、慌てて言った。

「すみません、勝手に入ってしまって。何度も声を掛けたんですけど、誰も出て来られないので。私は、中村弥生と言います。ここへ来ているはずの、坂田大河と小南理久を探して来たんですが。」

アレックスは、少し表情を緩めた。

「ああ、セキュリティの見積りをしに来てくださった方々ですね?私は、松本と申します。でも、もう四日前に見積書を置いて帰られましたけど。もう夜も遅かったのでもう一泊してはと言ったんですが、急いでおられたのか帰ってしまわれて。」

おかしい、と思わせるのが目的だ。

ここで、二人が不審な動きをしていたという情報を、三人に渡して探そうと思わせねばならない。

湊は、言った。

「橋本湊です。それが、帰って居ないようで。連絡も付かないので、心配になってこちらへ様子を見に来たのですが。」

アレックスは、わざと顔をしかめた。

「困りましたね。私はここの番人ではなくて、主人に言われて来ているだけなんです。普段は無人で、主人が来るのを待って帰る予定なんですよ。」

美里が、言った。

「私は崎原美里といいます。あの…二人はどこかに行くとか話していませんでしたか?」

アレックスは、ここで情報を渡そうと内心、セリフを思い出しながら首を傾げた。

「そういえば…寄るところがあるとかなんとか。だから急いでいらっしゃるようでした。ここから終バスも午後6時で終わりですし、歩いて戻るのは大変だと言ったんですけど。」と、顔をしかめた。「…実は、私も主人のお客様なので悪く言いたくはないのですが、一度はお泊まりになる、と部屋へ帰られたのですよ。なのに、朝になったらいらっしゃらなかった。何のお声かけもありませんでした。だから、余程お急ぎで、夜中に帰られたのだなと判断していたのですが。」

これで、不審に思って探そうと思ってくれたら。

アレックスが期待を込めて三人を見ていると、三人は、それを聞いて顔を見合わせた。

「…何か、変わった事はありませんでしたか?」湊は言った。「ここに居る間に。」

アレックスは、首を振った。

「何も。基本、お二人に全てお任せしておりましたし、同席することもありませんでしたから。屋敷のあちこちを調べていらっしゃるようでした。カメラを設置する場所を探していたようでしたが…そういえば、書斎に長くいらっしゃったようでしたね。」

書斎には、クリスが必死にそれらしく作ったネクロミコンという魔導書のレプリカがある。

出来たらそれを見つけて欲しい。見つけられなくても、他にもいろいろヒントを置いておいたから探して見つけて、岩屋へたどり着いて欲しい。

それが自然で、シナリオ通りになるので、全員の願いだった。

「手掛かりが欲しいんです。」湊は言った。「二人が滞在していた部屋を、見せてもらってもいいですか?」

アレックスは、頷いた。

「いいですよ。二階です。ご案内します。」

そうそう、二階にはいろいろあるから見つけてくれたら助かるなあ。

アレックスは、思いながら玄関から廊下を奥へと歩いた。

三人は、それについて一緒に二階へと上がって行ったのだった。

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