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日置金勝紀

デザート後間もなく、火燐は自分の寮に帰った。


白染が送ると言い出したら、一瞬紳士だと見直そうとした火燐の視界は一瞬で自分の寮に一番近いバス停になった、しかも白染の姿が見えない。


また咫尺天涯の何らかの応用だと理解した火燐はどこかがっかりしたような感情が湧き上がった。


それから火燐は数日間、普通の学園生活を過ごした。


昔と違うのは、ライブラリーハウスで夕食をするようになっただけ。


そして、金曜日はすぐやってきた。


火燐は当日の昼に宇多子に言われた通り、放課後は一回寮に戻ってからすぐ図書館の正面入口に行った。


図書室の正面で、白染と宇多子と雛と光が待っている。


そして図書室前の送迎エリアに、とても高級そうなリムジンが停めている。


宇多子と光はいかにも今時のファッションにあっている服着ているが、雛だけやたらひらひらが付いているエメラルドのゴスロリドレス、すごく人目を引き寄せている。


そして白染はいつもの眩しい程白い服じゃなく、灰色がベースのカラーシャツにインディゴブルーのズボンでとてもシンプルな恰好。


世辞なしでも白染はイケメン、そんな彼が美少女三人と揃ってリムジンの前に立つと、人目が引き寄せるのは当然だ。


「準備はよいか?では出発だ。」


「あ、はい。」


いつもと違う感じだが、圧は同じく強い。


「火燐さん、すみませんね。パパに車貸してくださいと聞きましたら、これが来まして、私もびっくりしました。」


普段の感じで忘れがちだが、流石お嬢様というところだ。


「本日は日置金さんの夕食前のプライベート時間を頂きました。彼は出張がない日、八時半に日置金第六ビジネスビル最上階にある自宅に夕食をされる決まりです。」


「ここから白金区までは結構距離ありますよね?何故咫尺天涯使わないの?」


「咫尺天涯は、目的地に特殊な印がなければ、移動できません、その特殊な印の役割を果たすのは普段私達ライブラリーハウスのメンバーです、白染が特にマークする地点、若しくは何か自分の物を置いた場所へも移動可能ですが、今日の行先はどちらも当てはまりませんので、咫尺天涯使うと直接日置金さんの傍に出てしまいます。」


宇多子の詳しい説明に、火燐は「へぇー」としか返事できない、咫尺天涯も思ったように万能ではないらしい。


「そう言えば、何故この娘達も一緒に来てますか?」


「日が暮れると、雛ちゃんと光ちゃんは白染と離れたくないから、今日は外食しようと思いまして、白染は火燐さんと一緒に日置金さんに会いに行きます、私達はその間その下のデパートで少しショッピングしようと思います。」


