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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【裏話】湖宵とホモる (ド直球) 高校生活
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裏15話 思い出の体育祭③ 湖宵ちゃん激おこ事件 高二 一学期

 「三五の……バカァァァ~ッ!」


 叫び声が響き渡った次の瞬間に、湖宵の姿が……消えた!?

 否、オレの真下に居た! 今のほんの一瞬にオレの間合いに踏み込み、潜水艦(サブマリン)の様に身を沈めたんだ!

 超低空タックル!? いや、それも違う! 

 湖宵の細い右腕がビュビュンッ! とムチの様にしなって、先端の掌がオレの下顎を打ち抜いたぁ!


 ズバッッシィィィィン!


 ギュルルルン! ズッシャアァァ!


 湖宵にぶっ飛ばされたオレは三回転半ほど回転した後、地面に叩きつけられた。


 「痛ぃぃぃぃぃってえぇぇぇぇ!?」


 痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 痛いっ! これマジで前代未聞の痛みなんだが!?

 想い人にビンタされた時は普通ならショックで呆然とするんだろうが、あいにく「痛い」以外の感想が出てこない。いや、鋭い痛みが過ぎ去ったら寧ろ感動すらしたね。鍛えた肉体がまるで意味を成さない鋭い一撃。鎖分銅でブン殴られたみて~だ。


 「さ、三五……。ご、ご、ごめ……」


 見る見るうちに青ざめていく湖宵。でもオレはその事に気付くのに少し遅れてしまった。あんまり痛かったもんで逆にハイになっていたからだ。


 「う、うぅぅぅ~っ!」


 ダッ!


 あっ、湖宵が立ち去ってしまう! オレのアホ! ビンタの威力に感心してる場合じゃねぇよ!


 「ま、待って湖宵……くっ、あ、足が!」


 足がっ! 足がブルブル震える! ま、全く力が入らない! 立てない! 完璧にK · O(ノックアウト)されてる!

 ああ~っ! 湖宵っ! 待って~っ! 


 

 「もう。アンタ達何やってんのよ。バカねぇ」


 メイお姉さんだ。オレの側にしゃがみこんで顔に濡れたハンカチを当ててくれる。

 冷たくて気持ち良い。少しの間ジッとしてよう。


 

 メイお姉さんに介抱されている内に足が動くようになってきたぞ。


 「ありがとう、メイお姉さん。オレ、湖宵を追わなきゃ」


 「痛かったね、三五ちゃん。でもお坊っちゃまのこと、あまり怒らないであげてね?」


 「もちろん。湖宵も傷付いて、オレと同じくらい痛い思いをしたんだから。そう思えば怒るだなんてとんでもないよ」


 自分で言ってハッとする。そうだ。オレが顎に受けたこの激痛は、そのまま湖宵の心の痛みなんだ。

 今更、ぎゅううぅっと胸が締め付けられるように苦しくなってきた。

 早く、早く湖宵を迎えに行かないと!



 湖宵は基本的にとても明るくて、ちょっとお調子者な性格をしている。でもその内心はとても繊細で心優しい。そして地頭が良くて思慮深い。

 だから衝動的に学校を飛び出したりはしないハズだし、きっとオレを叩いてしまった事を気に病んでいるに違いない。


 人気が無いけれどそれほど見付け難くない。そんな場所に隠れて、湖宵はオレを待っているハズだ。


 例えば校舎と校舎の隙間にある、この影なんかに……ホラ居た。


 

 「あっ……! さ、三五……。あ、あ、あのっ」


 叱られる前の子供の様に小さくなっている湖宵。

 でもそんな顔をする必要は無いんだ。湖宵は何も悪い事をしてないんだから。まずはそれをわかってもらわなくては。


 「湖宵っ! ごめんなさい! 全部、全部、オレが悪かった!」


 背筋を伸ばして、深く深く頭を下げた。


 「えっ? えっ?」


 「もう二度とエロ姉ぇの挑発に乗って、下品なお遊びに付き合ったりしない!」


 「あぁ……うん。そうだね。それはマジでそうして欲しいけど……。」


 「あとオレのファンのお姉さん達とも、もう無闇に触れ合ったりしないから! これからは節度のある態度で……」


 「ま、待って! お姉ちゃん達にはそのまま優しくしてあげて! ボクわかるんだ。Q極TS女子にとって純粋に一人の女性として見て貰える事がどんなに嬉しいかを……。だから三五にお姉ちゃん達の王子様になってあげて欲しいんだ」


え? どういうことだ? 湖宵はオレの八方美人な態度が嫌で怒ったんじゃないのか?


