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感の力

人格アンカーの話が終わったら、宇多子は火燐に新しい話を振っていないので、会話は一旦終了になった。


時間は宇多子が光と雛の宿題を見ながらの自習の中に穏やかに過ぎた。


「たっだいま!!」


午後5時半の少し前になったら、騒がしい有子が帰ってきた。


「あっちゃん、ここ図書室。」


ほぼ同時に帰ってきた千影が有子の後ろから言った。


「ごめんごめん、良いもん貰ったからちょっと興奮した。」


「話は入ってからにしましょう、ドアは何時までも開けたままにしない。」


「はーい。」


宇多子に返事しながら、二人は一緒に階段を下りた。


「宇多子、今日会長から蜂蜜分けてもらったんだ、晩飯に使おう。」


と言いながら、有子はリュックの中から恐らく容量は2升ある瓶を取り出した。


「今日の決まりはこれでいい?」


「えっと、やっぱり白染を待とう。」


そう言って、有子は蜂蜜が入っている瓶ををテーブルに置いたまま部屋の方に行った。


「園芸部のりんご、収穫した。」


髪や手に土まみれの千影は手にしているカゴの中から一袋のりんごを取り出した。


「おお!」


雛は目をキラキラしてよってきた。


「改良した肥料が効いて、収穫の周期が3ヶ月に短縮出来た。」


千影の顔に淡々としたドヤ顔が浮かんだ。


「あの、先からは何を起こっている?」


全く蚊帳の外になった火燐は質問した。


そしたら宇多子以外のメンバーは同時に『コイツ何聞いてんだ?』的な顔で火燐を見つめる。


「火燐さん、この瓶に入れている物は蜂蜜という、カロリーが低めでとても甘い食べ物で、こちらの赤い物はりんごという果物ですよ。」


結局火燐の質問に答えるのは宇多子でした。


「どれも旧世界ではよく見る食べ物だったようけれど、今では一般のスーパーでは販売されていませんね。」


そして東都が紹介したボクシングクラブの会長の家族に復興促進課で世話になっている養蜂実験場の職員がいる、海原では現在養蜂を2ヶ所だけ実験を行っている、海原学園の園芸部の顧問は農協の会長の兄弟など、火燐にとって余計な情報をペラペラと話した。


「お?早速来たか?思ったよりせっかちだな?晩飯食ってくか?」


スポブラに着替えた有子が出てきたら、やっと火燐がいることに気付いたらしい。


「あんたは家にいるといつもそんな恰好なの?」


前回の有子を思い出して、火燐は返事した。


「そうだが?気楽だし動きやすいし、このブランドはお気に入りなんだ。」


「この家に男もいるのに?」


「白染の事?気にすんな、見ねぇし、見られても減るもんじゃないし、っていうか見てくれた方が嬉しいけど?」


スイーツの雑誌を手にして、有子はテレビ正面のソファを独り占めした。


火燐は無言に宇多子の方に顔を向けた。


「私たちが搬入した際、白染は三つの承諾をしました。一つは絶対の自由、一つは強くなる術、一つは強固なアンカー。ですので特に他の皆に悪影響になっていなければ、これぐらいは自由の内に含まれるので誰も口出ししません。」


「子供に悪影響ないのそれ?」


「火燐さん、雛ちゃんも光ちゃんも子供ではありませんよ。彼女たちは自分の好みもセンスもあって、自分で服を選んでいますから。」


火燐は『つまりそのひらひらが無駄に多いドレスは自分で選んだのか』と言わんばかりの顔で雛に目を向けた。


今回宇多子は珍しく微笑むだけでノーコメント。


「そう言えば、会長は養蜂の技術はそろそろ大量生産の段階に移行できるようになるって、そん時あれちょっと買ってみない?」


雑誌を読みながら、有子は宇多子に聞いた。


「いいですね、何か蜂蜜を使うスイーツを一緒に作ってみましょう。」


「いやいや、買いたいのは蜂の巣よ、先月読んだ旧世界のレシピに蜂の巣を使う物があったじゃん?でも会長に聞いたら蜂の巣はまだそんなに産量がないから、今は売る予定がないって。白染に言えば何かなんないかな?」


