3話 アテナ2
早速のブクマ、評価ありがとうございます!
「よっしゃーー!
着いたぞーー!!」
全力で街中を疾走する事約15分。
西のフィールドに到着するなり、アテナさんが吠えます。
西のフィールドは先程伝えた通り荒野になっています。
木々もなく、あるのは荒れた大地と綺麗な青空。
そして、至る所にモンスターの影が見えます。
「おっ、早速来たな」
アテナさんの言葉通り、近くにモンスターが近寄ってきました。
近寄って来たのは体長1メートル程度の狼です。
狼が「グルルゥ」と唸り声を上げると、狼の上に『ワイルドウルフLv.10』という文字とHPバーが表示されます。
これは戦闘時の演出になり、こうなることでバトルが始まります。
「よっしゃ、来いや!」
アテナさんが構えると同時に、ワイルドウルフが駆け出し飛びかかり攻撃をしかけます。
「しゃらくせー!」
アテナさんがそれに合わせ、ワイルドウルフの胴体に見事な蹴りをカウンターで入れます。
今のでワイルドウルフのHPバーが1割程度削られました。
なんていうか凄いですね。
テストプレイの時の格闘家は戸惑ったまま攻撃を喰らい、そのまま死んでましたから。
ですが、残念ながらレベル差があります。
「んなっ!?」
ワイルドウルフの勢いは止まらずアテナさんを勢いのまま押し倒します。
あっ、アテナさんのHPバーが今ので8割程度削られレッドゾーンです。
勿論、それで攻撃が止まる事はなく、ワイルドウルフが噛みつき攻撃を仕掛けます。
「舐めんなっ!」
「キャウゥ!」
アテナさんがワイルドウルフの横っ面をぶん殴ります。
今のはクリティカルでノックバックが入ってますね。
ワイルドウルフのHPが2割程度減り、噛みつき攻撃がキャンセルされました。
ワイルドウルフは一旦引き、素早くアテナさんが立ち上がります。
そして、再び対峙しますが、戦況は圧倒的にワイルドウルフが有利です。
アテナさんは後一撃でも喰らえば終わりですが、
「オーケー、オーケー。そういう感じか」
アテナさんは不敵に微笑みます。
そして、再びワイルドウルフが飛びかかり攻撃を仕掛けると、
「ふんっ!」
と、アテナさんは再び蹴りでカウンターを当てると、コマみたいに体を回転させ、飛びかかり攻撃を回避しました。
着地したワイルドウルフはすぐさまアテナさんの横腹に飛びかかり攻撃を仕掛けます。
が、それも横にステップを踏み、躱しながらワイルドウルフの脇腹を蹴り飛ばしました。
「うわぁ、マジですか……」
思わず、心の声が漏れてしまいます。
初めての戦闘でここまで闘えるとは全くもって思ってませんでした。
本来ならクエストをこなして戦闘に慣れたプレイヤーが、レベルを10以上まで上げ、かつ4〜5人のパーティーで倒すのが想定していた戦い方なんですけどね。
つまり、弓や魔法使いが遠距離から攻撃し、
接近してきたワイルドウルフを盾や槍などのガード役が引きつけ、
剣士や格闘家がタコ殴りにする戦法です。
アテナさんはそんなセオリーを無視し、ワイルドウルフのHPを残り3割程度のレッドゾーンまで持って行きました。
ですが、本番はここからです。
レッドゾーンになった敵はアルゴリズムが変わります。
俊敏性が1割程度上がり、新しい攻撃方法が増えます。
と、解説している間にワイルドウルフが空を見上げました。
あれは遠吠えの前兆です。
遠吠えは近くにいるワイルドウルフを1〜3体ランダムで呼び寄せます。
普通なら苦戦必須のスキルですが、
「ワォォオオオーーー」
「うっせぇ!!」
アテナさんは隙ありと言わんばかりにワイルドウルフの顔面を蹴り飛ばします。
あっ、クリティカルヒットでノックバック入りましたね。
遠吠えのスキルがキャンセルされてます。
「もう一丁!」
アテナさんはノックバック中のワイルドウルフを再度蹴り飛ばします。
ワイルドウルフのHPは0になり、ワイルドウルフはモザイクのカケラを残し消滅しました。
うわぁ、勝っちゃいましたよ。
若干、ドン引きです。
なんて足グセの悪い方でしょうか。
私が呆れていると、アテナさんにはお金とドロップが入り、レベルアップの効果音が響き渡ります。
アテナさんは首を傾げつつスタータス画面を開きます。
名前:アテナ レベル:4(3up) 職業:格闘家
HP:8/45(15up)
MP:0
攻撃:45(15up)
防御:16(6up)
速度:58(8up)
知力:13(3up)