 「さ、三五! 叩いちゃってごめんなさい!」


 戸惑うオレに対し、今度は湖宵が頭を下げた。


 「良いんだよ。オレみたいなヤツには良い薬さ」


 「違うの! 三五を叩いちゃったのは、悔しかったからなんだよっ!」


 どういう事だろう? 悔しかったって何が? 複雑な乙女心の機微はオレにはわからない。ここは心して湖宵の言葉を受け止めなければならない場面だ。


 「三五の周りのお姉ちゃん達は皆、凄く美人だから……。エロ姉ぇだって中身はともかく顔とスタイルは良いし。それなのにボクは男の子の身体でいなくちゃいけないからもどかしくて……つい焦っちゃって、悔しくて……!」


 俯き肩を震わせながら、心情を吐露する湖宵。


 「終いには三五がメイお姉ちゃんと仲良くしてるだけでもモヤモヤするようになっちゃって……! そんなのダメなのに! ボクは皆に優しい三五が好きなのに! 焼きもち妬いたり八つ当たりしちゃダメなのに……。暴力まで振るって……最低だよボク……う、うぅっ……」


 ポロポロと涙をこぼしだした湖宵を、オレはたまらず抱き締める。

 オレがこの悲しい涙を止めてあげなきゃ……!


 

 「良いんだよ、湖宵。モヤモヤする気持ちをオレに全部ぶつけて良いんだよ」


 「よ、良くないよぉ! だってそんなのって非道いじゃん! ワガママじゃん! ボクはもっと素敵な人になりたいのに!」


 イヤイヤと首を振り、湖宵はオレの腕の中で暴れる。それでもオレは湖宵を離さない。


 「でもさ、モヤモヤする気持ちって抑えられないでしょう? だったら我慢しないでパ~ッとぶつけて発散した方が健康に良いと思うよ」


 「え、ええぇぇ~……? で、でも三五! ボクに叩かれて痛かったでしょう!? あんなのはもう嫌でしょう!?」


 「あの一撃、マジ超踏み込み足りてたよね (笑) すごいスナップ利いてたし (笑) 何やらせても上手だよね、湖宵って (笑)」


 「何笑ってんのっ!? バカなのっ!? 理不尽に怒られたり不機嫌な態度とられたりしたら、悲しいでしょう!? 腹が立つでしょう!?」


 「だって仕方ないじゃん。モヤモヤするならさ。寧ろ溜め込まないでドシドシぶつけてよ! 余裕で許すからさ! 何せオレは湖宵と人生を共にするパートナーなんだからね!」


 「はぁぁぁぁぁ~~………………」


 湖宵が超巨大な溜め息を吐いた。あれ~? オレと話をするにつれて涙が引っ込んだのは良いけれど、同時に呆れられているような気がする……?


 「三五はさぁ、物事を単純に考えすぎ! 悩んでるこっちがバカみたい! 何さ! 仕方ないって!」


 「アハハハ、湖宵が大好きなんだから仕方ないんだよ♪」


 オレの胸をポフポフ叩く湖宵。一瞬でいつもの調子に戻ったみたいだ。やっぱりオレ達は良いコンビだね。



 「あのね、三五。いつも通り優しくしてくれて、可愛がってくれたらボク、焼きもち妬いたりしないからね」


 「うん、お嫁さんの湖宵はスペシャルに可愛がるからね」


 「うん♡ あっ、ボクが叩いた所、赤くなっちゃってる。痛そう……。ちゅっ♡ ちゅっ♡」


 おお~っ♡ 打ち抜かれた顎を優しいキスでアフターケアしてもらったぞ♡ こんなサービスがあるのなら何回でも叩いてもらって構わない。ストレス発散、お待ちしております!