「へぇー」


そしたら話が途切れた。


いつもは知りたくもない無駄な情報を押してくるのに、今回だけ黙るとは、火燐は何故か期待を裏切られた感じになった。


白染は何か物理学の分厚い本を読んでいて、宇多子は光に宿題を教えていて、雛は目を瞑っている。


こんな中、火燐は一人だけそわそわしてしょうがない。


幸い、運が良かったか、車は一度も信号を待たずで目的地に思ったより早く着いた。


白染に付いて、カウンターでアポイントの旨を伝えたら、すぐ内部人員専用のスピードエレベーターに案内された。


アポイントがあると知った途端、カウンターの人がとても丁寧になったのは気のせいじゃないけど、火燐にとって気に掛けることじゃないので、気にしなかった。


デパートがある80階に着いたら、白染はまた天涯咫尺でこの場にいなかった有子達を何もない所から引っ張り出した。


何回見ても不思議と思うこの異能に、火燐は未だに完全受け入れられない。


そして、エレベーターは108階に着いた。


エレベーターから出ると、広く開放感のあるスペースが開いた。


目の前はすぐ下向きの階段、そして高さとして107階になる所がとてもリラックスできるような感じのリビング。


左手の壁一面を占める500インチ超えの高級スクリーンに、何かのFPSゲームが画面いっぱいを占めている。


スクリーンの前は映画でよく出るフローリングより少し沈んだ空間、その境目に一目でオーダーメイドだと分かるような優雅な弧を描いた赤色のソファー。


そのソファーに4名の男性が座っていて、その内2名はコントロールデバイスを手にして、スクリーンに集中している。


「日置金勝紀。」


白染が直接相手をフルネームで呼んだら、コントロールデバイスを持っているSPらしい大男二人がギロッと白染の方を睨んできた。


「思ったより着きが早かったな。」


コントロールデバイスを持っていない方の青年が座ったまま白染の方に向いた。


「晩飯食ったか?一緒にどうだ?」


「いらん、話はどこでする?」


「そこのテーブルでもいいし、なんならここでゲームやりながらでもいいぞ。」


「冗談はよせ。」


白染の視線で、青年はやっと立ってダイニングテーブルの方に向かった。


そしたら、ゲームしていた二人含めて、スーツの男三人も付いて行った。


そして一言もなく、元々台所に待機していたメイド達はテーブルにお茶と茶菓子を出し終わっている。


「ま、大体のことは分かっているから、何が欲しいか簡単に言え。」


青年は台所に背向ける真ん中の席についた、SP二名が彼の後ろを左右に立った。


もう一人、比較的に小柄で顔立ちが中性的なロングヘアの男性は何故か彼の左側の席についた。


その男と対して、白染は真ん中の右の方席についた。


これは火燐が初めて白染が結跏趺坐と正座以外の座り方する所を見た。


まるで教科書に出るような端正で威厳のある座り方だ、お蔭で火燐も日置金勝紀の真正面の席につく勇気が湧いた。


「はっきり言うが、今日は小娘と話する為に時間を割いていない、俺の目的はホワイト、お前にある。」


が、話の相手は全く会話する気なさそうではどうにもならない。


「お前こそ、本当に私に興味があれば、私が連れてきた人にも少し位尊重を示したらどうだ?」


「きさ…」


勝紀の左後ろのスーツの男はすぐ何か言おうとしたが、声が途切れて言葉になかった。


「よせ。」


勝紀は左手を上げて、手を出そうとしたSP二名を止めた。


「今のはミュートか?耳の力(セカンドセンス)をマスターした人だったら誰も使えるような簡単な異能(スキル)だが、発動がこんなに早いのは初めてだな、そしてこんなに長く続くミュートも見たことなかった。」


「普通のミュートは変化(トランス)異能(スキル)だからな、持続的音を消すのに異能(スキル)のターゲティングをし続けなけらばならないが、定制(レギュレーション)として使用すれば消耗の方が大きいが、集中し続ける必要がなくなる。」


「ほう?聞いた事のない技術だな、いくら出せば教えてくれる?」


「先ずは火燐の話を聞けばどうだ?私にとってはこっちの方が目的だ。」


「そういうなら仕方ない、何がしたいか聞いておこう。」


やっと話が戻ってきた、火燐はすぐ自分があったことを言おうとしたが、全く尊重する意思を見せない勝紀の口からは、火燐をムカつかせる言葉だけ。


「先に言っておく、小娘の家の事は知っている、特に何かする気はないぞ。」


「下のやつが何やるかをいちいち構う程暇じゃねぇが、今回のアポイントは直接軍の人から話が来たから、流石に調べた。」


嘲笑うような表情と口調。


「が、知った所でなんだ?どうでもいい町工場が一つ潰れる位で俺の時間を費やすのか?」


勝紀の態度に、火燐は一時言葉を失った。


「お前の時間こそどうでもいい、今の題は何をすれば、お前が彼女の実家の工場から手を引く?」


黙り込んだ火燐を2秒ほど見て、白染は話を展開した。


「誤解すんな、手を出すことすらしなかった、そっちの仕入れ先がこっちの事を勘違いして勝手に手を引いただけ、俺に当て付けのはやめて。」


「実際はどうであれ、事の起こりに日置金グループが出ている、誤解を解く為の行動を請求する。」


「断ろう、したこともなかった事の為に動くなど時間の無駄だ。」


「ではお前の協力を求めよう、何をすればお前が火燐の実家を助ける気が出る?」


「そうだな、お前は強いだろう?」


「お前と比べばな。」


白染にしては珍しい煽り、勝紀のSPがまた反応しおうとしたが、勝紀に止められた。


「事業申請の時でもう感じたんだ、お前は恐らくここの最強クラス並みの実力あるだろう?小娘の代理として試合に出てSクラスに上ったら、小娘の願いの他に、お前の願いも叶えてやろうではないか?」