「ええ?それ食べ物なんだ?」


「まずそう。」


「あっちゃん、また珍味挑戦?」


「燕の巣の件でまだ学ばないの?」


「この間焼いたあのトカゲ、酷かった。」


「あ、それ私も聞いた、先週紫苑姉ぇ来た時白染に苦情した、食堂に変な臭いを残したって。ちーちゃんそれ食べたの?」


「いいじゃん別に、当たる時だってあるっしょ?」


急に有子は他のメンバーの集中砲火を浴びた状況に、火燐はポカーンっとなった。


放っておくと永遠に続くような勢いでギャーギャーとなっている。


後ろに有子、右に雛、膝に光、更に右に千影、こんな会話のど真ん中(物理)の状態で、まだ微笑みを帯びながら読書できる宇多子に、火燐は初めて尊敬に近い感情を湧いてきた。


話が宇多子の家庭菜園に千影が勝手にニンニクを植えた話になった所、白染と葵が急に宇多子と雛の間に現れた。


火燐は思わず変な声を出してしまったが、ライブラリーハウスのメンバーは全員慣れているようで、誰もその過程のない現れ方に驚きを見せていない。


「蜂の巣。」


左手に持っている楕円形の物をソファに投げた白染。


「うぉー、これだこれ!」


仰向けていた有子は目をキラキラして体を起こした。


「今日は少し遅いですね。」


「蜜蜂に限定すると、巣の所は特定できんから、可能性ある所を全部探してみた。」


「では今日の晩御飯を決めましょう。葵ちゃんはどうする?」


「胃袋に優しい物希望。」


立っていると、白染の肩位の身長の葵が答えた。


「今日はお米の気分!」


雛が元気に答えた。


「りんごを使いたい。」


千影は手を挙げて発言。


「デザートも熱い物がいい。」


光はもうデザートを注文した。


「蜂蜜と蜂の巣、どっちがいい?」


自分の頭の半分位大きい蜂の巣を手に、有子はこう聞いた。


「「「蜂蜜でお願いします!!!」」」


「では今日はカレーにしましょう、デザートはアップルパイで、今日は誰が買い出しに行く?」


「あたし、行く。」


千影がこう言って白染に手を出したら、買い物リストはピッタリのタイミングに差し出された。


「ど…どいう状況?」


ここまでの流れがスムーズ過ぎて、火燐はポカーンっと千影が出かけて行った所までやっと話す機会を掴んだ。


「私達毎日の晩御飯はこうやって皆で決めますよ、それから買い出しと支度をします。」


「これで夕食は何時になるの?」


「うーん、遅くても8時でしょう、白染が急に返って来れない日は少し早くて、5時前後になる日もありますね。」


「今日のこの時間から見れば、7時半前後じゃない?」


蜂の巣をキッチンのどっかにやった有子はテレビの前でヨガし始めた。


「千影が野菜コーナーで時間を費やさなければね。」


リビングの隅っこでマジックキューブをいじっている葵が言った。


「今日はりんごの誘惑があるから、すぐ戻ってくんじゃない?」


「紫苑スペシャル券1枚、千影が野菜コーナーか園芸コーナーでウロウロするに賭ける。」


「のった!」


「もう、紫苑さんは賭けの為にそれを作った訳ではないですよ。」


「あの券ってなんなの?」


「これ?これは毎週の週末、皆戻ってきた時、しお姉に料理の注文が出来る券だ、毎週一人一枚配られる。」


何かハードル高い構えをしている有子が答えた、右手にはどこから出したか分からない手作り感満々なチケット。


「こいつは毎回変な物注文するから、紫苑さんにレッドカード出されてるのよ、チケット3枚がないと注文受け付けないって。」


葵からの補充情報はどうでもいいが、だからいつも他のメンバーと何かを賭けてるんだ?っと、火燐がこういう多少悪意を帯びた考えが脳に浮かんだ瞬間、有子の何か含みのありそうな視線を感じた。


有子は結局何もしなかったが、火燐は一瞬背骨に悪寒が走った。


それから特に何もなく、千影は40分後買い出し終了の報告したことで、賭けは有子の勝利でした。


そして白染は右手を何もない所に何かを掴もうとする動作をしたら、千影がその手の先に現れた。


その異能(スキル)は天涯咫尺という、咫尺天涯と逆で、他所にいる標記された目標を白染の傍に移動できる操作異能(コントロールスキル)である。


もうライブラリーハウスで何があっても驚かないと決めた火燐も流石に驚いた。


そして宇多子が食堂用の50人用ドデカ鍋を取り出した瞬間、火燐は目を疑った。


最終はご飯も映画でしか見たことのない大釜で出された時、火燐はもう驚く気力もなくなった。


「あんた達はいつもこんなに食べてんの?」


「いんにゃ?これは凡そ半分が白染の分なんで、あたし達はそんなに食べないよ。」


つまり6人で25人分食べているでしょ?っていうか1人で25人分食べているって、胃袋はどういう構造なのよ?


