13.三匹の妖械戦士
三人は貨物列車に飛び乗り移動した。
無人販売で合掌してかっさらったトマトや胡瓜を食いながら、流れる景色を眺めている。
ブゥが口を開く。
「なあソン。そのクラリス……じゃなくて」
「麻倉さくら」
「うん。そのさくらお嬢は」
ソンは最後まで手を握って吸収したクラリスの〝生体波動〟と合致するものを脳波レーダーを張ってずっと捜索している。
身体こそ生身の人間になったが、妖術は変わらず使えるらしい。
「脳内座標では西の街のどこか。先ずはワイたちの元世界がある場所を探ってみるつもり」
「こっちでもGO WESTだな」
そう言うブゥにカッパも相槌を打つ。
遠くを見つめるソンにブゥは返す。
「リアルのさくらお嬢を守るためとは聞いたが、どこに惚れたんだ? かわいいのはわかるが少々おてんばだし気が強すぎる」
「はは。うん、でもな、どっか寂しそうなんや」
「寂しそう?」
「……うん。旅の途中、時々ポツンと。寝てる時も何度か泣いてた。ずっと、ずっと気になってる」
「……何でだろうな」
「それを知りたいんや」
「……まぁ、俺もカッパも熱血リーダー・ソンについて行こうと最初で決めたんだ。それに聖・クラリス=さくらお嬢のことなら尚更だ。彼女を守り生かすために俺たちは存在る。だから何でも三位一体やるしかないってな」
「そう、やるなら今しかねえ〜!」と、三人で通った飲み屋・西ジャンクスの親父の口癖を歌って笑った。
ブゥの隣りでカッパが溜息混じりに言う。
「恋……かぁ」
「どうしたカッパよ。切なく胡瓜に頬ずって」ブゥが訊ねる。
「恋したもんに理由もくそもねえ。好きになっちまったら気がついたら突っ走ってるもんよ。俺は、サキって子に。ちょっとな」
「「ほぉ〜〜ぉう!」」と二人は興味津々。
「ブゥ、お前だってハルって子捜してたんだろ?」
「きゃー、言わないで恥ずかしいから。豚神様に懺悔したんだ。愛に応えるって。ハルは大切な娘だ」
そんな感じで三人は恋話に花咲かせ、大の男同士が柄にもなくきゃっきゃとはしゃぎ、時を過ごした。
奇界とも天界とも違う現実世界の空間。
山や木々は美しく生え、海は穏やかに煌く。
列車が町に入ると澱んだ風が胸元を塞いだ。
夜の帳が下り、三人は黙って体を休めた。
****
そして次の日の朝、街に降り立った。
群衆に身を置く三人。
見知ったジャンクステイツとも天界街とも違う、乱立するビルと行き交う人間たち。
見渡すと防護服は様々だ。
軽快なもの重厚なもの簡素なものオシャレなもの奇抜なもの、度を越してコスプレ忍者甲冑着ぐるみ、まるで年中ハロウィンか仮装行列のよう。
すれ違う人間たちに素顔を出したものはいない。
もしかしたら男か女か若いか老けてるかもわからない。
どこか皆なにかに怯え何かに警戒しいつでも戦闘態勢をとれる心算。
だが街頭のテレビを覗くとコマーシャルなどではどうやら自宅の個室では素顔で過ごすらしい。
ソンたちはまるでバケツをひっくり返して一文字のゴーグルをつけたようなシンプルなマスクとSFチックな戦闘コスチューム系の防護服姿で徘徊している。
歩いているとカッパがある店を指差した。
「み、見ろ。……俺たちだ」
それはオモチャ屋さんだ。
〝トイザウるス〟という看板下のショーウィンドウでモニターが光っている。
《さあ、暴走戦隊シキダンジャーの相棒はワンちゃんだぜ! 夜露死苦☆機械犬『バウバウ』!》
繰り返される派手なコマーシャル。
カッパが指差す、飾られているメカドッグの端に目をやる。
するとそこには彼らの元の姿、メカニマルズの人形フィギュアたちが勇ましく並んでいた。
目を丸くして近づく三人。
彼らの人形たちの上には〝MW西遊記〟というタイトルプレートが。
「……うあ、ワイそっくりに造ってある」
「書いてあるぞ。〝売れ筋No.1はソン・メカモン〟それに〝スケール1/24・パクロン ダイキャスト仕様〟」
「〝さあ君も、シネマトリップスで体感し、天磁空を目指そう〟……って」
他にも光る剣を持った白や黒の騎士、星型の盾を構える男や手から光線を出す戦士のキャラクターグッズやシネマタイトルが掲げてあるが、あれこれ共通するワードは〝シネマトリップス〟。
そこに彼らのいた世界があるという。
なるほどと三人は顔を見合わせ、直ちにそこへ向かうことにした。
オトギオ・シティの巨大なビル群。
タカら座町12-11・タカら座ビルにシネマトリップス劇場はある。
気づけば宙を舞いしつこくつきまとう小さなタツノオトシゴ型ドローンを手で払い除けながら、三人ははるか聳えるそのビルを見上げた。