「分かった、出る。」


白染の回答があっさり過ぎて、一度同じ話で断れた火燐が思わず白染の方に目を向いた。


「良い答えだ、これ持って下の受付に行け、話は通しておく。」


勝紀が手を上げたら、メイドが見るだけで高いと分かるトレーで一枚のカードを白染の方に持ってきた。


「初試合の時間はご自由に、今日中にやることも可能だぞ。」


「分かった、では早めに出よう。」


「それは受付で言いな、俺は具体事務やらんからな。」


「分かった、先に行く。」


と言った同時に、白染は火燐の肩を掴んで消えた。


「どんな異能(スキル)か分かった?」


白染と火燐が消える所を見て、勝紀は隣に座っている男性に尋ねた。


「分かりませんね、出回っている代物ではなさそう。」


男性は少し考えてから答えた。


「まるで過程がないような消え方、セキュリティにも一切引っかかってないし、推測したくても分かる事が少なさすぎ。」


男性は特殊デバイスを弄りながら、最後に頭を横に振った。


異能(スキル)トレードのマーケットを牛耳ってるお前も分からないのか?」


勝紀はがっかりしながら右手の人差し指で顎を掻いて、何かを考え込んでるようだ。


一方、白染は火燐を連れて、宇多子達の所に現れた。


「よっ、白染、結局最初の予想になったって?」


まだチェアに座っていた姿勢でした火燐は尻餅をついた、そして聞いたのは有子の声。


有子は『男前』という大文字を書いてあるダサTを着ていて、左手にコロッケで右手に持っていた焼き鳥を食べながら、もう棒しか残っていない右手を火燐の方に差し出した。


そんな油っこい手を掴むのは嫌に決まって、火燐は自力で立った。


そして白染と他のライブラリーハウスのメンバーはもうどこかに向かって移動していると気付いた。


「あの、先の件…」


慌てて追っていったら、また話が有子に遮られた。


「知ってるよ、ライブラリーハウスで断ったのに何故先はあっさりと試合に出ることになったか聞きたいんだろう?」


「有子、人の話を遮るな。」


例によって、有子に注意をしてから、白染は火燐の方に向かった。


「私が言ったのは、『最初から』暴力や武力でことを済ませようとしたのであれば、武力を提供する気はない。つまり、一度日置金勝紀と会話し、解決策は武力の他にないと確認できれば、武力を提供してもいいとのことだ。」


「これ本当に意味があるの?あの男の態度はあなたも見たでしょ?会話しようともしなかったのに、最初からこうやった方が早かったじゃない?っていうか私たちはどこに向かってるの?エレベーターはそっちよ。」


「意味はあるとも。」


火燐の連続質問に、白染は淡々と答え始めた。


「貴女は日置金勝紀ではない、もちろん私も日置金勝紀ではない、一度も会話せずに余地がないと決め付け、暴力でことを解決しようなら、それは本能に頼る動物と変わらん。」


「日置金勝紀の行動を確定できるのは日置金勝紀自身他ない、相手の考えは直接尋ねる他ない、やり方をどう転じるかは一度対面の交渉をしてからと、貴女と会った初日にもう言ったはずだ。」


火燐に3時間の講座を聞かされたことを思い出させるようなことを言いながら、白染はしゃぶしゃぶの店の前で足を止めた。


「そして何をするも先ずは食事だ、元々夕食前だろう?」


「予約時間15分前ですね、どうします?」


宇多子は明らかに男性仕様の腕時計を見ながら聞いた。


「待つか入るかだけだ、勝手に決めて構わん。」


白染がこう言ったので、宇多子は店と交渉し、全員を早めに入店させた。

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