ツッコミたくてもツッコミきれない火燐が、名状しがたい表情になってしまった。


「火燐さん、(センス)は一つでもマスターしましたら、体内に自然の力を影響する為の力が蓄積するようになります。その力は体内のエネルギーから転換されますので、沢山食べる必要があります。」


全員が丼ぶりを手にしている中、唯一控えめな皿を使っている宇多子が答えた。


「エネルギーの摂取が足りなかったら、体はエネルギーを得ようと、先ず細胞から分解して、やがて筋肉、骨と内臓をも分解してしまいます、つまり死活問題です。」


「違う(センス)はマスター後、毎日必要なエネルギー量も違います。具体の値に個人差ありますが、比は必ず身舌鼻眼耳意の順になります。」


身の力(フィフスセンス)耳の力(セカンドセンス)の凡そ3倍のエネルギーを消耗しますが、意の力(シックスセンス)だけは何故か食欲が少し旺盛になる位です。」


「必要のエネルギーの量は必要エネルギーが一番高い方に基準されます、つまりセンスを幾つマスターしても、毎日の必要エネルギーはマスターしたセンスの中で一番高い方になります。」


「そして何故か食材に肉を入れれば、エネルギーの必要摂取量は減少します。実験の結果から見て、単純に糖質を摂取するより、肉だけを食べる組は、摂取カロリーの総量は1/5になっていても自食は発生しなかった。」


「因みにこの(センス)の力はまだ命名されていません、名前絶賛募集中ですよ。」


また要らない情報に、火燐はノーコメント。


宇多子のカレーは言葉をなくす程美味しかった。


大量に入れた豚と鶏の肉は別々に処理された為、両方程よい柔らかさになっている。


カレーのルゥも何重かの隠し味があって、美味しさが波のように口内を打ち、舌の力(フォースセンス)がレベル2をもってしても旨みの源が分からない。


最も、この肉が贅沢品で、野菜の値段も中々高い時代で、火燐は実家にいた頃も今も、一番よく食べるのは完全食か栄養補充食、そして魚と根茎系の野菜。


お米も肉も一ヶ月に一回食べれるのが中流階級の証の現代では、こんな食卓はもはや裕福層しか体験できない。


こんな野菜も肉も白米もいっぱいなカレーは食べたこともないから、隠し味が分かる訳がない。


「どうよ?美味しいだろう?」


何故かドヤ顔をしている有子はもうおかわりしている。


普段の火燐ならスルーするはずだが、カレーのあまりの美味しさで陶酔状態の火燐は頭を縦に振るしかできない。


結局、その日の火燐はおかわりを2回もした。


そして驚くことに、宇多子はおかわりしなかった。


「私はまだどの(センス)もマスターしていませんので、間食をこまめに取れば間に合っています。」


聞くと、こう答えられた。


どうやら、人対象の定制(レギュレーション)異能(スキル)は、相手が一つでも(センス)をマスターしていると、持続時間がぐんと下がるらしい。


探知(センサー)異能(スキル)で見た所、対象になる者の(センス)の力が定制(レギュレーション)の構成をジャミングするのは明白。


そして宇多子の状態では、意の力(シックスセンス)以外をマスターしても自分を治せない為、今は他のセンスの進捗を抑えて、意の力(シックスセンス)のマスターに全力を注いでいる。


因みに、意の力(シックスセンス)は六つの(センス)の中で最もマスターが難しいセンス、今マスターしている者は白染を含めてもたったの11人、その中意の力(シックスセンス)を最初にマスターしたのは3人だけ。


宇多子は現在、身の力(フィフスセンス)をレベル4、他4つのセンスは全部レベル5もあるが、意の力(シックスセンス)はまだレベル3しかなく、道のりはまだまだ長い。

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