スキル:足蹴りLv.1(new)
称号:下克上Lv.1(new)
レベルアップボーナス:3pt
これが今のアテナさんのステータスです。
ワイルドウルフ1体で3Lv.アップは流石ですね。
「おーい、ソフィア。
このスキルってなんだ?」
アテナさんが首を傾げて、私に訊いてきます。
「えっと、スキルは一定の条件を満たすと付与されます。
詳細につきましては、ステータス画面の足蹴りをタップすると確認できます」
「ふーん」
アテナさんは足蹴りをタップして詳細を確認されます。
因みに、足蹴りの詳細はこんな感じです。
足蹴りLv.1
足蹴りと言うことで軌道に補正が入る。
補正後の攻撃はダメージ率、クリティカル率が上昇する。
「足蹴り」
アテナさんが早速スキルを使用されます。
アテナさんの足が赤く光り、エフェクトを残しつつ軌道を描きます。
「なるほどな。
なぁ、アテナ、このスキルって削除とか出来んの?」
「任意のスキルを長押しすると出来ますけど、なんでですが?」
「いや、要らんし、これ」
「はい?」
私が疑問に思ってると、アテナさんはさっさとステータス画面を操作し足蹴りのスキルを削除しちゃいました。
「えっと、なんでです?」
いや、本当何してるんでしょうね。
「いや、わざわざ技名言うとか面倒だし、なんか補正が気持ち悪い」
「いや、それはそうかもしれませんが」
スキルがあると、戦闘がかなり楽になるはずなんですけどね。
アテナさんは削除したスキルの事は忘れ去り、次に称号を確認します。
下克上Lv.1
格上の敵を倒した者に送られる称号。
レベル差がある相手へのダメージ率、クリティカル率が僅かに上昇する。
「これはまあまあだな」
「えー」
アテナさんは1つ頷くと、特に感慨を見せずにステータス画面を閉まっちゃいました。
お金とかドロップ品の確認はなしです。
「さて、次の相手はどいつかな?」
アテナさんはそういって、敵を探し始めるのでした。
#
それからというもの、アテナさんは僅かな時間でワイルドウルフやワイルドスコルピオン、ワイルドコンドルを倒しちゃいました。
もう、なんて言うか慣れました。
今後、決してアテナさんで驚かないと決めました。
途中、最前線を様子見で来たプレイヤーがアテナさんの姿を見てポカンとする出来事がありましたが、アテナさんは気づいてませんでした。
そのプレイヤーがライブ機能を使おうとしてたので、アテナさんのプライバシー設定を変更しときました。
販促のため、ライブ動画やスクショ機能搭載の件は告知してましたが、許可を取らずに使用するのはマナー違反ですよ?
ちなみに、変更したプライバシー設定では、動画のアテナさんはモザイクが常にかかるようになっています。
プレイヤーさんも気づいたのかライブ動画を諦め、メニューから公式掲示板に書き込みを始めました。
この掲示板はゲーム中でもログオフ中でも確認出来る優れものです。
『やっぱりVR MMOと言えば掲示板だよなぁ!?』という運営の熱い想いがあったそうですが、ここでそれをするのはオススメ出来ません。
なぜなら、っと。
掲示板を書き込みしてたプレイヤーがワイルドウルフに気づかず瞬殺されましたね。
南無三。
そうこうしている内にあっという間に連続ログイン制限である3時間が近づいてきました。
他の皆さんからもそろそろログアウトするよとのメッセージが来始めます。
「アテナさーん!!
そろそろログアウトの時間ですよーー!!」
「おぅ、マジで!?
なら、すぐ終わらせるか!!」
と、ワイルドウルフ2体を瞬殺します。
そして、響き渡るレベルアップの音。
結局、アテナさんはこの短時間でレベルを12まで上げました。
間違いなく最速記録だと思います。
「よっし、帰るか!」
アテナさんはそう言うと、他の3人にメッセージを送り、時間でログアウトされました。
ログアウト時の顔は大変満足されたようで満面の笑みを浮かべてました。
途中、ドキドキハラハラ見ていましたが、なんだかんだで私も楽しめましたし、アテナさんも満足されてたので良かったです。
次回、アテナさんが来るまで私も掲示板を確認出来るようなので、掲示板を見ながら時間を潰そうも思います。
それでは、皆さん、お疲れ様でした。
皆さんのご感想を心待ちにしております。
難しければ次はアリス、堕天使、ティアの中の誰かの話が読みたいとかでもOKです。
ただ、辛口過ぎるとメンタルやられるので手加減して頂けると嬉しいです(笑