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生死門

水曜日正午、軍属港区基地、第二仮眠室。


「集まったな?」


スチームアイマスクで仮眠ベッドに横になっている穣。


「ええ、聞き忘れたけど。集合にテレポできる地点で良くない?」


「何よ今更?アンタは疑問持ってなかったでしょ?」


「あのな、ボクは森での巡回任務直後だぞ、夜も見回りある、休憩を少し取る必要あるんだ。」


「あ、ごめん、考えてなかった。」


「では出よう。」


「いや、私たちはいいけど、ジョーは迷彩服で行くつもり?土臭いんだけど?」


「あ…」


5分後、基地の入口で、道場見学の4人は城南区に瞬間移動してもらった。


城南区は普通の住宅がメインの非商業区域、電車の駅周りの商店街の範囲外だと、スーパーはおろか、コンビニすら珍しい区域。


住民数は海原一になる予定もあり、最初から海から距離をとり、軍用施設が多くある北の区域と離れる所に設置した。


海原の国民にとって、交番と病院が多いだけの影の薄い区である。


「そういえば、この間は咫尺天涯も万能じゃない話あったじゃん?今見れば十分万能じゃない?」


「あぁ、白染さんは軍属エリア含め、全ての区に少なくとも6ヶ所のテレポートスポットを設置しているからな、海原の範囲内だと、白染さんはどこにでも1時間内で着けるぞ。」


「ホワイトファントムは校外にまで噂があるのってそれが原因か?」


「それマジウケるね、別に情報を隠してる訳じゃないのに都市伝説になるなんて。」


「えっ!?アイツの資料って調べれば出るの?」


「多分出ないよ?公の場には出てないもの、でも白染の写真は軍のホームページに載ってるぞ、特別顧問として、軍階は五等よ。」


「何その等級?高いの?」


「部外者も分かるようにするなら大佐と同級、かな?」


「めっちゃ高いじゃん!?」


「そうよ、すごいじゃろう?」


「何その口調?むかつくんだけど?」


「コントはその辺にしておけ、着いたぞ。」


「え?早っ!」


「当然だろう?洪さんの道場の近くにテレポートスポットがない訳なかろう?四大達人の道場の徒歩圏内に各々テレポートスポットを設置している、師範の同意の元にな。」


4人の前は、『生死門』を芸術的に書いてある扁額を掲げている、1ブロック丸々占めた、ざっと2万人は入れられそうな大きくて伝統的な道場。


穣はノックしなく、一拍手をしたら、まるでノックみたいな音が年越しの鐘のように悠長に響き渡った。


「『カンパネラ』、耳の力(セカンドセンス)一感(シングル)変化異能(トランススキル)、白染がもっと攻撃的な異能(スキル)の開発の過程についでに作った実験的副産物よ、知らせに向いてるから軍で耳の力(セカンドセンス)をマスターしているヤツは殆ど習得している…って何その目?」


「いや、有子がそんな真面目な説明してくれるのが違和感があって。」


「なっ」


喧嘩が始まる前に、有子は紫苑に口を遮られた。


「達人の道場の前よ、騒がないの。」


話している内、道場の正門が開いた。


「ライブラリーハウスの方たちね?お待ちしております。」


聞くだけで『優しさ』を感じるような男性の声と共に、道場の人が出てきた。


黒のベリーショートに輪郭が柔らかい顔、古い書物で見たことのあるカンフー用の衣装は程よく細めの体を包んでいるので、身長が2メートル近くあっても威圧感を感じさせない、全体的に清潔さを感じさせる優男だった。


「話は掌門からかねがね、私は生死門第73代弟子、洪明峰(ホンミンフォン)と申します。」


「急な申し出ですまなかった、今日貴館を邪魔になるライブラリーハウスの者、東海林穣と申す。」


いつも寝不足気味に見える顔が一変、穣は営業マンみたいな爽やかな笑顔で答えた。


「なにそれ?」


「ジョーの営業用笑顔よ、他所の人がいるといつもあんな感じよ。」


火燐と有子がヒソヒソ。


「掌門は本日不在ですので、案内は私が務めます、何か質問がございましたらいつでもどうぞ。」


洪明峰は4人を道場の中に案内した。


「はいはい、掌門ってどういう意味?洪秀峰のこと?」


「ええ、そうです。」


洪明峰は掌門が呼び捨てされたことに全く不快を見せない。


「旧時代の時から、私の故郷だった国では、武術の流派の当主を掌門と呼びます。海原の法律ですと、法人の代表といったところですね。」


「洪さんって軍の人でしょ?民間法人の代表兼任していいの?っていうかここ法人なの?」


「洪さんは軍の武術指南役として名誉三等軍階を与えただけで、実際は外部協力者だから、厳密に言うと軍の者じゃないんだ。」


火燐の疑問に答えたのが穣だった。


「流石ですね、そういう細かいことは実は私達もあまり詳しくなくて、恥ずかしい限りです。」


話している間も、5人はすでに大きい演武場を3つ程通っている。


それぞれの演武場に、50をも超える人数が何かの拳法を練習している様子。


「こちらの演舞場は初級班、入門して間もない外門弟子が基礎拳法を習う所です。毎日3回各7クラス、内弟子が小一時間程の講座と教示を行います。一般的の見学はこちらになります。」