 「可愛いよ~っ! 湖宵~っ! ん~っ♡」


 「ひゃっ!? ん、ん~っ!? んちゅぅぅぅ♡」


 辛抱たまらず湖宵の唇を奪う。

 仲直りのキス ・ たっぷりver. だ。


 「ぷはっ♡ フフフ♡ キスは湖宵とだけしかしないから♡ 安心してね♡」


 「ぷはぁぁっ♡ も、もうっ♡ ボク今、男の子だってばあ♡ ダメだよぉ♡」


 そんな嬉しそうなトロトロ顔で言われても説得力無いなぁ~♪ 


 林檎みたいに顔を真っ赤にさせる湖宵と、た~っぷりイチャイチャする。

 心いくまで楽しんだら、メイお姉さん達の所に帰ろう。そろそろご飯を食べないとね。

 仲直りもした事だし安心したらお腹が空いたよ。楽しい楽しいランチタイムと洒落込もう……としたのだが。


 

 「「「「湖宵さん! ごめんなさい!」」」」


 観客席へと辿り着くなり、オレF C(ファンクラブ)のお姉さん達が湖宵にペコーッと頭を下げたではないか。


 「私達、三五さまに馴れ馴れしすぎました……」

 「もう握手おねだりしません!」

 「ううう……辛い……」

 「でもそれがお二人の為なら……」


 お姉さん達がしゅ~んとしてしまっている。

 オレが湖宵にビンタされた件で、責任を感じてしまっているみたいだ。


 そんな彼女達に湖宵は毅然とした態度でビシッとこう言い放った。


 「正妻 ・ 繊月(せんげつ) 湖宵の名の下に三五F C(ファンクラブ)の存在を認可します! 就きましては、握手と親愛のハグを許可致します!」


 「んきゃ~あぁっ♡♡」

 「ハ、ハグでしゅってぇぇ!?」

 「こ、心の準備がっ!」

 「か、身体も清めないと! エステの予約っ!」

 「良いこと聞いたみゃ~♪ ハグハグみゃ~♪」

 「親愛のハグだから合法にゃ~♪」

 「抱っこあったかい……にゃ♪」

 「あああ~っ! ネコちゃんトリオに先を越されました! 私ファンクラブ会長なのにぃ!」


 湖宵の発言でお姉さん方が色めき立ち、大盛り上がりになってしまった。オレ、ネコさん達に一斉に抱き着かれちゃったし。その周りをアンお姉さんが回って隙を伺ってるし。てんやわんやだ。


 「は~いはい。そこまでよ。とっととお昼ご飯にしましょ。午後もあるんだからね。お坊っちゃま達にはたっぷり力をつけてもらわないと」


 「「「「「は~い」」」」」」

 

 おお! さすがメイお姉さん! たったの一声で収拾がついた!


 

 レジャーシートを重ねて敷いたら、総勢十一名の賑やかランチタイムの始まりだ。

 お姉さん達はそれぞれお料理を作ってきてくれたみたいで、オレ達に振る舞ってくれる。


 「お姉ちゃんは唐揚げをどっさりと厚焼き玉子をた~っぷり♪ それに見て♪ この大~っきい爆弾おにぎり~♪ 三五ちゃん好きでしょう?」


 「メイお姉さんわかってる! 超美味しそう~!」


 「三五さん! サンドイッチも美味しいですよ! ベーコンとサニーレタスが入ってて!」


 「ヨーグルトソースのトルティーヤはいかが?」

 「さっぱりレモンティーをどうぞ♪」

 「このキッシュ、自信作なんです♪」

 「シーザーサラダも是非♪」

 「「「スイーツはネコちゃんの顔つき ・ ふわふわロールケーキにゃ~♪」」」


 うわぁ~! 凄い豪華~! そしてメイお姉さんのメニュー以外女子力高~! でもお仕置きされてしまうので余計なことは言わな~い。


 「「お姉さん達ありがとう~♪ いっただっきま~す♪」」


 オレと湖宵は美味しいランチをお腹一杯頂いて、午後の競技に向けて英気を養ったのだった。

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