12.転生、ソン……!
「ぐっ、はあっっ……!」
眩い光に包まれ、ソン・メカモンは山間の草原に投げ出された。
天磁空から経典SD=造り変えられた光の環=メカニマル・リンクスを抜け、〝仮想〟映画世界から〝現実〟人間世界への転生に見事成功した。
宙空から素っ裸で投げ出されたソンは一人、草むらに大の字になった。
空を見上げ次に手と足と見つめ、頬を触り髪をまさぐり、尻尾も無くなり、まぶたをパチクリ。
計画大成功に感極まって次にはゲラゲラ笑い出した。
「がーーーーっはっは! YES! イェイ! やった! うまくいった! さぁーっすが、ワイや! 天才! 最っっ狂のスーパーモンキー、〝モンキーマジック〟ソン・メカモン様やーーっ!!」
ガバッと起きてそこいらの水溜りに顔を写してみる。
小さな水面に揺れるイケメン。
「おぉぅ。なかなか理想的」
銀色に立った髪にクッキリとした目鼻立ち。
少々小柄なのは仕方ないが小男ははしこくしぶといのを良しとする。
超合金から変貌した皮膚をぷにぷに突ついてムフフと喜んでいると急に腹がムカムカしてきた。胃まで上がってきた。
「う、うぶっ! やべ!」
大口を開けブハーッと放出するゲロ……それはあまりにも大きく、丸くピンク色で、巨大だった。
次には緑色の物体が細長く。最後には蛇のようなものまでニョロリとオマケ付きで。
――な、何なんだとソンは立ち、吐き出したものを見つめた。
ピンクの物体は丸い豚……いや、人間だ。
緑のものも同様。青い蛇は申し訳なく小さくニョロっと縮こまっている。
思い出すソン。それは彼がヒョウタンマンに化け、飲み込んだチョ・メカブゥとサ・メカッパとそしてヘヴィー・メカニョロだ。
〝転生〟にはメカブゥとメカッパ相棒たちの生体パワーが必要不可欠だった。
クラリスのためだと話し合い協力を得たことだ。
三位一体、ソンの熱情にブゥもカッパも共鳴した。
死こそ常に覚悟していた。
ソンも身を捨てての挑戦だった。
転生は成功し、まさか彼らまで……とソンは思わず笑ってしまった。
メカニョロに関しては想定外のオマケだ。
ペロンと尻を向けうずくまったままのメカブゥに近づき、ぺんぺんと尻を叩く。
「おーい。起きろブゥ」
「……うぶぅ。あ? ……あれ?」
目を覚ましたブゥはソンに顔を向けた。
「あ。誰だよお前」
「ははっ。わからねえか? ソンだ。ソン・メカモン」
「うおあ、マジ?」
丸っこいゴツい巨体は筋肉質の力士のようで、鋭い目を丸く見開きソンを見つめ、自分の胸や腹を手で確かめた。
人間になった、チョ・メカブゥ。
「……な、なんか思い出してきた。俺は……ヒョウタンマンに飲まれ、そして」
「てか飲み込んだのはワイやて。あれに化けたの忘れてたか? お前のエネルギーが必要だった」
ガシリと抱き合う二人。
素っ裸で抱き合う男二人はかなり異様だがきっと感動のハグだろうと、見ている男は理解した。
じとっと見ているもう一人の男、それはサ・メカッパだ。
「よっ! 二人とも。ちょっとエッチだな」とメカッパが声をかけると、はっと二人は振り向き、彼もわいわい抱き入れた。
「おう、メカッパ! ワイがわかるんやな、ソンだ。メカモンだ」
「わかるさ。いかにも悪戯っ子なお前の表情」
「俺はどうだメカッパよ。このメカブゥもなかなかだろう?」
「うむ。天界での元の姿チヨ・アブドラに戻ったような感じだ。少し太めだがな」
「がはは。お前も元のジョー・メンドゥーサらしいが顔つきは穏やかに見える」
メカッパは黒髪ロン毛のクールな見た目。ヒール感は失せている。
彼はソンに礼を言う。
「ソン。バラバラになった俺を密かに食らい、よくぞ甦らせてくれた。ありがとう」
転生の大成功とそれぞれの無事を確かめ喜び合う三人の男たち。
そしてニョロニョロとソンの肩に這って上がる小さな青い蛇、メカニョロ。
ソンは青蛇の小さな頭を撫でて言った。
「お前だけはこの姿か。ニョロ。……この場所もいったいどこなのかわからない。まあ、いろいろ思惑は外れるもんさ」
兎にも角にも裸じゃまずいと、三人は草原の木々や岩陰を抜けて衣服の調達に向かった。
三人寄らば文珠の知恵。あれやこれやで服を着、靴を履き、さらに防護服も手に入れた。
「クラリスの脳波を分析して現実世界最低限の下調べはしておいた。この世界は〝ドラゴンフライ〟がいつ暴れ出し噛みつき、感染するかわからないという。ブゥもカッパも気をつけろ」
「「わかった」」
肩で縮こまるニョロの小さな頭を撫でるソン。
「ニョロもワイと一緒にいろ。いいな」
ソンの肩でニョロはうんうん頷いた。