話しながら、洪明峰は廊下端のドアを開けた。


「奥は内弟子達が武術を習う場所です、どうぞ。」


「え?入っていいの?」


「勿論、基礎拳法を見学した所で、あなた方に何の役にも立ちませんでしょ?」


ドアを開けると、先ずは風雅な東方スタイルの庭園が目に入る。


「生死門では、体をある程度まで鍛え、そして全12種の基礎拳法を習得した者だけ、内弟子に成れる資格を得ます。現在の内弟子は38名います。」


「思ったより少ないな、最近ここから軍に入った人数から見て、もっといると思った。」


「ええ、生死門の名を背負って、軍の方に行きました者は皆内弟子でしたね。でも出て行った者はもう門人で、内弟子としては数えませんので。」


「それ、どこが違うの?」


「門人とは、指南免許を得た者を指します。立場的に教えられる側から教える側になる者です。門人は生死門を名乗ることができ、自分の裁量で生死門の拳法を他人に教授することが許されますので、色々審査もございますよ。」


「なるほど、つまり今軍に入った生死門の人は全員結構強い?」


「ええ、門人の資格取れたので、それなりのはずです。」


「いや、丈も負けたぞ、それなりだけじゃ片付けないでしょ?」


「2回な、基本的に組まられなければ、普通の殴り合いだけならすぐは潰されることはないが、一度どこかが掴まれるともう手も足もでない。特に丈を負かしたあの二人、組むまでの運びがとにかくうまかった。丈が肩と腰を捕まえられてから締め落とされるまで30秒もなかった。」


「もしかして真守と肇人?」


「確かにその名前だった、そのレベルにもなれば、流石に名前も覚えられるんだな?」


「はい、あの二人は真伝弟子になり得る者だったので…あ、真伝弟子とは、内弟子のもう一つ上の段階、宗師の弟子のことです、生死門の真の道統を伝承する者。そして宗師とは、免許皆伝と指南免許を同時に獲得している者。現在の生死門だと、掌門と私だけになります。現在の生死門は私を含めて、真伝弟子8人います、その内2人は私の弟子です。」


「そちらは僕の相手だな?」


「いえいえ、まさか?皆に異能(スキル)と組手の経験がまだないので、本日の相手は私が務めます。」


「何?相手って?」


「今日の見学は、生死門の鍛錬方法を組手で教えてもらうことになっている、白染さんのつてで。」


「何それ?聞いてない!」


「じゃなかったらわざわざうるさいの誘う訳ねえだろ?僕はこれ終わったら部隊に戻るから、ここのことを白染さんに伝えとけよ。」


「これって、試合前の偵察?ありなの?」


「構いません、武術とは伝承、生死門の武を知りたい者には、いついかなる時も拒まぬのが掌門の教え。まぁ、普段なら度はありますが、今回は『すべてを明かせ』と、掌門直々の指示でしたので。」


「私も参加していい?」


「どうぞどうぞ、皆さんも是非体験してください。」


話がひと段落でちょうど、洪明峰はあるとても大きい扉の前で止まった。


「こちらは真伝弟子専用の演武場、道統の授業も普段こちらで行います。」


扉を開けると、100畳をも超える巨大な空間。一番奥の床の間の前に二人が正座している。


「彼らは私の弟子、今日も見学させて頂きますね。」


「構わん、機密に触れない程度なら、異能(スキル)を教えることだって出来るぞ?」


「とても魅力的な提案ですが、今は遠慮します。」


話が終わって、組手をする二人は構え始めた。


如何にも自然体な洪明峰に対して、穣はオーソドックスな構え。


両脚は丁の字並びで肩幅の二倍くらい開いて、右足が前。


重心は後ろに下げて、両手も腰回りの高さで掌が下向き。


「左利き?これは組手の時苦労しましたね?」


「どうして分かる?」


「軍用格闘術の編集者は皆右利きだもの、技は当然右利き向きに作っています。武術は何でも鏡映しすれば吉ってわけではないので、きっと所々に違和感を感じるでしょう?」


「そうかもしれんな。」


「それでは受け身だと勝ち目はありませんよ、自分から攻めて来なさい。」


穣は少し考えてから、急に右手で一撃を繰り出した。


洪明峰との間はまだ距離あって、足も動かない体勢では当たる筈のに、洪明峰は左手で明らかに何かを弾いた。


その隙に、穣は大きく洪明峰の左に回り込んでまた右ストレート。


洪明峰は目もくれずにそのまま肘を上げれば、今回は硬いものがぶつかり合うような鈍い音が響いた。


穣はすでに重心を下し、鋭い下段蹴りは洪明峰の膝裏を狙う。


「中々いい筋ですね。でも格闘では、狙いが特定すぎると、敵の動き一つで空振りになりえますので、もっと広い視野を持った方がいいですね。」


洪明峰は左に半歩程足を開いただけで、踵が当てる筈の膝裏にふくらはぎが当てて、ダメージがなくなった。


穣はつかさず猫だましのように一拍、かなり力を入れたように見えたが全く音がなかった。


洪明峰が頭を少し後ろに下げると、穣の両手が合わさった直線上の天井が引き裂かれた。


「うわっ!何?」


「あれ『飛音斬(ひおんざん)』よ、耳の力(セカンドセンス)を使う変化異能(トランススキル)、威力は一感(シングル)異能(スキル)の中ではトップクラス。本質は振動なんで、普通の防御をも浸透する性質あるよ。」


火燐の質問に答えたのは有子。


「拍手に音がないのはジョーの出力が高いから、普通の一感(シングル)マスターが飛音斬使う時はちゃんと音するからね。」


解説している間、穣の攻撃も止めなかった、流れるように一手また一手と続くが、洪明峰は自然体のまますべて受け流した。


約2分後、穣はやっと動きを止めた。


「もう止めるんですか?まだまだ攻める余地があると思いますが?」


一感異能(シングルスキル)は一通り使ったが、このまま続いても聞くとは思わない、二感異能(ダブルスキル)だと威力も影響範囲も大き過ぎるので、ここでは使い辛い。」


「気にせず使ってみなさい、部屋の修繕費は請求しませんから。」


「ではこれを受けてみろ。」


穣は言いながら両手を摩擦し始めた。

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